資産運用大手のシュローダーは、投資が社会にどのようなインパクトを及ぼすのか、インパクトの評価が投資家のリスク調整後リターンにどう役立つのかを紹介する「MyStory」シリーズをウェブサイトに公開した。4月27日付で公開された日本語では、フランスの鉄道メーカーであるアルストム社が、変化にどのように対応し成長を続けようとしているかをはじめとするストーリーを読むことができる。
同シリーズの冒頭では、プロダクト・ソリューション・クオンツ担当グローバルヘッドのカロリーナ・ミニオ・パルエロ氏のコメントを紹介している。「投資資金をどこに振り向けるかによって、投資リターンを得るだけでなく、世界のあり方にインパクトを与えることができる。企業が社会や地球環境に与えるインパクトを理解することは、企業の真のコスト、ひいてはインパクト調整済み利益を見定める上で非常に重要だ」。
20世紀初頭、アルストム社が製造していた蒸気機関車は環境を害するものだったが、当時は他の輸送手段と速度や価格、豪華さを競っており、環境汚染は問題とはならなかった。その後、鉄道は車や手頃になった飛行機と激しい競争となったが、環境への配慮が重視される現在、復活をとげつつあるという。
理由は、アルストムが2015年に事業を鉄道に特化した点にある。現在は、鉄道をサステナブル(持続可能)で安全な輸送手段として促進する計画により、利益が見込まれている。この見通しには、2つの要素があります。一つは、鉄道技術自体が以前に比べてはるかに環境負荷を低減しており、エネルギー効率のよいものになっていること。もう一つは、より多くの人や貨物が、環境に負荷がかかる別の輸送手段を利用する代わりに、鉄道を利用するようになっている点にある。
意外にも、鉄道は、主要な輸送手段の中で、最も二酸化炭素排出量が少ない手段だ。同シリーズは、鉄道の二酸化炭素排出量が空路の8分の1、道路の3分の1ほどだと示し「国や企業が二酸化炭素の排出削減を進めるほど、鉄道に有利に働く」としている。アルストム社は水素を動力源とし、水のみを排出する列車を開発しており。すでにドイツなどで運用が始まっている。「気候変動危機に直面し、輸送における脱炭素需要は急激に加速している。アルストムは、その傾向が進むことで利益を得られる立場にある。環境にも益する」と同社。
パルエロ氏は「企業に対する見方や評価方法の根本的な変化により、私たちの投資方法は変わりつつある。かつてはリスクとリターンのみを考慮していたが、現在では第3軸であるインパクト・リスクも評価している。シュローダーは長期的に成長を持続できる企業を探している。利益のみを追求するのではなく、明確な存在意義のもとで運営されている企業は、持続性があり、投資家に対し長期的により魅力的なリスク調整後リターンを提供できる」と締めくくっている。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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