世界最大級の政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金(GPFG)」の運用を担うノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(NBIM)は8月17日、投資先企業の取締役会に対し、人的資本について情報の開示をもとめると発表した(*1)。
「人への投資」が価値創造と収益性の観点において重要性を増している。NBIMは、人的資本へ戦略的に投資することが、長期的にもっとも収益性を高めると確信している。
このことは、従業員の幸せがより高いリターンにつながると、研究によってもしめされている。安全な職場環境や健全な企業文化は、革新性や動機づけにつながる基礎となるほか、生産性や成長を高める。
人材を資本ととらえ、その価値を最大限にひきだすことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」を実践することで、競争力をたかめ、ひっ迫する労働市場で成功をおさめる決定的な要因になるという。
ニコライ・タンゲン最高経営責任者(CEO)は「われわれは投資先企業の取締役会に対し、成長や革新性を高め、健全で安全な職場環境を確保するために従業員へ投資する戦略を策定することをもとめる」と述べた(1)。
ガバナンスとコンプライアンスに関する最高責任者を務めるキャリン・スミス・イヘナチョ氏は「今後、人的資本は株主行動において優先事項となる。われわれは対話や議決権行使をつうじて、企業に人的資本についての情報開示をうながしていく方針だ」と言及した(*1)。
グローバルに人的資本の情報開示のニーズがたかまるなか、世界各国・地域で情報開示の制度化がすすんでいる。米国証券取引委員会(SEC)は2020年に人的資本の開示を義務化。従業員数の開示は必須で、必要に応じて離職率の情報なども開示しなければならない。
欧州も非財務情報開示指令(NFRD)において、性差別廃止や機会均等、労働安全衛生などについての開示を推奨している。
NBIMはESG(環境・社会・ガバナンス)投資を推進する。ノルウェー財務省が策定したガイドラインをもとにダイベストメントにも取り組む(*2)。
【参照記事】*1 ノルウェー銀行インベストメント・マネジメント「New expectation document on human capital」
【関連記事】*2 世界で急速に進むダイベストメント(投資撤退)、具体的な判断基準や投資除外企業は?

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