【SX銘柄】水・衛生・エネルギー課題解決に取り組むエコラボ、業績や今後は?新NISA組み入れファンドも

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エコラボ(ティッカーシンボル:ECL)は、水処理や衛生、感染予防ソリューションを提供するサステナビリティリーダーです。1世紀にわたるイノベーションを基盤とし、科学に基づく包括的なサービスを提供することで、食品衛生の向上、清潔で安全な環境の維持、水とエネルギーの使用の最適化、そして業務効率の改善に貢献しています。

そこで今回は、エコラボの会社概要や製品の特徴をおさらいした上で、同社のサステナブルな取り組みや業績・株価動向、新NISA成長投資枠対応の組み入れファンドを紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 水、衛生、エネルギー課題解決に取り組むグローバルリーダー
  2. 世界中で求められる水、食料、エネルギー
  3. エコラボのサステナブルな取り組み
  4. エコラボの業績、株価動向
  5. エコラボを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選
    5-1 ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド
    5-2 野村環境リーダーズ戦略ファンド Bコース(為替ヘッジなし)
  6. まとめ

1 水、衛生、エネルギー課題解決に取り組むグローバルリーダー

エコラボは世界170ヵ国以上で水処理や洗浄・消毒サービスなどを提供する世界大手です。食品、病院、ホテルなど40を超える産業向けに、清潔な水や安全な食品、省エネ、衛生環境といった社会課題の解決に資するソリューションを提供しています。

本店所在地 米国ミネソタ州セントポール
創業年 1923年
売上高 142億下億
従業員数 4.7万人
科学者数 1.2千人
事業展開国数 170国超

※参照:エコラボ「ANNUAL REPORT 2022

マクドナルド、スターバックス、コカ・コーラ、マイクロソフト、グラクソ・スミスクライン、ジョンズ・ホプキンス大学など、多様な業界の企業・機関が、エコラボの水処理・節水や衛生サービスを利用しています。

世界的な水不足を背景に注目されている水処理事業に関しては、2011年に水処理サービス大手ナルコ・ホールディングスの買収を足掛かりに、水処理用薬品サービスを強化しました。

また、水処理剤や洗浄・消毒といったリピート性があり長期契約主体の事業が売上高の90%以上を占めており、業績が安定していることもエコラボの特徴として挙げられるでしょう。

社会課題解決企業として高い評価を得る優良企業であり、公衆衛生の取り組みを推進するビル&メリンダ・ゲイツ財団が同社株を保有していることでも知られています。

エコラボが手掛ける事業の市場機会は年々拡大する中、同社の市場シェアは9%であることから、市場が細分化されていると推測できます。1万件以上の特許を活用した製品開発や強固な財務基盤を活かしたM&A(企業の合併・買収)により、更なる業容拡大を期待できるでしょう。

市場規模(億ドル)

エコラボのシェア

※エコラボ「Investor Presentation」を基に筆者作成

2 世界中で求められる水、食料、エネルギー

世界気象機関(WMO)は、地球温暖化や人口増などを背景に、2050年までに世界で50億人が水不足の状態に陥るとの試算を発表しました。世界的に水不足の解消や安全な飲み水の供給が求められている状況です。

※参考:世界気象機関

さらに、エコラボは、2030年までに世界で水、食料、エネルギーの需要が、それぞれ40%、35%、30%増加すると見込んでいます。そのような中、同社は清潔な水、安全な食品、衛生環境の改善といった世界的な課題を解決するためのソリューションを提供するユニークなポジショニングをとっている状況です。

※参考:エコラボ「ECOLAB FACT BOOK

3 エコラボのサステナブルな取り組み

ここからはエコラボのサステナブルな取り組みを見ていきましょう。

エコラボは、パフォーマンスの改善や環境・社会的なインパクトを可視化するeROI(エクスポネンシャルな(飛躍的に高まる)投資収益率)と呼ばれる非常にユニークなアプローチを採っています。eROIフレームワークでは、以下の3項目を定量評価して全体の付加価値を算出します。

