ドイツ・ベルリンを拠点とするアグリテックKlimは11月12日、シリーズA(資金調達ラウンド)で2,200万ドル(約34億円)を調達したと発表した(*1)。同社によると、アグリテック分野においてドイツ最大規模となる。調達した資金を元手に、国際事業の拡大、プラットフォームの強化などを図り、世界的なリジェネラティブ農業(環境再生型農業)への移行を推進する。
今回の投資ラウンドはBNPパリバが主導した。欧米のベンチャーキャピタルや農林中央金庫なども参加した。Klimは2024年に最大規模のシリーズAの資金調達を成功させた、ドイツを拠点とするアグリテックのスタートアップ企業となる。これにより、同社がアグリテック分野のリーダーとしての地位を確立し、ソリューションの拡張性と影響力の両方を実証した。
Klimは20年に設立され、食品業界がサプライチェーンを再生可能な農業慣行へと転換することを可能にするInsetting(#1)ソリューションを提供する欧州の有力企業だ。工業型農業がもたらす食糧安全保障、気候保護、生物多様性などの重大な課題に対処し、リジェネラティブ農業への移行を加速させることをミッションとして掲げる。
Klimは農家が植え付け前に持続可能性のための最善策を決定できるデジタルプラットフォームを開発し、二酸化炭素(CO2)排出量を削減する方法についてのガイダンスを提供している。同業他社と協力し、サプライチェーンのCO2削減やカーボンクレジット(排出枠)の利用にも取り組んでいる。
農業は現在、毎年排出される人為的な温室効果ガス(GHG)の約20%を占めており、土壌の健康を損ない、生態系を破壊し、世界的な食糧安全保障を脅かしている。Klimは、食品会社に農業サプライチェーンの移行と脱炭素化を可能にするシームレスで拡張可能なソリューションを提供することで、ポジティブインパクトをもたらすことを目指している。
デジタルプラットフォームを通じて、農家はリジェネラティブ農業への移行を計画、実行、および資金調達を行うために必要なツールを手に入れることができる。これにより、農家は土壌の健康を回復し、農場のレジリエンスと生物多様性を向上させ、炭素を回収し、農場の排出量を削減することが可能だ。
農家にとっての主な障壁である、農業の専門家によるサポート不足や移行を実現するための資本へのアクセスといった問題にデジタルプラットフォームを活用して取り組む。世界最大の食品企業と協力することで、Klimは最大限のインパクトをもたらすリジェネラティブな世界への移行を迅速かつ大規模に実現している。
すでに3,500人以上の農家がKlimのプラットフォームを利用し、ドイツの農地の5%に相当する70万ヘクタール以上の土地を耕作している。同社の垂直統合型ソリューションは業界大手の注目を集め、ネスレ、カウフラント、アリスタなどのグローバル消費財メーカーが顧客として名を連ねる。
Klimは、これらの企業が大規模なリジェネラティブ農業を導入するのを支援することで、強靭なサプライチェーンの確保、スコープ3排出量の削減、食品の品質向上をサポートしている。
同社のロバート・ゲルラッハ最高経営責任者(CEO)は「私たちの食糧システムは、リジェネラティブ農業を中核として、大きな転換期を迎えている。食品会社との強力なパートナーシップと農家中心のアプローチを組み合わせることで、弊社は緑の革命以来最大の農業の転換を推進し、最大限のポジティブインパクトをもたらす」と述べた(*1)。
(#1)Insetting…企業が自社のスコープ3までのサプライチェーンの中でGHG排出削減を目的としたプロジェクトに投資し、削減活動を推進する概念。
【参照記事】*1 Klim「Germany’s Largest Series A in AgriTech: Klim Secures $22M to Drive Global Transition to Regenerative Agriculture」
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