米医療保険のユナイテッドヘルス・グループは6月8日、同社が立ち上げた慈善財団であるユナイテッドヘルス財団が、健康格差をなくす取り組みを推進すべく、10年間で1億ドル(約136億円)を投じると発表した(*1)。同財団にとって過去最大の資金拠出となる。
今回の資金拠出を通じ、とくに保健分野における人種や民族の多様化を支援する。その一環として、この先患者のケアを担う臨床医やスキルアップを図る保険分野の専門家といった「低代表、過小評価された(underrepresented(#1))」1万人の人材を対象に、医学、看護、助産婦学、メンタルヘルスなどの学位や資格の取得に向け、奨学金などのサポートを提供する方針だ。
ユナイテッドヘルス・グループのパトリシア・エル・ルイス最高サステナビリティ責任者(CSO)は「有色人種、歴史的に社会から疎外されてきたグループ、低所得層と呼ばれる人々が健康な状態を得るためには非常に多くの障害がある。我々はこれらの障がいを打ち壊し、ヘルスケアへのアクセスを改善してより健康な生活を送りやすくなるためのツールや人材、資源を提供することにコミットしている」と述べた(*1)。
ユナイテッドヘルス・グループは長期にわたり保険分野における職場のダイバーシティを推進する取り組みを行っている。全米科学財団(NSF)によると、黒人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカンは、生物学・生物医学・生命科学分野の労働人口のわずか7.1%を占めるに過ぎないという。
そのようななか、ユナイテッドヘルス・グループは2017年より、差別と抑圧の対象となってきた黒人に高等教育の機会を提供する「歴史的黒人大学(HBCU)」でデータサイエンスの教育を提供するサポートを行うべく1,000万ドルを投じている。また、ユナイテッドヘルス財団は2007年より、次世代のヘルスケア人材を育成すべく、9つの機関と提携して3,000超の奨学金を支給している。この取り組みは、十分な医療サービスを受けていないコミュニティ向けのプライマリーケア・プロバイダーの拡充につながっているという。
ユナイテッドヘルス・グループのように、企業本体でESG(環境・社会・ガバナンス)関連の施策を講じることにくわえ、財団を通じても取り組みを積極化するケースが散見されている。たとえば、スターバックス(SBUX)は同社が設立したスターバックス財団を通じ、若者のエンパワーメントやインクルージョン・ダイバーシティ、社会サービス、飢餓救済、経済的な機会、コーヒー・紅茶・ココアの生産者コミュニティなどを対象に、インパクト創出を目的とした助成プログラム「グローバル・コミュニティ・インパクト・グラント」を開始(*2)。同プログラムは2030年までに3,000万ドルを拠出する計画だ。
(#1)underrepresented…人口割合に比して有意に少ない割合の代表の機会しか与えられていないこと。少数派を表すマイノリティとは意味合いが異なる。
【参照記事】*1 ユナイテッドヘルス「The United Health Foundation Commits $100 Million to Further Advance a Diverse Health Workforce」
【参照記事】*2 スターバックス「The Starbucks Foundation Launches Global Community Impact Grants Initiative, Investing $30 Million by 2030」
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