日産化学のESG・サステナビリティの取り組みは?配当情報も

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日産化学は日本初の化学肥料のメーカーとして誕生した会社であり、機能性材料や農薬、化学品などに強みを持っています。直近の業績は過去最高を更新し続けており、今後さらなる成長が期待できる銘柄の一つとなっています。

そこでこの記事では、日産化学への長期投資を検討している方に向けてESG・サステナビリティの取り組み内容を詳しく解説していきます。配当推移など株主還元に関する情報も紹介しているので、日産化学に関心のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年12月3日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 日産化学の特徴
  2. 日産化学のESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.マテリアリティ(重要課題)
    2-2.E(環境)
    2-3.S(社会)
    2-4.G(ガバナンス)
    2-5.日産化学のESG・サステナビリティに関する外部評価
  3. 日産化学の業績・株価動向
  4. 日産化学の配当推移
  5. まとめ

1 日産化学の特徴

日産化学は東証プライム市場に上場している日本の化学メーカーであり、日本で初めて化学肥料を製造する会社として誕生しました。企業理念は、「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」であり、時価総額は9,500億円前後と企業規模も大きく、国内のみならずグローバルに事業を展開中です。

日産化学の事業内容は、肥料をはじめとして電子材料や無機、有機材料を主力としています。特に農薬や医薬、研究開発に力を入れており、機能性材料や農業化学品、医薬品、化学品などが中心です。事業ポートフォリオは以下4つの事業領域からなります。

事業領域 事業内容
化学品事業 基礎化学品・ファイナンケミカル・開発品
機能性材料事業 ディスプレイ材料・半導体材料・無機コロイド・開発品
農業化学品事業 農薬・緑地管理薬剤・動物用医薬品
ヘルスケア事業 ヘルスケア・ファインテック

化学品事業は、硫酸やアンモニアなどの工業薬品や、ディーゼル車の排ガス規制に対応する高品位尿素水、また半導体を洗浄するための薬品を中心に製品を提供しています。機能性材料事業ではディスプレイ市場のニーズに対応する液晶配向材や、半導体の製造工程に欠かせない反射防止コーティング材料、電池や高額フィルムのコーティング剤なども提供しています。

農業化学品事業では除草剤や殺虫剤、殺菌剤などの農薬の開発製造や販売などを行っているほか、ブラベクトと呼ばれるペット用の外部寄生虫薬の原薬を製造しています。そして、ヘルスケア事業では高血圧症と狭心症の治療に使用される治療薬の販売や、不整脈治療薬の新薬を開発しています。

また、上記の事業領域に加え、企画本部と呼ばれる将来の新事業を生み出す部門を運営しています。企画本部では情報通信分野や環境エネルギー分野、ライフサイエンス分野において、将来の事業の柱となる新事業や新材料をミッションとしています。

顧客ニーズに合う新材料の実需化を進めており、研究開発に日々取り組んでいます。日産化学の売上高に占める研究開発費の比率は8%前後と、国内の平均的な化学業界の倍近い水準にあり、日々の研究開発の源泉となっています。

このように日産化学は4つの事業からなるバランスの取れた事業ポートフォリオと、同業他社と比べて研究開発に力を注いでいる点が大きな特徴です。

2 日産化学のESG・サステナビリティの取り組み

日産化学はESGやサステナビリティについて、次のように取り組んでいます。

2-1 マテリアリティ

日産化学は、「中期経営計画Vista2027」と「長期経営計画Atelier2050」を定めることで、2050年のあるべき姿の実現に向けて行動しています。具体的には、マテリアリティと呼ばれる重要課題と、マテリアリティ実現に必要なKPIを設定しています。マテリアリティには大きく分けて、次の3つの課題が定められています。

  • 人々の豊かな暮らしに役立つ新たな価値の提供
  • 自社の事業基盤の強化
  • レスポンシブルケアの積極的強化

そして、それぞれのマテリアリティからそれぞれの要素を抽出し、具体的な取り組みと2027年度の目標を定めています。各マテリアリティの具体的な要素と目標は、以下の通りです。

