食品・飲料世界大手のネスレ(ティッカーシンボル:NESN)、穀物メジャーの米カーギル(非上場)、および環境NGOの米国魚類野生生物財団(NFWF)は3月29日、向こう5年間にわたり米国の170万エーカーに及ぶ放牧地でのリジェネラティブ放牧の取り組み推進に向けて提携すると発表した(*1)米国で民間企業による取り組みとして最大規模の一つとなる。
パートナーシップの締結を通じ、気候変動対策となる自主的な環境保全活動の導入拡大を後押しする。地主および地元の環境保護団体と協働し、自発的な土地管理、水管理、野生生物の生息地再生のサポートを行う。また、ネスレとカーギルはNFWFに1,500万ドル(約20億円)を拠出し、最大1,500万ドルの連邦基金と合わせ、向こう5年間で3,000万ドルの資金を活用する計画だ。NFWFによる助成金(第一弾)は、2023年4月に支給される見通しである。農家および牧場主は、技術的・財政的な支援を受け、所有地でリジェネラティブな取り組みを実践できる。
NFWFによると、畜産農家による自発的な環境保全活動により、グレートプレーンズ(北アメリカ中西部)などのエリアを含む15州以上で、CO2e(二酸化炭素換算)で84万5,000トン削減できる見込みであるという。渡り鳥からエルク、イケチョウガイに至るまで数百種類の種にもベネフィットをもたらすと見られている。これらにより、牧草地にある野生生物の生息地保護に加え、川や水路の水質改善、牧草の質量維持に繋げられる見通しだ。
気候変動と生物多様性が相互に関係する中、農業は両者に大きなインパクトをもたらす一大分野となる。各産業の有力プレーヤーは持続可能な社会の形成に向け、農業分野におけるリジェネラティブな取り組みを後押しする動きを活発化している。仏食品大手ダノン(BN)は23年1月、食品会社初となるメタン排出量の削減目標を策定し、リジェネラティブ酪農などを推進する(*2)。仏高級ブランドLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(MC)は22年11月、サーキュラー・バイオエコノミー・アライアンス(CBA)と提携し、アフリカでリジェネラティブ・アグロフォレストリー(再生型の森林農業)を推進すると発表した(*3)。
【参照記事】*1 カーギル「Nestlé and Cargill team up with the National Fish and Wildlife Foundation to support sustainable grazing practices across 1.7 million acres in the U.S. over the next five years」
【関連記事】*2 ダノン、食品会社初となるメタン排出量の削減目標を策定。リジェネラティブな酪農など推進
【参照記事】*3 LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン「CBA and LVMH announce major new project – The Circular Bioeconomy Alliance」
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