欧州議会は11月14日、商品の生産時に森林を破壊していない証明を求める規則である欧州森林破壊防止規則(EUDR)の施行を1年間延期および改正することを賛成多数で可決した(*1)。新たに「リスクなし」カテゴリーを設ける改正案も採択した。
EU加盟国、EU非加盟国、貿易会社などから、EUDRを2024年末に適用した場合、規則に完全に準拠することができないという懸念が寄せられていた。これを受け、欧州委員会(EC)は10月初頭に同法案の適用を1年間延期することを提案していた。
大企業は25年12月30日よりEUDRの義務を遵守しなければならないが、小規模零細企業には26年6月30日まで猶予期間が設けられている。適用期間の開始を延期したことにより、世界中の企業が法の目的を損なうことなく、当初からスムーズに規則を導入できるようになると見られている。
欧州議会は、森林破壊リスクを「高・標準・低」の3つのリスクレベルで評価する現行のカテゴリーに加え、リスクなしという新たなカテゴリーを設ける改正案も採択した。「リスクなし」に分類された国々は、森林面積が安定または増加している国々として定義される。森林破壊のリスクがほとんどないか、あるいは存在しないため、より緩やかな要件が課されることになる。
欧州委は25年6月30日までに、各国のベンチマークシステムを最終決定しなければならない。
今回の法案はEU機関間の交渉に戻され、最終的な法案はEU理事会と欧州議会による承認を経てから発効する。
世界的に森林破壊を防止することは喫緊の課題となっている。1990年から2020年の間に、EUよりも広い面積に相当する4億2,000万ヘクタールの森林が森林破壊によって失われたと、国連食糧農業機関(FAO)は推定する(*2)。EUは世界の森林破壊の10%を占めており、パーム油と大豆の消費がそのうちの3分の2を占める(*3)。
EUDRは23年4月19日に議会で採択され、EU域内での牛肉、ココア、コーヒー、パーム油、大豆、木材、ゴム、木炭、印刷用紙の消費に関連する森林破壊を防止することで、気候変動と生物多様性の喪失に対抗することを目的する。23年6月29日よりすでに施行されており、24年12月30日より企業に適用されることになっていた。
【参照記事】*1 欧州議会「EU deforestation law: Parliament wants to give companies one more year to comply」
【参照記事】*2 国連食糧農業機関「A fresh perspective Global Forest Resources Assessment 2020」
【参照記事】*3 国連食糧農業機関「STATE OF THE WORLD’S FORESTS」
【参照記事】欧州議会「Towards deforestation-free commodities and products in the EU」
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