米シャーウィン・ウィリアムズ(ティッカーシンボル:SHW)は塗料の分野で世界大手です。住宅の外壁に塗る塗料を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
2017年から2022年までの5年間の累積トータルリターンは、S&P500および競合グループを上回りました。環境負荷の低減に繋がるサステナブルな商品開発も推進しています。
そこで今回は、シャーウィンの会社概要や製品の特徴をおさらいした上で、同社のサステナブルな取り組みや業績・株価動向、新NISA成長投資枠対応の組み入れファンドを紹介します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 塗料世界大手
- シャーウィンのサステナブルな取り組みや製品
2-1 環境フットプリントの低減
2-2 サステナブルな製品開発 - シャーウィンの業績・株価動向
- シャーウィンを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選
4-1 GS米国成長株集中投資ファンド年4回決算コース
4-2 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし) - まとめ
1 塗料世界大手
シャーウィンは1866年に創業した老舗塗料メーカーです。プロ(業者)やコンシューマー(小売顧客)など向けに建築用塗料やコーティング剤の開発、製造、販売を行っています。
本店所在地 | 米国オハイオ州クリーブランド |
創業年 | 1866年 |
売上高 | 221億ドル |
従業員数 | 6.4万人超 |
店舗数 | 5千店超 |
事業展開国数 | 120ヵ国超 |
※参照:シャーウィン・ウィリアムズ「About Us」
155年超の歴史において、これまでに一般住宅や橋梁、船舶向けなどに加え、ホワイトハウスやペンタゴン、ハリウッド・サイン(白色文字)といったアイコニックな建築物にも同社の塗料が利用されています。
シャーウィンは以下の2つの要因により高い参入障壁を構築しています。
- 他社を圧倒する店舗ネットワークの構築
- 塗料技術・ノウハウの蓄積
塗料は重く、輸送コストがかかることから、顧客先との地理的距離がビジネスの成否に大きく影響します。シャーウィンは既に、競合他社を圧倒する5,000店舗超のネットワークを構築し、配送スピードや効率性を高めることで、競争優位性を確保しています。
また、塗料は各地域の気候条件に応じて色以外の様々な性能が求められます。長い歴史を有するシャーウィンは、耐熱、遮熱、結露防止、抗菌といった複数のニーズに対応した高度な技術・ノウハウを蓄積していることも高い参入障壁の構築に繋がっていると言えるでしょう。
※画像引用:シャーウィン・ウィリアムズ「About Us」
特にプロの塗装業者は、塗り直しを無くすため、安さよりも、塗りムラがなく効率的に塗装ができる品質の高さや実績を求めています。そのため、品質や認知度の高いシャーウィンの塗料が選好され続け、乗り換えコストが発生してもいます。
住宅用塗料は新築時だけでなく、補修時にも利用されることから、シャーウィンにとっては安定した需要が見込めます。さらに、乗り換えコストがかかるプロの業者向けが会社全体の6割以上を占めていることも、収益の安定性の確保に繋がっていると言えるでしょう。
※参考:シャーウィン・ウィリアムズ「2023 Investor Presentation」
2 シャーウィンのサステナブルな取り組みや製品
ここからはシャーウィンのサステナブルな取り組みや製品を見ていきましょう。
同社は以下の3項目をESG(環境・社会・ガバナンス)戦略の柱として位置づけています。
- 環境フットプリント(*)
- 製品ブループリント
- 社会インパクト
(*)環境フットプリントは、原材料の調達から廃棄、再利用まで、製品や企業活動が環境にどれだけの負荷を与えているかを定量的に示すもの。
今回は、その中でも環境フットプリントの低減、および製品ブループリントに関連したサステナブルな製品開発に焦点を当てて、シャーウィンの取り組みを確認します。
※参考:シャーウィン・ウィリアムズ「2022 SUSTAINABILITY REPORT」
2-1 環境フットプリントの低減
まず、環境フットプリントの低減に関しては、以下のように2030年までの目標(2019年を基準年として比較)を掲げています。
- スコープ1とスコープ2の絶対排出量を30%削減
- 電力使用全体に占める再生可能エネルギー由来の電気の比率を50%に
- エネルギー効率を20%向上
- 廃棄物原単位(*)を25%低減
(*)廃棄物原単位は、分子を廃棄物排出量、分母を売上高とし、除して算出する。
その目標達成に向け、気候、炭素、廃棄物削減という3つの領域の取り組みに注力しています。
※画像引用:シャーウィン・ウィリアムズ「Environmental Footprint」
例えば、2020年に塗料を運ぶ配送車に電気自動車(EV)を導入して以来、充電ステーションへの投資を続けています。