  • パフォーマンス向上:清潔で安全かつ健康的な環境の確保など
  • 業務効率化:生産性向上やコスト削減など
  • 持続可能なインパクト:環境への影響を最小限に抑えるサポートなど

eROIのイメージ図

※画像引用:エコラボ「eROI

eROIフレームワークの下、2022年には世界で11億ドル超の付加価値を提供し、以下のような環境インパクトをもたらしました。

  • 2,190億ガロン超の水を節約
  • 45兆BTUのエネルギーを節約
  • 360万トン超の温室効果ガス(GHG)排出を回避
  • 6,000ポンド超の廃棄物の発生抑制

エコラボは2030年までに顧客に対して25%以上のeROIをもたらすことを目指しています。

顧客企業との具体的な取り組み事例としては、例えば、中国国有石油大手の中国石油化工集団(シノペックグループ)傘下の化学メーカーSinopec Chongqing SVW Chemical companyとエコラボの水処理事業を手掛けるナルコの取り組みが挙げられます。

シノペックは、水による配管の腐食性やスケール(水垢の一種)の発生を抑えながら、最大60%の廃水を冷却塔に再利用する取り組みを開始しました。この取り組みにはナルコの3D TRASERテクノロジーが利用されています。

3D TRASERは、水質に合わせて薬剤を自動投入、管理するシステムです。スマートセンサーやリモートモニタリングなどのテクノロジーが組み込まれています。3D TRASERを活用することで、水の使用量を最小限に抑え、貴重な冷却水機器を保護し、運転コストの最適化といった形でeROIをもたらします。

3D TRASER

※画像引用:エコラボ「3D TRASAR Technology for Cooling Water

eROIフレームワークの下、シノペックに対して170万ドルの付加価値を提供すると共に、以下のような環境インパクトをもたらしました。

  • 6.3億ガロン超を節水
  • 290億BTUのエネルギーを節約
  • 750トンのGHG排出を回避
  • 冷却水システムにおける主要管理・性能指標を99%以上遵守(歴史的高水準)

シノペックの取り組みは、エコラボのソリューションを活用し、生産量の増加と環境インパクトの低減を実現した成功事例の一つと言えるでしょう。

参考:エコラボ「2022 Corporate Responsibility Report

4 エコラボの業績、株価動向

ここからはエコラボの業績や株価動向を見ていきます。

過去5年間(2018年と2022年)で見ると、業績は減収減益となりました。

  • 売上高は3%減(147億ドルから142億ドルへ)
  • 希薄化後一株当たり利益(EPS)は22%減(4.89ドルから3.81ドルへ)

収益性(5年平均)に関しては、営業利益率や株主資本利益率(ROE)が一定の水準を確保しており、競合のザイレムと比較するとマチマチの結果であり、大差はありません。

  • 営業利益率は14%
  • 株主資本利益率(ROE)は11%
  • 投下資本利益率(ROIC)は6%

以下は株主還元の指標(5年平均)です。エコラボは31年連続増配中の配当貴族です。配当貴族とはS&P500指数構成銘柄のうち、25年以上配当を増額し、一定の規模および流動性を有する企業を指します。

  • 総還元利回りは1.66%
  • 配当性向は45.44%

以下の図に示すように、配当と自社株買いを通じた株主還元は年々増額されており、安定的な業績や強固な財務基盤を武器に株主還元を積極化しています。

配当と自社株買いによる株主還元額(億ドル)

※図はエコラボ「Investor Presentation」を基に筆者作成

2018年から2022年までの5年間の業績は減収減益となりましたが、中長期的に水処理や衛生、感染予防ソリューションへの需要は拡大する見込みです。会社側は以下のような業績目標を掲げています。

  • 売上高成長率は+5~7%
  • 営業利益率は20%
  • EPS成長率は+12~15%
  • フリーキャッシュフローコンバージョンは純利益の90~100%(財務上の安全性が高い)
  • 純有利子負債/調整後EBITDA(利払前・税引前・減価償却費前利益)倍率を2倍以下に(財務健全性を高める)

※参考:Morningstar「ECL」、エコラボ「Investor Presentation

今後の株価推移についてはアナリストの目標株価を確認しましょう。21名のアナリストによるコンセンサス・レーティングは「Buy(買い推奨)」です(2023年12月1日から遡って過去3ヵ月間の評価)。

目標株価の平均値(12ヵ月後)は195.69ドルと、11月30日終値と比較して約2%の上値余地を残します。アナリスト予想の最高値は215ドル、最安値は180ドルです。

