デンマークのエネルギー大手オーステッド(ティッカーシンボル:ORSTED)は6月13日、2025年より木くずやワラを原料とする熱電併給(CHP)施設で年間40万トンの炭素を回収・貯留(CCS)する計画を発表した(*1)。
デンマーク・カルンボー市の木くず焚きのアスネス発電所と、グレーター・コペンハーゲン(デンマーク東部とスウェーデン南部)に位置するアヴェデーレ発電所のワラ焚きボイラーに炭素回収装置を設置する。
2つのCHP施設はグリッドおよび地域熱供給(DHC)システムに接続されているほか、港湾を保有しているため、自社のみならず他社の炭素やグリーン燃料を輸送するハブとしても機能し得る。カルンボー市では、製油所で排出された炭素を回収しアスネス発電所へパイプ輸送できるか否か可能性を探るべく、カルンボー製油所と協議しているという。
アスネス発電所とカルンボー製油所は炭素の回収・貯留に注力する。アヴェデーレ発電所のワラ焚きボイラーは炭素を回収し、船舶や航空業界向けのグリーン燃料の開発を目的としたパワー・トゥ・エックス(Power-to-X(#1))プロジェクト「グリーン・フューエル・フォー・デンマーク」向けに輸送する計画だ。
CHPプラントで使用する持続可能なバイオマスについては、主にデンマークやバルト諸国のわらや木材チップでまかなえると、オーステッドは試算する。そのため、30年より木くずの輸入を減らし、30年代半ばからはボイラーの燃料として主にデンマーク産バイオマスを使用する見込みである。また、木くず焚きのCHP施設が運転年限に達するまで、持続可能で適正に管理された森林のオガクズや廃材から製造された認証取得済みの木くずのみを使用するとのことだ。
オーステッドのシニアバイスプレジデントを務めるオレ・トムセン氏は「アスネスとアヴェデーレのCHP施設に炭素回収装置を設置することで、われわれは25年より40万トンの炭素を回収できるようになる。これは政府が掲げる25年の気候目標の達成に大きく貢献するだろう。」と述べた(*1)。
またオレ氏は「炭素回収計画は、今後長期にわたって稼働することが見込まれ、持続可能なワラと木くずを原料とする最新のCHP施設を基とする。カルンボー製油所は最初の潜在パートナーであるが、提携する見込みのある炭素排出企業は複数社ある」と付け加えた(*1)。
世界各国で脱炭素社会の形成に向けた取り組みが推進されるなか、炭素の除去技術(CDR)やCCSは多くの企業が注目するテクノロジーのひとつだ。米石油大手のエクソンモービル(XOM)は、27年までに150億ドルを投じ、CCSなどの新規事業を育成する方針を示した(*2)。米グーグルの親会社アルファベット(GOOGL)や米メタ・プラットフォームズ(FB)など5社は、30年までに9億2,500万ドルを投じてCDRの開発を支援する(*3)。
(#1)パワー・トゥ・エックス…電力をグリーン水素やその他のeフューエルへ変換する。
【参照記事】*1 オーステッド「Ørsted to capture and store 400,000 tonnes of carbon in 2025」
【関連記事】*1 「米エクソンモービル 2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロに」
【関連記事】*1 「アルファベットやメタなど5社 炭素除去技術の開発支援に1,200億円投資」
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