米グーグルの親会社アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)や米メタ・プラットフォーム(旧フェイスブック、FB)など5社は4月12日、脱炭素技術の開発を共同で支援すると発表した(*1)。2030年までに9億2,500万ドル(約1,200億円)を投じ、二酸化炭素(CO2)を除去する技術が開発された際に削減量を買い取る。
炭素の回収や永久貯蔵といった炭素除去技術の開発を支援する。アルファベットやメタのほか、電子商取引(EC)サイト構築のカナダのショッピファイ(SHOP)と決済大手の米ストライプ、戦略コンサルティングファームの米マッキンゼー・アンド・カンパニーが参画する。
ストライプの子会社として新会社「フロンティア」を設立する。フロンティアは事前買取制度(AMC)を適用し、炭素除去技術の開発を加速させる。AMCモデルのもとで、炭素除去技術の開発を試みる企業(サプライヤー)と排出量を削減したい企業が、将来のCO2削減量の購入契約を締結する。この契約は将来的に排出される炭素量を購入することが約束されており、サプライヤーは技術開発や規模拡大を進めるための資金を確保することができる。
AMCモデルは10年前に低所得国向けの肺炎球菌ワクチンの開発を加速させるために試験的に導入され、結果的に推定70万人の命を救ったという。このモデルが大規模な炭素除去に適用されるのは今回が初めてとのことだ。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は4月4日、第3作業部会(気候変動緩和担当)による第6次評価報告書において、ネットゼロ(温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする)を実現するためには炭素除去が不可欠と指摘した(*2)。
IPCCのモデルによると、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5度以内におさえるという目標を達成するためには、50年までに年間平均約60億トンのCO2を除去する必要があるという。しかしながら、21年時点で大気中から永久的に除去されたCO2は1万トンにも及ばない。
炭素除去技術がいまだ必要な規模に達していないなか、フロンティアは研究者や起業家、投資家に対して、同技術を活用した製品に強い需要があることを示す狙いがある。まずはアルファベットやメタなど5社が自ら資金を投じたのち、ネットゼロの実現を約束する企業の参加を呼び込むことで炭素除去市場の活性化を図る方針だ。
【参照記事】*1 メタ・プラットフォームズ「Accelerating the Development of Carbon Removal Technologies」
【参照記事】*2 IPCC「IPCC_AR6_WGIII_FinalDraft_FullReport.pdf」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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