アンチマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)を推進する国際団体の金融活動作業部会(FATF)が、暗号資産を含むガイダンスの修正を行うことを2月25日に発表した。
FATFは、特定の国による影響を受けない国際規制団体だ。主にAML/CFTを推進しており、暗号資産関連ではトラベルルールの制定および施行が注目されている。FATFからの勧告は実質的な強制力を有しているため、その方針は重大な影響力を持つ。近年では、FATF勧告を受け米国で自己管理型ウォレットの規制強化案が提出されていた。2020年5月に施行された改正資金決済法も、FATF勧告を受けてのものとなっている。
今回発表されたのは、過去に定義されたガイダンスの修正だ。過去12ヶ月間に実施されたFATFの取り組みを元に、より適したガイダンスとなるよう修正を加えるという。
暗号資産に関連するアップデートは、主に次の3つとなっている。
- ステーブルコインに対するFATF基準の適用
- 公的部門および民間団体がトラベルルールに対応するための具体的な方法
- P2P取引に存在するリスクへの対応
FATFは、デジタル社会の基軸通貨としての可能性を秘めるステーブルコインに対して枠組みを整備する方針を示している。日本の現行法では、法定通貨建てのステーブルコインは暗号資産として定義されておらず、日本の取引所は取り扱うことができない状況だ。しかし、今回のガイダンス修正を受けて、日本国内でもステーブルコインの規制が整備される可能性が出てきた。
トラベルルールは、各国の暗号資産関連事業者(VASP)を対象にFATFが整備する規制の1つだ。暗号資産の送金時に、送り手と受け取り手の個人情報をそれぞれ記録しなければならず、対応するためのコストが肥大化してしまう懸念が生じている。
そのため、今回の修正ではトラベルルールへの対応が困難な国の事業者に対して、どのように対応させるかについてのアップデートも行われるという。
なお、今回の修正は3月中に正式な草案を公開し、公開議論によって得たフィードバックを反映させた上で6月に承認予定の完成版を作成するスケジュールとなっている。
【参照記事】Outcomes FATF Plenary, 22, 24 and 25 February 2021
株式会社techtec リサーチチーム
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