アメリカ、ニューヨークに本拠を置くリサーチ会社のCB Insightsは、ブロックチェーンおよび暗号通貨への投資トレンドに関するレポート「Blockchain Investment Trends In Review」を公表した。
同レポートによると、2017年には暗号通貨の価格が高騰し、ICOで投資を行っていた投資家の多くが利益を得たことが分かった。また、巨額の資金調達がしやすいため、従来のエクイティファイナンスよりICOを通して資金調達することを選ぶ起業家も増加した。このため暗号通貨の需要が世界的に増え、また価格が高騰するというサイクルが生まれた。この影響で、例えばイーサリアムの時価総額は2016年1月時点で7800万ドルだったのが、今日では30億ドル近くまで増加している。
2016年1月時点からブロックチェーン技術を用いる250以上の組織がICOを行ってきており、そのうち55%以上が2017年7月中、もしくはそれ以降に調達を完了させている。
四半期ベースで見ると2017年の第2四半期で初めて、ICOを通して調達した資金の総額がエクイティファイナンスのそれを上回った。この傾向は同年の第3四半期にも続き、エクイティファイナンスを通したブロックチェーン関連組織への投資は停滞したのに対し、ICOは同時期に75%も伸びた。
ICOで資金調達をする組織はアセットマネジメント、ソーシャルネットワーク、そして予測市場など、様々な分野において非中央集権型のブロックチェーンを構築している。資金の多くは、Tezos (2017年第3四半期に2.3億ドルを調達)やBancor(2017年第2四半期に1.53億ドルを調達)のように、核となるインフラや開発プロジェクトに充てられた。またFilecoin(2017年第3四半期に2億ドル超を調達)、SONM(2017年第2四半期に3500万ドルを調達)、Golem(2016年第4四半期に900万ドルを調達)に代表されるように、ブロックチェーンのインフラを構築するコンピューター会社への投資家の関心も高かった。
その一方、ICOに過大な資本が流れすぎているとの見方もある。重要な点として、ICOを行う組織は、これは株券の代わりになるものではないという姿勢を取っている。これは場合によっては違法行為に繋がり、また、その実態に関係なく自分たちのコインおよびトークンを新しいかたちの資産として売り出している。
ICOプロジェクトチームは、希少性の高いトークンは分散したネットワーク内で将来的に価値を持つようになると主張してICOを正当化している。だが、ICOプロジェクトは投資に関する覚書、ロードマップ、製品の提示が無いことも珍しくはないことも事実だ。こういった企業が短期間で多額の資金を調達すると、後々不始末を起こす可能性がある。
このためICOへの投資を検討する際は、想定されるリスクを事前によく把握しておくことが大切だ。国によって規制を設けている場合もあり、詳しくはそちらも参照していただきたいが、詐欺に遭うリスク、価格変動リスク、法令や税制が変更されるリスクなどに留意する必要がある。
【参照サイト】Blockchain Investment Trends In Review
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木村つぐみ
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