今回は、SocialFiについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- SocialFiに関する基礎知識
1-1.SocialFiとは?
1-2.SocialFiの特徴 - SocialFiを理解するポイント
2-1.WEB2.0の課題
2-2.SocialFiに求められる要素 - 注目のSocialFiプロジェクト
3-1.Secretum
3-2.Monaco Planet
3-3.Lens Protocol - まとめ
2021年以降、メタバース(仮想空間)やGameFiの分野が仮想通貨市場をけん引してきましたが、次のトレンドとなりそうな分野として注目されているのが「SocialFi(ソーシャルファイ)」です。今回はトレンドを先取りするべく、SocialFiが注目される背景やSocialFiに関連するプロジェクトについて解説します。
①SocialFiに関する基礎知識
まずは、SocialFiに関する基礎的な事項について解説します。
1-1. SocialFiとは?
SocialFiとは、ソーシャルネットワーキングとブロックチェーン技術を活用した「金融」の融合を意味します。従来のソーシャルネットワークというと、FacebookやLINE、ミクシーといった限られたメンバー間のコミュニケーションに使用するものから、InstagramやTiktok、Youtube、Twitterなどよりオープンな情報発信に使用されるアプリがあります。これらの共通点は企業が保有するサーバーにユーザーに紐づくデータを保持していることです。
SocialFiのコンセプトは、ソーシャルネットワークにブロックチェーン技術を搭載し、ユーザーによる自由なエコシステムを作り上げようとするものです。SocialFiプラットフォームは分散型自律組織(DAO)によって管理され、コミュニティトークンを保有する人々が提案に投票し、プロジェクトの将来を決定できます。ユーザーが自分に紐づくデータや、エコシステムの一部を所有・管理できるWeb3の世界に基づいています。
1-2. SocialFiの特徴
SocialFiに関して厳密な定義はありませんが、SocialFiに分類される仮想通貨プロジェクトには、以下のような共通点があります。
- 仮想通貨のウォレットアドレスで利用可能
- ユーザー同士のトークンのやりとりが自由に行え、マネタイズも可能
- 分散型自律組織(DAO)でプラットフォームが運営される
マネタイズの部分は、SocialFiが提供する大きなメリットの1つです。コンテンツクリエイターは、自分の作品から直接的な金銭的利益を得ることができます。中には「Communicate-to-Earn(コミュニケート・トゥ・アーン)」と呼ばれる新しいモデルを加えることで、ユーザーがアクションに対して報酬を受け取り、収益化できるものもあります。そこでは、いいね!やリツイート、コメントがトークン報酬に反映されます。これらの特徴はDeFiやGameFiとも共通する多くのユーザーを惹きつける要素となります。
②SocialFiを理解するポイント
SocialFiをより深く理解するためには、現状のソーシャルメディアの問題とブロックチェーンソリューションの可能性について見ていく必要があります。
2-1. WEB2.0の課題
2000年代初頭〜現在に至るWeb2.0時代にインターネットの接続速度が高速化したことで、画像や動画を使ったコンテンツを配信できるようになり、様々な人との双方向の情報のやり取りができるようになりました。それまで単純に閲覧するだけだったWEBは、SNSを介して誰もが参加できるものとなりました。
Web2.0によりオンラインでのソーシャルインタラクションが実現しましたが、検閲耐性、言論の自由、データの権利、プライバシー、セキュリティ、経済的不公平がそれら集中型サービスの利便性と引き換えになっています。例えば、GAFAに代表される大企業に個人情報だけではなく行動履歴や嗜好に関するデータが本人の意思と反して蓄積され、販売されるという問題があります。特にメタ社(旧Facebook)の情報管理は問題視されており、WhatsAppは2021年9月にデータ処理とデータ共有違反で2億5500万ユーロの罰金を科され、Facebook Messengerは5億3300万人のユーザーの個人データが2021年4月に漏洩しています。
また、ユーザーはこれらのソーシャルメディアプラットフォームで公開したコンテンツと個人データに対する所有権を持ちません。そのため、自分のデータ、フォロワー、メディアをパワフルにマネタイズすることもできません。Web2.0の大手テクノロジー企業がユーザーの多くの情報を活用する一方で、大半のユーザーは何の報酬も得られないのです。
こうした課題を払拭する新しいインターネットの世界がWeb3.0 時代の分散型ソーシャルネットワークです。SocialFiのプラットフォームはトークン化されたインセンティブにより世界中のサーバー上で動作し、作成された価値は透明な形でユーザーと共有されます。データをユーザーのコントロール下に戻し、自分の情報を誰に届けたいかを決定できるようになります。YouTuberの収入はガイドラインの厳格化により年々減少している一方で、SocialFiを利用したプラットフォームではコンテンツクリエイターがファンベースからの直接のマネタイズも可能となります。
2-2. SocialFiに求められる要素