また、米国環境保護庁(EPA)の「スマートウェイ・プログラム」にも参画し、貨物輸送の効率性を測定、ベンチマークし、改善を図ることで環境フットプリントの低減を目指しています。同プログラムを通じEPAと協働する数千社の中で、シャーウィンは2022年に一定の貨物輸送効率を満たす「スマートウェイ・ハイパフォーマー」に選出されました。
さらに、シャーウィンが運営する直営店舗ではスマートサーモスタットへの投資を継続しています。スマートサーモスタットは、天候や店舗の営業時間などに応じて自動温度設定を可能にする電子機器であり、冷暖房システムのエネルギー消費を節約することができます。同社では最新のスマートサーモスタットを導入することで、店舗当たりのエネルギー消費量を15%削減しました。
その他にも、本社内の一部の場所で、使い捨てのペットボトルを缶入り飲料に置き換える取り組みも推進しています。アルミ缶は使い捨てのペットボトルよりもリサイクル率が高く、エネルギーを節約できます。また、アルミニウムは何度でもリサイクル可能なため、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現にも寄与するでしょう。
※参考:シャーウィン・ウィリアムズ「2022 SUSTAINABILITY REPORT」
2-2 サステナブルな製品開発
次に、シャーウィンがESG戦略の柱の一つに掲げる製品ブループリントについては、持続可能な優れた商品の開発に注力しています。
※画像引用:シャーウィン・ウィリアムズ「Product Innovation & Stewardship」
シャーウィンは、製品コンセプトの策定から商品化に至るプロジェクト全体で、化学物質の配合やサーキュラリティなど以下の項目を評価し、製品をよりサステナブルで高性能なものにする方法を導き出しています。持続可能な優れた商品開発に向けたこれらの取り組みにより、第三者機関からサステナビリティ関連の認証を取得する製品も増加している状況です。
- 空気質:揮発性有機化合物(VOC*)の削減、空気浄化技術など
- プロダクトスチュワードシップ:バイオベース塗料、エコラベル認証など
- 省資源:資源資料量や廃棄物の削減、環境フットプリントの低減など
- サーキュラリティ:リサイクル、持続可能なパッケージングなど
- パフォーマンス:耐久性の向上、人件費削減など
(*)揮発性有機化合物は、揮発性が高いため大気中で気体となる有機化合物の総称。VOCが原因となってシックハウス症候群や化学物質過敏症を発症し得る。(東京都環境局「VOCとは?」)
具体的な取り組みとしては、例えば、2022年6月に欧州市場で、家具、キッチンキャビネット、内外装の建築製品に使用できるバイオ由来木材コーティング剤の販売を開始しました。
植物由来原料を最大40%含有したコーティング剤は、化石燃料由来商品と同等の性能を発揮すると共に、環境フットプリントの低減にも貢献します。
また、産業用塗料の分野では、中国の豊田工業(昆山)有限公司(母体は日本の豊田自動織機)と提携し、高硬度、低粘度、低VOCのコーティング製品ラインを立ち上げました。
シャーウィンのコーディング剤「Duraspar」の高い耐食性、耐候性、接着性が高く評価されています。シャーウィンはアジア太平洋地域におけるトヨタ・フォークリスト初の非日系認定コーディング・サプライヤーになりました。
さらに、シャーウィンは持続可能性に配慮した製品に特化したウェブサイトも開設しています。これにより、顧客は簡単に同社のサステナブルな商品およびサステナビリティ認証などの情報を得られるようになりました。
※参考:シャーウィン・ウィリアムズ「2022 SUSTAINABILITY REPORT」
3 シャーウィンの業績、株価動向
ここからはシャーウィンの業績や株価動向を見ていきましょう。
過去6年間(2017年と2022年)を比較した業績は、売上高、利益共に順調に拡大しました。それぞれ、5年間の年平均成長率(CAGR)は8.1%、11.7%になります。
- 売上高は47%増(150億ドルから221億ドルへ)
- 希薄化後一株当たり利益(EPS)は74%増(5.02ドルから8.73ドルへ)
収益性(5年平均)は良好な水準を維持しています。
- 営業利益率は14%
- 株主資本利益率(ROE)は56%
- 投下資本利益率(ROIC)は14%
以下は株主還元の指標(5年平均)です。更なる還元余地を残しています。シャーウィンは2022年時点で44年連続増配中の配当貴族です。配当貴族とはS&P500指数構成銘柄のうち、25年以上配当を増額し、一定の規模および流動性を有する企業を指します。
- 総還元利回りは3.12%
- 配当性向は28.35%
株価に目を転じると、2017年から2022年までの5年間の累積トータルリターンは、S&P500および競合グループを上回りました。競合グループには、蘭アクゾ・ノーベルや米アクサルタ・コーティング・システムズ、独BASF、米ホーム・デポなどが含まれています。
参考:シャーウィン・ウィリアムズ「2023 Investor Presentation」、Morningstar「SHW」
今後の株価推移についてはアナリストの目標株価を確認しましょう。23名のアナリストによるコンセンサス・レーティングは「Strong Buy(強い買い推奨)」です(2023年12月1日から遡って過去3ヵ月間の評価)。
