近年新しい地方支援の形として注目を集めているのが「ふるさと納税クラウドファンディング」です。ふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせたサービスで、地方創生や地方産業の振興などに関わるプロジェクトに投資することで返礼品を受け取れて、住民税や所得税が少なくなるサービスです。
今回はふるさと納税クラウドファンディングの内容と利用するメリット、おすすめのクラウドファンディングサービスを紹介します。
目次
- ふるさと納税クラウドファンディングとは
1-1.ふるさと納税とは
1-2.クラウドファンディングとは
1-3.新しい地方活性化政策「ふるさと納税クラウドファンディング」 - ふるさと納税クラウドファンディングのメリット・注意点
2-1.ふるさと納税クラウドファンディングのメリットと魅力
2-2.ふるさと納税クラウドファンディングを利用する際の注意点 - ふるさと納税クラウドファンディングサービス5選
3-1.ふるなびクラウドファンディング(FCF)
3-2.さとふるクラウドファンディング
3-3.ふるさとチョイスガバメントクラウドファンディング
3-4.Readyforふるさと納税
3-5.Makuakeガバメント - 今後のふるさと納税クラウドファンディングサービス
- まとめ
1 ふるさと納税クラウドファンディングとは
最近は、ふるさと納税とクラウドファンディングを組み合わせた「ふるさと納税クラウドファンディングサービス」の注目度が高まっています。それぞれの制度の概要から見ていきましょう。
1-1 ふるさと納税とは
ふるさと納税とは応援したい自治体に一定の金額を寄付することで節税につながる制度のことを指します。例えば生まれ故郷にふるさと納税を使って寄付すれば寄附金額から2,000円を引いた金額が住民税や所得税から控除されます。実質2,000円を負担することになりますが、豪華な返礼品を受け取れるのがポイントです。
返礼品とは自治体がふるさと納税の寄附者に対して送るお礼の品です。返礼品には、地元の特産品や工芸品のほかパソコンのような家電製品、QUOカードなど換金性の高い商品が豊富に取り揃えられています(ただし総務省は、自治体による寄付金集めに関する過当競争抑制のため、還元率の高い商品や自治体の地域に関係ない商品を禁止する動きを見せています)。
つまり、実質2,000円を支払えば返礼品を受け取ることができるため、寄付者にとってお得な制度として人気が高まっているというわけです。実際、ふるさと納税の件数は着実に増加しており、平成28年度の時点で約3,000億円のふるさと納税が実施されています。
1-2 クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、ITを活用した新しい資金調達の方法です。実現したいプロジェクト(製品開発、イベントの開催など)をクラウドファンディングのウェブサイトに登録しておき、プロジェクトに投資をしたいという人から小口の出資を集めるという仕組みです。
クラウドファンディングには様々な類型がありますが、代表的なのが「購入型クラウドファンディング」です。購入型クラウドファンディングとは、クラウドファンディングの出資者に対してプロジェクトオーナーから何らかの返礼品を送るサービスです。返礼品は会社の商品やサービス、イベントへの招待券などになります。
ほかにも利息をつけて出資者に元本を返済する「融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)」、株式を出資者に渡す「株式型クラウドファンディング」など、新しい形のサービスが続々生まれています。
1-3 新しい地方活性化政策「ふるさと納税クラウドファンディング」
ふるさと納税クラウドファンディングは、地方創生や地方経済の振興など公共性の高いサービスを集めた専門のクラウドファンディングサービスの中から、支援したいプロジェクトに寄付という形で投資をすることで、寄付に対する返礼品を受け取ることができ、さらに投資したお金はふるさと納税として住民税や所得税が安くなるサービスです。
2018年の前半から注目され始めたサービスで、色々なふるさと納税クラウドファンディングサービスが立ち上がっています。別名で「ガバメント・クラウドファンディング(GCF)」とも呼ばれています。
2 ふるさと納税クラウドファンディングのメリット・注意点
ふるさと納税クラウドファンディングを利用するメリット・デメリット、および注意点を見ていきましょう。
2-1 ふるさと納税クラウドファンディングのメリットと魅力
クラウドファンディングとして応援したい地方活性化プロジェクトに投資をしながら節税効果を受けられるのがメリットです。ふるさと納税と同様に寄附した金額から2,000円を差し引いた金額が住民税や所得税から差し引かれます。
また公共性の高いプロジェクトが多いのも魅力です。地元を離れて就職した若者が何らかの形で地元に貢献したいときに、ふるさと納税クラウドファンディングを通じて地元を支援することができます。地元だけに限らず応援したい自治体の地方創生プロジェクトに直接投資できる点も、ふるさと納税クラウドファンディングの良さといえます。
2-2 ふるさと納税クラウドファンディングを利用する際の注意点
一方、ふるさと納税クラウドファンディングを利用した際には確定申告が必要です。個人事業主など普段から確定申告している方にはそれほど負担ではありませんが、サラリーマンで所得税や住民税が源泉徴収されていて確定申告が必要ない方にとっては手間になるでしょう。
ワンストップ特例制度
さらに、年間5自体までの寄附の場合はワンストップ特例制度が利用できます。
ワンストップ特例制度とは1年間に5自治体までに対するふるさと納税(ふるさと納税クラウドファンディング)の場合は、確定申告する必要がないという制度です。所得税の還付が無くなり住民税からの控除だけとなりますが、総合的に節税できる金額は確定申告を行う場合でもワンストップ特例制度を使う場合でも違いはありません。6自治体以上に寄附を行った場合は確定申告が必要になります。