株価

価格
目標株価の平均値(12ヶ月後) 195.69ドル
2023年11月30日終値 191.73ドル

アナリスト予想

価格
最高値 215ドル
最安値 180ドル

※参照:Nasdaq 「ECL Analyst Research」、Yahoo Finance 「ECL

5 エコラボを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選

ここからはエコラボが組み入れられているファンドを紹介します。

  1. ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド
  2. 野村環境リーダーズ戦略ファンド Bコース(為替ヘッジなし)

両ファンドは、2024年1月から始める新しい小額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」で購入できる投資信託です。

※参考:投資信託協会

5-1 ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド

まずは、三菱UFJ国際投信の「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド」が挙げられます。

同ファンドを実質的に運用するベイリー・ギフォード社は、スコットランド・エディンバラで100年以上にわたり長期投資という運用哲学を貫いてきた資産運用会社です。

同ファンドを購入することにより、ベイリー・ギフォード社のポジティブ・チェンジ戦略の下、社会課題の解決に資する企業の株式に投資できます。ポジティブ・チェンジ戦略では、「長期的なリターン獲得」と「持続可能で誰1人取り残さない世界の実現への貢献」という2つの運用目標を掲げます。

他の組み入れ銘柄としては、農機世界最大手の米ディア、半導体製造装置世界大手の蘭ASML、インド最大の住宅ローン低居会社ハウジング・デベロップメント・ファイナンスなどが組入上位10銘柄に含まれています。(※参考:三菱UFJ国際投信

1年間、3年間のトータルリターンはいずれも、モーニングスターの同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を下回る運用成績です(2023年10月31日時点)。2019年6月の設定来では+113.09%のパフォーマンスです。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均並みとなります。

「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド」は、モーニングスター(現ウエルスアドバイザー)の「ファンド オブ ザ イヤー 2020」のESG型部門で優秀ファンド賞を受賞しました。販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券などです。

※参考:ウエルスアドバイザー「ベイリー・ギフォードインパクト投資F

5-2 野村環境リーダーズ戦略ファンド Bコース(為替ヘッジなし)

続いては、「野村環境リーダーズ戦略ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」です。

「野村環境リーダーズ戦略ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」は、「スマートビルディング」、「淡水化」、「スマート農業」といった環境問題の解決を牽引する企業、「環境リーダーズ」に投資します。

分野別の資金配分割合は、水資源の保全が16.2%であるほか、スマート環境ソリューションが29.2%、脱炭素技術が19.9%、持続可能な食/農業が12.7%、循環経済が13.4%、環境配慮型輸送が6.6%となっています(2023年10月31日時点)。

他の組み入れ銘柄としては、北米最大級の廃棄物処理業者ウエイスト・マネジメント、環境・食品・ライフサイエンスなどの分野向け検査・分析機器を製造するアジレント・テクノロジーズが組入上位10銘柄に含まれています。

※参照:野村アセットマネジメント

1年間、3年間のトータルリターンはいずれも、モーニングスターの同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を下回る運用成績です(2023年10月31日時点)。設定来では+39.14%のパフォーマンスです。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より高い水準となります。

※参考:ウエルスアドバイザー「野村環境リーダーズ戦略ファンドBコース

「野村環境リーダーズ戦略ファンドBコース(為替ヘッジなし)」は、モーニングスターの「ファンド オブ ザ イヤー 2021」のESG型部門で優秀ファンド賞も獲得しています。

販売会社は野村證券であり、「野村ではじめる!「ESG投資」応援キャンペーン」の対象銘柄です。同キャンペーンは、2025年12月30日までに対象銘柄を「投信積立」で購入した場合、毎月の購入金額合計50万円までの購入時手数料相当額をキャッシュバックするものです。

まとめ

エコラボは独自のeROIフレームワークの下、社会課題の解決を通じて企業価値の向上に取り組むSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)銘柄です。業績の安定性を武器に株主還元も強化しています。

同社が水やエネルギー、衛生環境といった分野でサステナブルな取り組みを推進し、経済的、環境的に大きなポジティブインパクトをもたらすことに今後も期待したいです。

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
業務窓口
fortuna.rep2@gmail.com