マテリアリティ 要素 2027年度の目標
・人々の豊かな暮らしに役立つ新たな価値の提供 ・社会課題解決に貢献する製品やサービスの連結売上高に占める割合 ・55%以上維持
・自社の事業基盤の強化 ・研究開発費の強化 ・特許出願数2,500件
・レスポンシブルケアの積極的強化 ・気候変動の緩和 ・GHG排出量:2018年度比30%以上削減

上記以外にも、様々な要素に対して、目標を定めて取り組んでいます。日産化学は人と自然の豊かさを希求して成長する未来創造企業としてサステナビリティの全体像を定めています。

2-2 E(環境)

日産化学は、環境負荷軽減につながる製品の製造や販売を行っており、例えば、機能性材料では金属の量を10分の1以下に削減するパイパーテックを提供するほか、軽量かつコンパクトな農薬製剤を供給しています。

また、油脂由来の廃棄物を削減することを目的として、排水中の油脂を分解する微生物製剤を活用し、温室効果ガス(GHG)については、排出量30%以上を削減することを目標に取り組んでいます。

2-3 S(社会)

日産化学は、イノベーティブに挑戦を楽しむ組織が醸成されることを目指して、働きやすい職場作りに取り組んでいます。具体的には、以下の通り、ダイバーシティビジョンを定めることで社内外に存在する多様性を尊重して受け入れる風土を構築しています。

  • 次世代育成支援
  • 女性活躍の推進
  • 外国籍社員の採用活動の強化
  • 障がい者雇用の促進

次世代育成支援では、子育てと仕事を両立しながら能力を発揮できるよう労働環境の整備に取り組んでいます。具体的には福利厚生制度を導入することで社員の生活をサポートするとともに、休日出勤を含めた時間外労働を最大でも月40時間以内に抑えることを原則としています。

女性活躍の推進では、総合職を採用する際の女性登用率の目標を30%以上に掲げ、社内の女性活躍を推進しています。また外国籍社員の採用活動を強化するとともに、障がい者が活躍できる職場として法定を上回る障がい者採用率を維持しています。

2-4 G(ガバナンス)

日産化学では、企業存続にかかわる課題としてコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントの強化にも積極的に取り組んでいます。コーポレートガバナンスでは、ステークホルダーの持続的かつ中長期的な利益を実現させるため、保有する政策株式が中長期的な企業価値の向上に値するのかを検討するとともに、取締役会全体の実効性についても分析・評価しています。また、外部機関を活用した第三者評価を3年ごとに実施しています。

コンプライアンスに関しては、通報の窓口として「相談ほっとライン」を設置することで、コンプライアンス違反の発生防止に努めています。また、参加型のコンプライアンス研究を定期的に開催し、コンプライアンスを徹底するように教育しています。

リスクマネジメントでは、アンケート用紙によって役員から定期的にヒアリングを実施することで、リスクの概要と対策を抽出して具体的なリスクを選定し、リスクマップを作成して事業への影響度に応じた対策を定めています。

2-5 日産化学のESG・サステナビリティに関する外部評価

日産化学のESG・サステナビリティの取り組みは、外部機関からも高い評価を受けています。以下は、2022年における外部機関からの表彰実績です(一部抜粋)。

2022年9月15日 「Gomez ESGランキング2022」にて優秀企業に選定
2022年7月11日 「FTSE4Good Index Series」および「FTSE Blossom Japan Index」、「FTSE Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定
2022年7月11日 「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」の構成銘柄に選定
2022年4月5日 「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定
2022年3月10日 「健康経営法人〜ホワイト500〜」に選定

Gomez ESGランキング2022はウェブサイトの使いやすさやESGに関連する5つの切り口から、ステークホルダーの視点に基づいて優秀企業が選定されます。また、FTSEのインデックス構成銘柄の選定は、環境および社会、ガバナンスについて優れた対応を行う企業のパフォーマンスを測定するために設計されたインデックスであり、ESGについて優れた対応を行う企業が選ばれます。

一方、MSCI日本株女性活躍指数は、女性の活躍推進に優れた企業から選定するための指数であり、GPIFがESG投資を行うために活用する指数の1つです。そして、健康経営優良法人は、優良な健康経営を実践している大規模法人を表彰する制度であり、日産化学は6年連続で選定されるなど、高く評価されています。

