米石油大手のエクソンモービル(ティッカーシンボル:XOM)は2月18日、石油・天然ガス事業から排出される温暖化ガス(GHG)を2050年までにネットゼロにすると発表した(*1)。より積極的な気候変動対策を求める市場の圧力が高まるなか、同社は排出削減を進める欧州石油メジャーへのキャッチアップを図る。
ネットゼロの対象は、事業者みずからによるGHG直接排出を意味する「スコープ1」と、他社から供給された電機や熱などを使用して発生する間接排出である「スコープ2」となる。一方で、事業者の活動に関連する取引先の排出である「スコープ3」は含まれていない。ダレン・ウッズ最高経営責任者(CEO)は同社が操業主体(オペレーター)を務めていないプロジェクトもネットゼロの達成に向けてパートナー企業と協議していると述べた(*1)。
競合の英BP(BP)や英シェル(SHEL)といった欧州の石油メジャーは、スコープ3も対象にしたGHG排出の抑制にコミットしており、気候変動対策の取り組みで先行している状況だ。
大量のGHGを排出する石油・ガス事業を手がけるエクソンモービルに対しては、脱炭素化に向けた市場の圧力が高まっている。21年6月には、物言う株主である新興ヘッジファンドのエンジン・ナンバーワンが推薦した環境重視の取締役候補3名が現職にとってかわった(*2)。化石燃料を多用した従来型産業、いわゆるオールドエコノミーに属するエクソンモービルにとっては「歴史的な敗北」となった。
経営戦略の転換を迫られるなか、エクソンモービルは11月、27年までに150億ドル(約1兆7,000億円)を低炭素プロジェクトに投資すると発表(*3)。二酸化炭素の回収・貯留(CCS)や水力発電、藻類バイオ燃料といった新規事業を育成する方針を示した。続く12月には米パーミアン盆地でのGHG排出を30年までにネットゼロにすると表明している(*4)。
欧州の石油メジャーはエネルギー・トランジション(#1)を主導しており、石油生産を徐々に削減して風力や太陽光といった再生可能エネルギーへの代替を図っている。今後も環境重視の株主からの圧力が強まると予想されるなか、エクソンモービルの気候変動対策の取り組みに注目したい。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
【参照記事】*1 エクソンモービル「ExxonMobil announces ambition for net zero greenhouse gas emissions by 2050」
【参照記事】*2 エクソンモービル「ExxonMobil updates preliminary results on election of directors」
【参照記事】*3 エクソンモービル「Why we’re investing $15 billion in a lower-carbon future」
【参照記事】*4 エクソンモービル「ExxonMobil plans for net zero emissions in Permian Basin operations by 2030」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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