英ロンドン証券取引所グループ(ティッカーシンボル:LSEG)は10月10日、ボランタリークレジット市場「ボランタリー・カーボン市場」を創設すると発表した(*1)。ネットゼロへの公正な移行が最も差し迫った優先事項の一つとなるなか、金融エコシステムは気候変動というかつてない課題への対応に迫られている。
ロンドン証取は、同市場を通じて気候変動の緩和につながるプロジェクトにより多くの資金をよびこみ、世界のボランタリークレジット市場の拡大をうながす。
ファンド・発行体は、同市場で資金を調達し、温室効果ガス(GHG)排出量の削減につながるプロジェクトに調達資金を振り向け、自然ベースと技術ベースのカーボンクレジットを創出できる。そのクレジットを配当としてファンドに投資する投資家・企業に配分したり、クレジットを売却したりすることも可能だ。
ただし、ロンドン証取の規則を順守し、プロジェクトの種類、予想されるカーボンクレジットの発行量、国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)との整合性度合いなど、直接的・間接的に資金調達するプロジェクトに関する追加情報を開示する必要がある。さらに、ファンド・発行体による環境へのネットポジティブインパクトを確実なものにすべく、すべてのその他のアクティビティや投資が、FTSEラッセルのグリーンレベニュー分類システムで、グリーン経済へ貢献するティア1、2セクターにマッピングされなければならない。
一方、ファンドに投資する企業は、残留炭素もしくはネットゼロを達成するために不可避な排出を相殺でき、投資家には新たなアセットクラスへのエクスポージャーを提供する。
カーボンクレジットは、ネットゼロ社会への公正な移行を図る有力手段とみられているが、クレジットの質のばらつきや不透明性が課題となっている。そのようななか、元イングランド銀行総裁マーク・カーニー氏らが設立した「ボランタリー市場拡大のためのタスクフォース(TSVCM)」が、クレジットの品質の標準化などに取り組む。同イニシアチブはネットゼロ社会を実現するために、現在のクレジット市場を15倍以上にする必要性があると提言する。
取引所によるカーボンクレジット市場としては、シンガポール証券取引所が同国金融大手DBS(D05)や英銀大手スタンダードチャータード(STAN)などと合弁でカーボンクレジット市場「CIX」を設立。民間企業によるカーボンクレジットの活用事例としては、米アルファベット(GOOGL)傘下のグーグルが20年に創業以来の過去の排出量(カーボンレガシー)をオフセットした。英石油大手シェル(SHEL)は、液化天然ガス(LNG)のサプライチェーン上で排出される二酸化炭素(CO2)を自然由来カーボンクレジットで相殺する世界初のカーボンニュートラルLNGを供給した。
【参照記事】*1 ロンドン証券取引所グループ「Voluntary Carbon Market」
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