欧州議会のECON(経済金融委員会)は暗号資産に関する研究レポートで、ステーブルコイン、トークンベースの資金調達、サービスプロバイダーを利用したマネーロンダリングの脅威を指定した。暗号スペースに対応したEUレベルのルールメイキングを求めている。
「主な開発、規制上の懸念と対処」と題された報告書は、暗号資産のアプリケーションとインフラストラクチャ―が国境を越えてアクセスできると指摘しており、各国規制の裁定(アービトラージ)を利用したマネーロンダリング、及びテロ資金供与を危惧している。2018年5月にEUで採択された第5次マネーロンダリング指令(AMLD5)は暗号スペースの現状をカバーしていないため、犯罪者が規制システムのギャップを利用しやすい場所に活動拠点を設ける可能性がある。
報告書は、FATF(金融活動作業部会)が定義した「仮想資産サービスプロバイダー」に準拠して、カストディアンウォレットプロバイダーや仮想通貨取引所を含む多くの「暗号ゲートキーパー」を、EUのAML / CFTフレームワークの範囲に盛り込むよう提起している。これらのエンティティに対し、本人確認(KYC)を実装し仮想通貨取引を監視するよう義務付ける内容だ。加えて、不正な資金調達を取り締まるため、仮想通貨の法的定義にトークンを含めるよう推奨されている。
レポートはまた、フェイスブックが計画しているリブラのようなグローバルなステーブルコインが「既存で大規模な国境を越えたユーザーベース上に構築される」ため、非常に迅速にスケールする可能性があるとして、「金融の安定化と金融政策に対する新たな課題とリスク」をもたらすと警告している。また、EUの金融法において金融機関が暗号資産を保有すること、または暗号資産に関連するサービス提供が禁止されていない点も課題となる。ほとんどの暗号資産はボラティリティの高い性質を持ち、財政的ストレスのかかる時期に弾力性を持つと証明されていないからだ。
2020年1月10日に英国FCA(金融行為監督機構)は「暗号資産AML法」を施行した。FATF(金融犯罪タスクフォース)が定義するICO(イニシャルコインオファリング)やIEO(イニシャルエクスチェンジオファリング)など広範な暗号資産活動に関する金融犯罪リスクに対処していた。
【参照PDF】Crypto-assets Key developments,regulatory
concerns and responses
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高橋奈夕
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