欧州連合(EU)最大の年次環境会議である「EUグリーンウィーク2025」が、6月3日にブリュッセルで開幕した。この会議は、欧州がより循環型で持続可能なモデルへ移行することにより、いかに競争力を強化できるかを探求することを目的としている。対面では800人以上の参加が見込まれ、オンラインでも多数の参加者が集う予定だ。
会議では、政策立案者、産業界、NGO、各種ステークホルダー、そして市民が一堂に会し、サーキュラーエコノミーの原則をあらゆるセクターに組み込むことで、欧州の競争力をいかに高めるかについて議論を深める。今年初めには、「競争力コンパス」や「クリーン産業ディール」といった主要なイニシアチブが、EUの限られた資源を最大限に活用し、第三国の原材料供給者への依存を減らすための指針を示した。これらを踏まえ、リサイクル、リユース、持続可能な生産を通じて廃棄物を削減し、資源の寿命を延ばす方策が話し合われる。
会議のハイライトとして、初日の6月3日には、イェシカ・ロスウォール環境・水レジリエンス・競争的循環経済担当委員が開会の辞を述べ、EUの競争力と経済安全保障を強化しつつ天然資源を保全するサーキュラーエコノミーのビジョンを共有した。パネルディスカッションでは、EUの戦略的自律性の推進力としてのサーキュラーエコノミー、次期サーキュラーエコノミー法、国際協力などが議論された。同日夜には、サーキュラーエコノミー、気候行動、自然保護の分野で最も革新的なプロジェクトを表彰するLIFEアワード授賞式が開催された。
6月4日には、欧州サーキュラーエコノミー・ステークホルダー・プラットフォームが登壇し、バイオエコノミーからAI、産業設備、水循環の回復に至るまで、多岐にわたる議論が展開される。最終日の6月5日には、専門家たちがサーキュラーエコノミーの潜在能力を最大限に引き出し、欧州をより競争力があり資源効率の高い地域にするための戦略について議論する。
ロスウォール委員はイベントについて、「グリーンウィークは、サーキュラーエコノミーを現場で現実のものとするために必要な構造的変化と、その変化を実際にどう推進していくかについて取り組む機会となるだろう。消費者だけでなく、企業にとっても意識改革が必要だ」と述べた。
ブリュッセルでの会議に加え、6月中は欧州各地で最大300のEUグリーンウィーク・パートナーイベントが開催される。これらのイベントは、公的機関、民間企業、教育機関、非営利団体など、様々なセクターによって企画されている。
EUのサーキュラーエコノミー政策は、従来の直線型経済(取る・作る・捨てる)から循環型経済への転換を目指している。これは資源の有効活用と環境負荷軽減を同時に実現し、経済競争力の強化につなげる戦略だ。
サーキュラーエコノミーは、製品と素材を可能な限り長く循環させ、廃棄物と汚染を削減し、自然システムを再生する経済モデルとして定義される。エレン・マッカーサー財団によると、この取り組みは「廃棄物・汚染を取り除く」「製品と素材を循環させる」「自然を再生する」の3原則に基づいている。
EUは2020年に新サーキュラーエコノミー行動計画を採択し、2024年には企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を施行するなど、サーキュラーエコノミーの法的基盤を整備している。今回のグリーンウィークでも言及されたサーキュラーエコノミー法は、これらの取り組みをさらに体系化する重要な法制度となる見込みだ。
【参照記事】EU Green Week 2025: Circular solutions for a competitive Europe – starts today!

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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