目標株価の平均値(12ヵ月後)は285.18ドルと、11月30日終値と比較して約2%の上値余地を残します。アナリスト予想の最高値は330ドル、最安値は245ドルです。
株価
価格 | |
---|---|
目標株価の平均値(12ヶ月後) | 285.18ドル |
2023年11月30日終値 | 278.80ドル |
アナリスト予想
価格 | |
---|---|
最高値 | 330ドル |
最安値 | 245ドル |
※参照:Nasdaq 「SHW Analyst Research」、Yahoo Finance 「SHW」
4 シャーウィンを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選
ここからはシャーウィンが組み入れられているファンドを紹介します。
- GS米国成長株集中投資ファンド年4回決算コース
- アライアンス・バーンスタインの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)
両ファンドは、2024年1月から始める新しい小額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」で購入できる投資信託です。
※参考:投資信託協会
5-1 GS米国成長株集中投資ファンド年4回決算コース
まずは、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの「GS米国成長株集中投資ファンド年4回決算コース」です。
同ファンドは、長期にわたり優れた利益成長が期待でき、本来の企業価値に対して現在の株価が割安であると判断する、米国を中心とした企業の株式に投資します。
他の組み入れ銘柄としては、画像処理半導体のエヌビディア、製薬大手イーライ・リリー、コンサルティング大手アクセンチュア、会計ソフトのインテュイットなどが組入上位10銘柄に含まれています。
10年間のトータルリターンは、同一カテゴリー(国際株式・北米)を上回りました(2023年10月31日時点)。設定来では+188.52%のパフォーマンスです。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において高い水準になります。
販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、SMBC日興証券などです。
※参考:ウエルスアドバイザー「GS米国成長株集中投資ファンド年4回決算」
5-2 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)
続いては、アライアンス・バーンスタインの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」です。同ファンドは、主として成長の可能性が高いと判断される米国株式に投資します。
シャーウィンに加え、IT大手マイクロソフト、半導体大手エヌビディア、飲料大手モンスター・ビバレッジ、バイオ医薬品バーテックス・ファーマシューティカルズなどが組み入れ上位銘柄として挙げられます。
※参考:アライアンス・バーンスタイン
10年間のトータルリターンは、同一カテゴリー(北米)を上回る運用成績を上げています(2023年10月31日時点)。設定来の運用パフォーマンスは+517.91%です。信託報酬率はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より安い水準になります。
販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、イオン銀行などです。
同ファンドはSBI証券の「SBIプレミアムチョイス」銘柄に選定されており、「投信マイレージサービス」におけるポイント付与率が、月間平均保有額に対して年率0.15%になります。
※参考:ウエルスアドバイザー「AB・米国成長株投信Bコース(H無)」、SBI証券「アライアンス-アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信B Hなし」
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」は、R&Iファンド大賞2023で投資信託10年/北米株式グロース部門にて最優秀ファンド賞を、リフィニティブ・リッパー・ファンド・アワード・ジャパン2023で最優秀ファンド賞を受賞しました。
まとめ
シャーウィンは、過去5年間において代表的な株価指数と競合グループを上回る株価パフォーマンスをあげました。株主還元にも積極的な企業です。環境フットプリントの低減やサステナブルな商品開発などの取り組みも推進しています。
塗料分野のリーディングカンパニーである同社が経済的、環境的に大きなポジティブインパクトをもたらすことに今後も期待したいです。
フォルトゥナ
【業務窓口】
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