3 日産化学の業績・株価動向

日産化学の業績は好調で、過去最高の売上高を更新しています。具体的な直近3年間の業績実績は、次の通りです。

項目 2020年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上高 2,068億円 2,091億円 2,079億円
営業利益 386億円 425億円 509億円
経常利益 400億円 438億円 536億円
純利益 307億円 334億円 387億円

また、2023年3月期決算の業績予想は、通期の業績予想通りであれば過去最高を更新する見通しです。実際、2022年11月には業績予想の上方修正を発表しています。

項目 2023年3月期 前期比
売上高 2,342億円 +12.6%
営業利益 555億円 +8.9%
経常利益 583億円 +8.6%
純利益 421億円 +8.6%

前年同期比で大幅な伸び率になっている理由としては、半導体の材料製品やフルララネルと呼ばれる動物用医薬品原薬が好調であることなどが挙げられます。このように、日産化学は長期的に見て業績を着実に伸ばしてきているため、今後もさらなる好業績が期待できる状況です。

一方、日産化学の株価動向も堅調です。2022年12月6日時点の株価は6,690円で、上場来高値は7,670円となっています。直近の値動きとしては、上場来高値を付けた直後に三菱UFJモルガン・スタンレー証券が投資判断を格下げしたことで、一時的に大きく値下がりしたものの、その後は値段を保ち続けており、株価は6,000円〜7,500円までのレンジを横ばいで推移しています。

過去10年間の株価推移も好業績に支えられる形で右肩上がりに推移しており、株価は高値を更新し続けています。例えば、2012年12月3日の株価が1,000円であったのに対して、2022年12月2日の株価が6,600円であるため、10年で7倍近くまで値上がりした格好です。

2018年12月3日に6,370円を付けてから株価は一時的に調整するかたちで値下がりし、2020年3月にはコロナショックが下降トレンドに追い討ちをかける形で3,000円を割り込むところまで値下がりしたものの、その後は反発して7,000円を超えており、長期的な上昇トレンドは継続中です。

4 日産化学の配当推移

日産化学は株主還元策の一環として、株主に対して配当金の支払いを行っています。配当金は、中間配当と期末配当の年に2回支払われます。直近5年間の具体的な配当金の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当 期末配当 年間配当合計
2017年度 32円 36円 68円
2018年度 40円 42円 82円
2019年度 42円 48円 90円
2020年度 46円 58円 104円
2021年度 50円 72円 122円

年度を重ねるごとに1株あたりの配当金が増えている状況です。配当金は配当性向を基準に決定されるため、配当性向の基準が上がるほど、支払われる配当金は増額されます。配当性向とは当期純利益のうち、どのくらいの割合を配当金として株主に還元するのか示した指標で、例えば、配当金の支払い総額が150億円で当期純利益が300億円であるときの配当性向は、150億円÷300億円×100=50%になります。

実際、日産化学の配当性向は段階的に引き上げられており、2015年度の実績は30.7%でしたが、2021年度実績では44.9%まで上昇しています。また、直近発表された新中期経営計画Vista2027では、配当性向の目標をさらに55%に引き上げる方針を発表しており、今後さらなる配当金の増額が期待できます。

2022年度の年間配当金は164円を予定しており、中間配当については2022年9月30日において70円であることが決定しています。期末配当の予想としては94円を予定しており、配当予想通りであれば、過去最大の配当金の支払いになります。日産化学の業績は堅調であることから、当期純利益の増加と配当性向の上昇によって、さらなる配当金の増額が見込まれます。

まとめ

日産化学は、ESGやサステナビリティに対して積極的に取り組んでおり、ESGインデックスに組み入れられたり、ホワイト企業に選ばれたりするなど、外部の評価機関からも高い評価を受けています。また、株主優待制度はないものの、配当金の支払いによる株主還元を行っています。配当金は配当性向に基づいて決定されるため、業績が好調な日産化学の配当金はさらなる増配が期待できるのも特徴です。

日産化学のESG・サステナビリティの取り組み内容に関心のある方は、この記事を参考に検討を進めてみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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