WEB2.0の課題を踏まえると、Web3.0 に位置づけられる「SocialFi」に求められる要素には以下のような項目が挙げられます。
- プライバシーの保護
- 強固なセキュリティ
- 中間搾取を排した自由な経済活動
- 分散型の民主的な管理体制
これらの要素を備えたブロックチェーンベースのSNSプラットフォームが、SocialFiとして数えられています。
③注目のSocialFiプロジェクト
最後に代表的なSocialFiを3つご紹介します。
3-1. Secretum
「Secretum」(セクレタム)と名付けられたこのプロジェクトは、Solanaブロックチェーンをベースとし、ウォレットのアドレスのみを使用することで完全匿名の通信を実現し、メッセージアプリとしてだけではなく、OTC取引ツールとしても機能します。
Secretumは、Solanaブロックチェーンのトランザクション処理の速さと、ガス代(トランザクション処理に伴う手数料)の低さがユースケースでの使用に十分な性能を持っているため、「Solana」が採用されています。
Secretumのネットワークで使用されるネイティブトークンとしては、SERと呼ばれるSPLトークンが使用される予定で、SERの役割は以下の6つに定義づけられています。
- Secretumネットワークに新しいユーザーを招待するときの保障としての機能
- ネットワークノードに支払う報酬としての機能
- ユーザー同士がウォレット間で仮想通貨のやり取りを行う際の手数料
- ネットワーク内に構築されたチャンネルを介して提供されたコンテンツ関連の支払い
- メッセージストレージやファイルストレージなどの追加機能の料金の支払い
- 非Secretumユーザーとの取引における承認手段としての機能
このようにSocialFiにおけるトークンの位置づけは、Web3.0を実現するために機能するための重要なものとなります。
3-2. Monaco Planet
Monaco Planetは、Web3.0版のTwitterともいえるNFT専用のソーシャルメディアプラットフォームです。ユーザーはMetaMaskなどのウォレットアドレスのみでログインでき、自身のプロフィールページでNFTのコレクションを紹介できます。
従来のソーシャルプラットフォームでは、クリエイターのコンテンツはプラットフォームが所有することが多く、ユーザーのアテンションもプラットフォームの意図により操作されますが、プラットフォームの所有権とガバナンスの権利はユーザーによって決定され、コンテンツマイニングの「Write to Earn」モデルによりネイティブトークンの獲得が可能です。
ネイティブトークンの大部分は、コンテンツを生成するユーザーに配布され、ステーキングも可能とすることで、SNSプラットフォームを利用することでマネタイズを可能としています。
3-3. Lens Protocol
Lens Protocolとは、大手DeFiプロトコル「Aave」の開発チームが2022年2月8日に公開したオープンソースの分散型ソーシャルメディアプラットフォームです。Lens Protocolは非中央集権的に運営されるプラットフォームで、誰もがパーミッションレス(無許可制)でWeb3.0 ソーシャルプラットフォームを簡単に構築でき、コンポーザブル(構成可能)な性質を持ちます。
Lens Protocolは個別のSNSの枠を超えて、自分のソーシャルグラフを構築できるようになる、というWeb3.0 のビジョンに基づいており、ソーシャルネットワーク上の友人、グループ間の関係性を示すマップを自分で管理することができます。
具体的な機能としては、プロフィールの作成やコメント、投稿やその再共有といった、既存のソーシャルメディアプラットフォームと同様の機能があります。これらは全てNFT(非代替性トークン)として発行でき、所有・利用・売買・収益化に利用できるようになっています。プロフィールにウォレットアドレスを紐付けできるので、パーミッションレスな方法でクリエイターとオーディエンス間でコンテンツを配信したり、クリエイターがコンテンツから収益を得ることもできます。
他にも、プロフィールNFTを活かしたトークンエコノミーやユーザーのマネタイズ、コミュニティ形成、NFT保有者限定の投票機能など、従来のソーシャルメディアプラットフォームとは一線を画した機能が搭載されています。
Lens Protocolは現在、Polygon(ポリゴン)の「Mumbai」テストネット上で稼働しており、α版メインネットの立ち上げ時期はまだ公表されていません。
④まとめ
SocialFiはまだ黎明期にありますが、すでに大きな可能性を秘めている取り組みも見られています。SocialFiプロジェクトに対するベンチャーファンドの投資意欲も高まっており、5億ドルの予算を持つBinance Smart Chainの投資プログラムは主要な投資分野の一つとしてSocialFiにフォーカスしています。Solana Venturesも総額1億ドルをWeb3.0Social Startupsへの資金提供を発表しています。2021年にメタバース・GameFi市場がブームとなったように、2022年にはSocialFiとブロックチェーンベースのソーシャルメディアへの注目が寄せられるかもしれません。
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中島 翔
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