今回は、エシカルマーケットについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- FreewillとAudio Metaverse
1-1.Freewillとは
1-2.Audio Metaverseとは - エシカルマーケット「tells market」とは
2-1.エシカルマーケット「tells market」の概要
2-2.エシカルマーケット「tells market」の特徴
2-3.音声メタバース機能の実装に向けて - まとめ
22年9月10日、日系企業のグローバル化支援を行うFreewillがAudio Metaverseと提携し、エシカルマーケット「tells market(テルズ マーケット)」に音声メタバース機能を実装するべく共同開発をスタートさせたことが明らかになりました。
そこで今回は、FreewillとAudio Metaverseのメタバース機能を備えるエシカルマーケット「tells market(テルズ マーケット)」について、詳しく解説していきます。
①FreewillとAudio Metaverse
1-1.Freewillとは
Freewillとは19年に設立された国内IT企業で、ICTとデザインによるサステナブルな世界の実現を目指しています。
世界中から集まった200名ほどのスタッフによって、ICTに関するエンジニアリングやコンサルティング、ソーシャルサービスの開発が行われており、人間と環境の共存を可能にする「Sustainable eco Society(持続可能なエコ社会)」を実現するため、「tells market(テルズ マーケット)」などのソーシャルサービスの展開を進めています。
1-2.Audio Metaverseとは
Audio Metaverseとは、井口尊仁氏によって14年にサンフランシスコで設立された、音声ベースのソーシャルアプリの開発を手がける企業です。
17年に初期の音声ソーシャルアプリ「Baby」および「Ball」をリリースし、その後さらに「Dabel」をローンチすると、アメリカの視覚障害者を中心として10万人以上のユーザーを抱える人気のアプリへと成長を遂げました。20年以降はメタバース分野への参入を果たし、誰もがブロックチェーン上に3D音声空間を構築できる音声メタバース製品「Audio Metaverse」の開発をスタートしました。この取り組みはさまざまなメディアに取り上げられ、視覚を中心としたメタバースの市場に大きな影響を与えています。
②エシカルマーケット「tells market」とは
2-1.エシカルマーケット「tells market」の概要
今回、FreewillとAudio Metaverseにより、音声メタバース機能の実装に向けて共同開発がスタートした「tells market(テルズ マーケット)」とは、21年10月15日にローンチされた、「地球と人を豊かにする」ことをテーマとして掲げるエシカルオンラインマーケットです。
tells marketでは、CO2の削減に努めているほか、リサイクル素材を使用した製品を取り扱うなど、環境に配慮した取り組みを積極的に行っています。tells marketで買い物をするとポイントが還元されますが、このポイントが一定期間を経て失効した場合、「森の苗木」として地球課題解決に取り組む団体に自動的に還元されるなど、全く新しいエシカルオンラインマーケットとして注目を集めています。
2-2.エシカルマーケット「tells market」の特徴
①多岐にわたるサービスが用意されている
tells marketでは、単に品物を購入できるだけでなく、さまざまなアクティビティやクラフト体験、エコツアーなどのイベントに参加することが可能です。
また、今後はカスタムやオーダーメイドといった形で、自分だけのこだわりの品物をつくることができるサービスや、アートや工芸品などの作品を借りることができるサービスの提供も予定しているということです。
②地域貢献を進めている
tells marketでは品物を生産している地域への還元や貢献を積極的に進めており、地域創生の観点から、購入の際に受け取れるポイントを地域通貨と交換可能にするシステムの導入が検討されているということです。
また、自身の出身地や在住地域の品物を購入した際に割引が受けられるシステムや、地域への寄付などもできるようになる予定だということです。
③伝統文化や技術の伝承
tells marketでは伝統文化や技術によって生み出された品物を取り扱っており、これらを作っているメーカーや職人たちの想いを何よりも大切にしています。
実際、tells marketは自身を「100年後の未来に継承されるべき」全ての品々を集めた市場と位置付けており、日本の受け継がれるべき伝統を後世に残すことに尽力しています。
④環境に配慮している
前述の通り、消費者はtells marketで品物を購入すると毎回ポイントを受け取ることができますが、そのポイントは一般的なポイントと同様に「1ポイント1円」として、次回品物を購入する際に使用することができます。
また、先ほども少し触れましたが、このポイントは一定の期間を過ぎて失効となった場合、自動的に「森の苗木」として地球課題解決に取り組む団体に還元されます。
つまり、消費者はポイントを利用しても、利用せず失効となっても、tells marketを利用するだけで地球の環境保護に貢献できるシステムが確立されており、ユーザーは単なる消費者としてだけではなく、「プロシューマー(生産消費者)」として、社会全体の繁栄に寄与できるということです。
2-3.音声メタバース機能の実装に向けて
ここでは、今回新たに発表された「音声メタバース機能」について解説していきます。
まず、一般的な「メタバース」とはインターネット上に構築された仮想空間のことを指し、VRゴーグルなどを利用して、パソコンやスマートフォン、タブレットなどから専用アプリもしくはブラウザを介してアクセスします。
メタバースはWeb3.0ムーブメントにおける中心的な存在とも言われていますが、VRデバイスの普及が難航していることや、ゲーム以外のキラーアプリが不足していることなどから、一般化にはまだまだ時間を有すると見られています。
web3は次世代のインターネットとも言われるものです。Web3 Foundationによると、「ユーザーが自分自身のデータ、アイデンティティー、運命をコントロールできる、分散型でかつ公正なインターネット」と定義されています。
一方で、音声メタバースとは、音声だけでつながることができるメタバース(仮想空間)のことを指します。音声メタバースは一般的なメタバースとは異なり、イヤホンやヘッドホンを用意するだけでアクセスが可能なため、従来のメタバースよりもさらに多くのユーザーが簡単に利用できるようになっています。
Audio Metaverseでは、現実空間が「キューブ」と呼ばれる形に分割され、キューブのオーナーは歌や音楽の演奏、ディスカッションといったさまざまな活動ができ、その空間に入ったユーザーは誰でもその音を聞くことが可能です。
Freewillはこのような製品を手がけるAudio Metaverseと提携することで、tells marketに音声メタバース機能を実装し、生産者と消費者が直接語り合えるようなオープンなメタバースの構築を目指しているということです。また、エシカルマーケット特有の温かみと多様性を、音声を経由することでより対話的なコマース体験へと高めていくとしています。さらに、最新のテクノロジーを日常的な生産および購買活動と結びつけることで、日本のエシカルマーケットの水準をより引き上げていきたいということです。
③まとめ
tells marketは買い物をするだけで地球環境保護や地域貢献を行える、全く新しい形のエシカルマーケットとして注目を集めています。
今回発表された音声メタバース機能によって、今後は生産者と消費者が直接コミュニケーションを取れるメタバース空間が整備されるということで、エシカルマーケットの可能性がさらに広がっていくことが期待されています。音声メタバースの詳細は随時更新されていくと見られるため、引き続きその動向に注目していきたいと思います。
中島 翔
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