農林水産省は、5月20日、「農山漁村」インパクト創出ソリューション実装プログラムを開始し、農山漁村の課題解決を通じて社会的・環境的な変化や効果(インパクト)を創出し得る取組の全国公募を開始した。このプログラムは、選定された取組に対し、自治体等とのマッチングや伴走支援を通じて、ソリューションの実装を図ることを目的としている。
本プログラムでは、農山漁村の課題解決に資する良質な取組を幅広く募集し、10個程度を「農山漁村」インパクト創出ソリューション(インパクト・ソリューション)として選定する。選定されたソリューションは、7月中旬に開催予定の「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォーム第2回シンポジウム(仮称)で公表される計画だ。
公募期間は5月20日から6月23日18時まで。応募要件には、農山漁村における課題を解決できる取組を展開していること、自治体等との共創に関する実績や関心があること、事業期間を通じて課題解決に取り組む体制を整備できること、そして法人格を有することなどが挙げられている。
選定は、有識者から構成される選定委員会によって、評価項目を総合的に勘案して行われる。その際、全ての項目を高水準に満たす事業者に加え、実現可能性や実績にかかわらず課題設定や課題構造の理解が著しく高い取組も一定数「チャレンジ枠」として選定する方針だ。
農林水産省は、伴走支援として、自治体等とソリューション提供企業等の相互理解の促進や、事業化に必要な資金調達および人材確保に係る方法提案などを行う。また、関係者間での目標のすり合わせや合意形成を円滑に進めるため、各事業によって創出が見込まれるインパクトを予見的に可視化するためのロジックモデル作成も実施する。伴走支援期間は令和7年度末までを予定し、1つのインパクト・ソリューションにつき3地域のマッチングを目標としている。
農山漁村は、食料供給基盤としての役割に加え、洪水防止や生物多様性の保全、地域社会の振興といった多面的な機能を持つ。しかし、人口減少などに起因する課題は深刻化しており、これらの課題は都市部を含む社会全体に影響を及ぼす可能性があると農林水産省は指摘する。同省は令和6年度に、農山漁村の課題解決につながる7つのインパクトを特定し、その分析や取組の類型化をまとめた「『農山漁村』インパクト可視化ガイダンス」を策定しており、本プログラムもこの動きに連なるものだ。
このプログラムを通じて、農山漁村が直面する複合的な課題に対し、具体的な解決策を持つ事業者を支援し、その社会実装を加速させることが期待される。選定されるソリューションが、持続可能な地域社会の構築にどのように貢献していくか、その成果が注目される。
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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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