英金融大手のHSBCホールディングス(ティッカーシンボル:HSBC)は12月14日の発表によると、世界的に温室効果ガス(GHG)の排出削減に向け、新規の油田・ガス田向けの融資を停止する(*1)。
HSBCはグリーン誓約(Green Pledge)をしているにも関わらず、油田・ガス田プロジェクトへ融資していることに対し批判の声が挙がっていたという。そのようなか、エネルギー分野の国際的専門家の助言の下、新規の油田・ガス田向け融資を停止する決断を下した。欧州最大級の金融機関が下したこの決定は、化石燃料関連の大企業向けの投資が減少するという強力なシグナルを送ることになると一部の環境団体は見ている。ただし、天然ガスをはじめとする化石燃料はトランジション(移行)段階において役割を果たすことから、既存の油田・ガス田向け投資は維持する方針である。
2020年、HSBCはネットゼロ誓約を行うと共に、グリーンプロジェクト向けに最大1兆ドル(約132兆ドル)を投融資すると発表した。しかしながら、HSBCは21年に新規油田・ガス田向けに87億ドルを投じているとの試算を、英非営利団体シェアアクションが明らかにしたことを受け、批判を浴びる結果になった。HSBCは批判に対応すべく、22年2月下旬に石油・ガスおよび電力・公益セクターの温室効果ガス(GHG)排出量の削減を目指す中間目標を発表している(*2)。石油・ガスセクターでは30年までにGHGの絶対排出量の34%削減を目指す。
英国の金融機関は脱炭素化に向けて動きを強めている。10月には、ロイズ・バンキング・グループ(LLOY)が新規の石油・ガス田開発へのプロジェクトファイナンスおよびリザーブ・ベース・レンディング(石油・ガスの埋蔵量を担保とした融資)を行わない方針を明らかにした(*2)。12月には、バークレイズ(BARC)が30年末までにサステナブル・トランジションファイナンスの目標額で1兆ドルを目指すと発表した。
脱炭素化の動きにより、石油などいわゆる「オールドエコノミー」企業に対して、金融機関が融資を行わない場合がある。また、サステナビリティに沿わない業界や企業には、「ダイベストメント」が行われていることもある。しかし、単純にスクリーニングを行うのではなく、社会での役割や企業の姿勢を見た上で、投資先や関わり方を考える必要があるだろう。
【参照記事】*1 BBC「HSBC to end funding for new oil and gas fields」
【参照記事】*2 HSBC「Announcement – HSBC sets financed emissions targets for oil and gas, and power and utilities」
【関連記事】*3 ロイズ・バンキング・グループ 英五大銀初となる新規石油・ガス田プロジェクト向け融資停止
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