グーグル 米・英・スペインでカーボンフリーエネルギー運用へ

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米アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)傘下のグーグルは2022年11月24日、英国とスペインで風力および太陽光発電の電力購入契約(PPA)を締結したと発表した。これにより、両国のクラウドリージョンとオフィスは2025年には90%のカーボンフリーエネルギー(CFE)、またはそれに近い水準で運用される見通しだ。

グーグルは2030年までに24時間365日CFEで事業を運営する目標を掲げる。2017年以来、事業運営に必要な電力の100%を再生可能エネルギーでまかなっている。事業を展開する地域では、グリッド(電力網)のグリーン化・強じん化や、企業、人びと、政府の排出削減もサポートする。

そのようななか、英国で仏電力大手エンジー(ENGI)と100メガワットの洋上風力発電の、スペインでは独太陽光発電事業者アイビーヴォーグトと149メガワットの太陽光発電のPPAを締結した。両国で新規の風力・太陽光発電所を建設し、クリーンエネルギーの供給を推進する。

グーグルにとっては、フィンランド、アイオワ、モントリオール、オレゴン、トロントに次いで、英国とスペインが90%CFE、またはそれに近い水準で運用されるリージョンになる。これにより、英国とスペインの企業、政府、その他の組織が、グーグルクラウドを利用して持続可能な方法でオペレーションのデジタル化を図ることを後押しできる。両国以外のクラウド利用企業も、region picker toolを活用することで、英国とスペインを含むグリーン・リージョンを選択できる。

スペイン大手ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)のサステナビリティ部門グローバルヘッドを務めるハビエル・ロドリゲス・ソレール氏は「当社にとってマドリードのクラウドリージョンを利用することにより、IT業務のカーボンフットプリント(#1)削減とサステナビリティを推進できる」と述べた(*1)。

グーグルは2010年に再生可能エネルギーの購入を開始して以来、欧州で25件超の風力・太陽光発電契約で約2.5ギガワット(太陽光パネル750万枚の出力に相当)の再エネを購入してきた。今年10月には、気候変動に取り組む都市の国際ネットワーク「C40」と完全な脱炭素化を図るカーボンフリーエネルギープログラム(24/7CFE)を開始すると発表した。都市の気候変動対策としては初の取り組みになる。

多くの企業が脱炭素化に向けた取り組みを推進するなかでPPAの活用が進んでいる。米フォード・モーター(F)は8月、総合エネルギー企業DTEエナジー(DTE)と2025年までに650メガワットの太陽光発電の購入契約を締結した。日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G、ティッカーシンボル:PG)は2022年9月、エンジーと200メガワットのPPAを締結している(*2)。

また、気候変動に取り組む都市の国際ネットワーク「C40」とグーグルは2022年10月20日、完全な脱炭素化を図るカーボンフリーエネルギープログラム(24/7CFE)を開始すると発表している(*3)。都市の気候変動対策としては初の取り組みになる。

世界人口の半分以上が都市に暮らし、都心は世界のエネルギー消費の3分の2を、炭素排出量では70%以上を占めている。そのため、都市は世界的なエネルギー・トランジション(#1)の実現において重要な役割を演じることになる。世界中の都市が急速にエネルギー消費の脱炭素化を進め、世界と各都市が定める気候目標の達成を後押ししなければならない。さらに、クリーンエネルギーへの移行により、市民に経済、雇用、健康面のベネフィットをもたらす必要がある。

同プログラムの下では、毎日毎時、使用する電力の全てをカーボンフリーのエネルギー源にすることを目指す。C40はその実現をサポートすべく、大きなインパクトをもたらす戦略やツールの開発・活用を試みる。まずは、ロンドン、コペンハーゲン、パリで実証実験を開始する。グーグルは各パートナー都市と脱炭素化に向けたベストプラクティスを共有するとともに、データ、テクノロジー、および90万ドルの資金を提供する。

各パイロットプログラムは、都市の電力消費の脱炭素化に関連した様々な課題の解決に注力する。それには電力需給バランスを踏まえた時間帯別の再生可能エネルギー電気の供給に加え、ミニグリッドや蓄電池を活用した地域のクリーンエネルギー拡充などが含まれる。

21年9月に国連エネルギー・コンパクトが発足して以来、24/7 CFEの取り組みは活発化している。アイオワ州デモインやニューヨーク州イサカといった都市に加え、アイスランドやスコットランドなどの国家も脱炭素目標を掲げる。24/7 CFEの取り組みによるベネフィットは、グーグルが支援するベルリン工科大学の研究で明らかになっている。つまり、1時間当たりのCFE導入の方が、年間エネルギー必要量を再生可能エネルギーで購入するよりも大幅に炭素排出量を削減する。

グーグルは500以上の都市、地方政府をサポートし、30年までに年間1ギガトン(10億トン)の炭素排出量の削減を目指す。交通状況を測定するAIツールや、グーグルの地図データやデータ解析技術を活用した温室効果ガス(GHG)排出量の推計ツール「Environmental Insights Explorer(EIE)」を活用し、都市のサステナビリティ向上を後押しする。EIEは既に数百都市で活用されている。

C40には世界の96都市が加盟(日本からは東京都と横浜市が加盟)。22年10月には、東京都とクアラルンプール市の連携による建築物の脱炭素化に向けた取り組みが、C40アワード(気候ムーブメント部門)を受賞した。

(#1)カーボンフットプリント…商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された温室効果ガスの量を追跡し、得られた全体の量を二酸化炭素(CO2)量に換算して表示すること。

【参照記事】*1 グーグル「A year of clean energy momentum in Europe
【関連記事】*2 P&G、過去最大規模となる200MWの電力購入契約を締結。エンジーから調達
【参照記事】*3 「C40 and Google launch 24/7 Carbon-Free Energy for Cities programme

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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