スペイン電力大手イベルドローラ(ティッカーシンボル:IBE)は8月9日、英国最大級のコンテナ港であるフェリクストウ港の脱炭素化に向け、1.7億ユーロ(約230億円)を投じて大規模グリーン水素プラントを建設すると発表した(*1)。2026年に稼働を開始する予定だ。
グリーン水素は電解槽を用い、再生可能エネルギー由来の電気により、水を水素と酸素に分解して製造する。同プラントの初期段階の年間生産能力は1.4万トン。港で利用される最大1,300台のグリーン水素駆動のトラックと、港まで物資を運ぶ列車向けに再生可能エネルギー由来水素を供給する。さらに、グリーンアンモニアもしくはエタノールも生産し、船舶向けに供給を模索するほか、海外市場へ輸出する機会の創出も図る。
イベルドローラの英国子会社であるスコティッシュ・パワーと港湾事業に投資する事業信託の香港ハチソン・ポート(HPHT)が共同で、ブラウンフィールド(環境汚染などの理由で利用されなくなった土地)にプラントを建設する。
フェリクストウ港はイベルドローラが英領北海で建設中の洋上風力発電所の近くに位置する。同エリアではすでに714メガワットの洋上風力発電所「イースト・アングリア・ワン」が稼働を開始したほか、3つのプロジェクトで構成される導入容量2,900メガワットの「イースト・アングリア・ハブ」(3.1GW)を建設する予定だ。
イベルドローラはエネルギー・トランジション(#1)の推進にコミットするなか、スペインや英国、ブラジル、米国など8か国の脱炭素化を後押しすべく、グリーン水素の製造をリードしている。30年までに年間40万トンのグリーン水素を製造し、90億ユーロの投資を必要とする関連プロジェクトを計画しており、電化が難しい産業の排出量の削減をサポートしていく方針だ。7月末には英石油大手BPと協業し、スペイン、ポルトガル、英国で大規模グリーン水素ハブを構築すると発表した(*2)。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
【参照記事】*1 イベルドローラ「Green hydrogen plant to decarbonize UK’s largest freight port」
【参照記事】*2 BP「Iberdrola and bp to collaborate to accelerate EV charging infrastructure and green hydrogen production」
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