大手暗号資産取引所Coinbaseが提供予定のレンディングサービス「Lend」が、米証券取引委員会(SEC)より提訴される可能性があることが9月8日に明らかとなった。Coinbaseが同社ブログにて報じている。
Coinbaseは半年近く、Lendのサービス提供についてSECと積極的に話し合ってきた。その結果として、SECより9月1日に同サービスに対する「ウェルズ通知」を受け取ったことを明らかにした。
ウェルズ通知は、企業の財務に関する違法性を調査中であることを公式に通知する方法だ。SECは、同サービスを提供すれば提訴する可能性があることを通知により示唆したことになる。
Lendは、ステーブルコインUSDCをCoinbaseに貸し出すことで年利4%を得られるサービスだ。レンディングサービスは、暗号資産貸付商品として他社からすでに提供されているが、Coinbaseは提供前に規制当局とのオープンな対話の道を選んだという。
Lendは既存の取引関係に関連して、顧客が保有する米ドルをCoinbaseに貸し出すもので、投資ではないとSECに説明してきた。元本も保証されており、請求に応じていつでも返済義務があることからも、Lendは有価証券に該当しないと主張する。
Coinbaseは、6月にはLendを発表し、ウェイティングリストによる顧客の登録を開始しているが、サービス開始日は未定とし、SECとの話し合いの結果を待つ状態にあった。
しかしSECは、Lendは「有価証券にあたる」と回答し、正式な調査を開始したことをCoinbaseに告げ、Lendに関する質問への回答書を要求していた。登録済みの顧客情報についても提出を要求されたが、こちらはプライバシーの観点から同意していない。
CoinbaseはSECからの指示に常に従ってきたが、今になってウェルズ通知により提訴の可能性を告げられたのだという。通知の根拠となる理由も求めたが、一切説明されずに拒否されたことも明らかにしている。
SECからの唯一の回答は、LendについてHoweyおよびReves Testに基づいて判定したと述べるばかりで、それ以上の回答は得られなかったという。
HoweyおよびReves Testとは、最高裁の過去の判例を参考にして、投資商品が証券にあたるかを評価する、米国特有の有価証券を分類するテストである。過去の判例法理で比較的緩やかに判定をするガイドライン的なものであり法的拘束力はない。しかし、テストによって投資契約または約束手形に該当すると評価されると、その投資商品は有価証券とみなされる。
テストが参考にしている判例は、1946年と1990年のものであり、時代にそぐわないという意見も聞かれるが、SECはこのテストの結果をもとに過去にも有価証券と評価された複数のICOやETFに対して法的措置を起こした経緯がある。
こうした結果から、Coinbaseは少なくとも10月まではLendの正式提供はないとした。
不明瞭な評価や曖昧な指示は、Coinbaseやその他の企業が安全に提供できる新製品を不必要に阻害するだけだと意見を付け足し、「今後は事態の進展に応じて、あらゆる段階で情報を提供していきたい」とCoinbaseはコメントしている。
【参照記事】The SEC has told us it wants to sue us over Lend. We don’t know why.
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