地球環境ファシリティ(GEF)の後発開発途上国基金(LDCF)および特別気候変動基金(SCCF)の理事会は6月4日、アフリカと太平洋地域における気候変動への適応力強化を目的とした新規プロジェクトに約4000万ドルの資金提供を承認した。サヘル地域からソロモン諸島まで、幅広い地域で自然を基盤とした解決策の促進や、気候変動に配慮した生計手段の強化、農村部や遠隔地への適応資金アクセス拡大を図る。
GEFのカルロス・マヌエル・ロドリゲス最高経営責任者 兼 議長は、今回の承認について「世界で最も気候変動の影響を受けやすい国々において、各国主導の適応策を支援するLDCFの継続的な取り組みを反映したものだ」と述べた。さらに「後発開発途上国および小島嶼開発途上国は地球環境危機の最前線にいるが、課題が最も深刻なこれらの国々こそが、自然を前向きに捉え、包括的な解決策で前進する道を示している」と強調した。
承認されたプロジェクトには、チャドとマリにおける劣化した景観の回復と自然資源管理の強化を目指す地域イニシアティブ、ウガンダ北部における気候変動に脆弱なシアの生態系再生を通じた持続可能な生計支援、ソロモン諸島における科学的知識と伝統的知識を融合させた気候変動に強い農業・食料システムの構築などが含まれる。特に注目されるのは、マダガスカルで計画されている「レムール・ボンド」と呼ばれる成果連動型債券の立ち上げである。これは保護区とその周辺における生物多様性保護と地域社会の生活向上のために資本市場を活用する革新的な資金調達メカニズムで、LDCFとGEF信託基金の両方から支援を受ける。
今回の資金計画により、現在の4年間の資金サイクルにおけるLDCFを通じたGEFの適応投資総額は6億1800万ドルを超え、29億ドル超の協調融資で補完される見込みだ。気候変動による影響が深刻化する中、最も脆弱な地域における自然を活用した適応策への投資は、持続可能な開発と気候レジリエンス構築の両立を目指す国際社会の取り組みにおいて重要な一歩となる。
【参照記事】GEF funds to boost resilient livelihoods and landscapes

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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