カルフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)は2022年8月、気候変動への取り組みや教職員の退職後の安心をサポートする一連の投資アクションを公表した(*1)。遅くとも2050年までのネットゼロエミッション(温室効果ガス(GHG排出量の実質ゼロ))の達成にむけた取り組みを推進する。
カルスターズは、気候変更が世界中の全業界、全アセットクラスにとって重大リスクになっているとの認識を示した。そのようなか、ポートフォリオのネットゼロにむけて4つの取り組み事項をあきらかにした。
具体的には、①科学的根拠に基づく中間目標を設定し、30年までに投資ポートフォリオのGHG排出量を50%削減②GHG排出の影響をリスク・リターン分析にもとづく伝統的な投資意思決定プロセスに組み込む③株式ポートフォリオの20%を低炭素インデックスにふりむける④気候関連シナリオをアセット・ライアビリティ(#1)・モデリング・フレームワークに組み込むといったものだ。
①は、気候変動による影響を評価する世界で最も権威のある国際機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新結果と整合性をもつ。カルスターズは、最新の利用可能データ、市場変動、関連の科学の進歩にかんがみ、毎年ネットゼロ目標および戦略を見直す。
ハリー・ケイリー理事長は「当社のネットゼロ誓約は、カリフォルニア州で懸命にはたらく教職員とその家族に退職後の安心をお届けするための100年におよぶ約束である」と述べた(*1)。また、シャーロン・ヘンドリックス副理事長は「われわれは排出削減にむけた取り組みを拡充し、低炭素ソリューションへの投資を拡大するとともに、世界経済のトランジション(移行)を加速させるべく影響力を行使しなければならない」と言及している(*1)。
米国では州の経済・社会情勢に応じ、州公的年金の気候変動に対する投資姿勢に違いが出ている。カリフォルニア州は連邦政府に先駆けて気候変動対策をリードする。米最大の公的年金基金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は16年8月に「ESG戦略計画」を発表。投資先のなかでGHG排出量の多い企業に対してパリ協定の目標と合致する水準でのGHG削減をもとめて働きかけをしていくと宣言した。
一方、米国で最大の石油・ガス生産を誇るテキサス州は、エネルギー企業への投融資をボイコットしていると判断した金融機関10社を公表した。同州の年金基金などを通じたダイベストメント(投資撤退)の対象としている(*2)。
(#1)アセット・ライアビリティ…資産と負債を総合的に把握・管理する手法。
【参照記事】*1 カルスターズ「CalSTRS’ Board sets science-based emissions goal for 2030 and commits to additional net zero actions
【関連記事】*2 米テキサス州、エネルギー企業ボイコットの金融機関10社公表。州ファンドのダイベスト対象に
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