なお確定申告の手続き自体はそれほど難しくありません。確定申告をしたことがない方もふるさと納税クラウドファンディングを機にチャレンジするのも良いでしょう。
ふるさと納税クラウドファンディングの節税効果
基本的には上限2,000円で自分の好きな自治体のプロジェクトに対して気軽に投資できますが、節税効果に関して注意点があります。
ふるさと納税では住民税や所得税が少なくなりますが、普段支払っている住民税や所得税以上にプロジェクトに投資(寄附)すると、控除できない金額は結局自腹となるため注意しましょう。つまり、自分が支払っている住民税や所得税以上の節税効果はありません。
次に、ふるさと納税クラウドファンディングで節税効果が発生するのは翌年以降です。ふるさと納税クラウドファンディングによる控除は基本的に1月~12月の1年間が対象で翌年に適用されます。
つまり、所得税の還付や住民税の減額が受けられるのは、翌年に確定申告をした後や翌年に住民税額が減ってからとなります。プロジェクトに投資しすぎると還付を受けたり、税金が減るまで手元に現金がなくなることもあるため注意しましょう。
プロジェクトが目標金額に達しなかった場合の返金について
クラウドファンディングでは募集している金額に到達しなかった場合、プロジェクトが中止になり出資金が返金されるパターンと、目標金額に届かなくても集まったお金の範囲内でプロジェクトを行う2つのパターンがあります。ふるさと納税クラウドファンディングでは後者のパターンが多く、案件によっては返礼品が無い場合もあるため、返礼品目的で寄附する人は注意しましょう。
3 ふるさと納税クラウドファンディングサービス5選
ふるさと納税クラウドファンディングには具体的にどのようなプロジェクトがあるのかを見ていきましょう。
3-1 ふるなびクラウドファンディング(FCF)
ふるさと納税サイトの「ふるなび」が行っているクラウドファンディングサービスです。「地域の想いを支援するふるさと納税」を理念に、2018年11月現在で10件のプロジェクトで出資者を募集しています。
例えば新潟県燕市は「将来を担う子どもたちが『安全で安心な環境』で教育や保育を受けられるようエアコンが未設置の幼稚園、保育園、小学校にエアコンを設置します!」というプロジェクトを実施しており、目標金額12億円対して寄附総額は1億円を突破しています。
また、大阪府岬町が募集した「いきいきパークみさき(土砂採取跡地)に子どもたちが楽しめる大型遊具のある公園を作ろうプロジェクト」は目標金額5,000万円に対し、寄附総額1億1,370万円にのぼり、無事達成となりました。
3-2 さとふるクラウドファンディング
テレビCMでもおなじみの「さとふる」が手掛けているふるさと納税クラウドファンディングサービスです。大手クラウドファンディングサービスの「CAMP FIRE」と共同して2018年11月時点で2件の募集実績があります。
例えば、新潟県妙高市が募集したプロジェクト「日本最北限『火打山のライチョウ』を、絶滅から救いたい!」では、目標金額130万円に対して寄附総額132万9,000円となり、目標達成となりました。
3-3 ふるさとチョイスガバメントクラウドファンディング
ふるさと納税サイトの「ふるさとチョイス」が運営するクラウドファンディングサービスです。
ふるさとチョイスガバメントクラウドファンディングでは、2018年11月時点で約100件のプロジェクトが登録されており、過去には約300件のプロジェクトが成約しました。
また、1つの自治体だけではなく、複数の自治体が連携してプロジェクトを行うための投資を募る、「広域連携クラウドファンディング」というプロジェクトの出資者の募集も行っています。
3-4 Readyforふるさと納税
大手クラウドファンディングサイトの「Readyfor」が運営しているふるさと納税クラウドファンディングサービスです。
2018年11月時点で8件のプロジェクトを募集しており、過去には12件のプロジェクトが成約しています。
3-5 Makuakeガバメント
クラウドファンディングサイト「Makuake」が運営しているふるさと納税クラウドファンディングサイトの「Makuakeガバメント」です。
2018年11月時点で出資者を募集しているプロジェクトはありませんが、過去には5件のプロジェクトが成約しています。
4 今後のふるさと納税クラウドファンディングサービス
2018年の前半から色々なふるさと納税クラウドファンディングが増加し始めて、「ふるなびクラウドファンディング」「さとふるクラウドファンディング」など様々なサービスが立ち上がっています。
ふるさと納税の市場規模は約3,000億円、クラウドファンディングの市場規模は約1,000億円と両方のサービスともに順調に拡大をしており、両者の魅力を合わせたふるさと納税クラウドファンディング市場は今後も成長が続くでしょう。
しかし何千件・何万件と募集されている通常のクラウドファンディングの案件数と比較すれば、ふるさと納税クラウドファンディングは発展途上の段階と言えます。
クラウドファンディングでは連携するサービスが不十分なほど集まる金額が少なくなる傾向があり、プロジェクトの組み立て方やプロモーションの仕方によって集まる金額も変わります。
ふるさと納税クラウドファンディングサービスの抱えている案件は少ないですが、クラウドファンディングに関するノウハウを地方自治体と共有することで、ふるさと納税クラウドファンディングの案件を増加させることが期待されます。
5 まとめ
ふるさと納税クラウドファンディングは、自分が応援している自治体や、興味があるプロジェクトに対して直接投資をしながら節税をしたいという方に向いているサービスです。公共性が高いプロジェクトが多く、手間さえ除けば投資に対するリスクはほとんどありません。
また年間5自治体までならワンストップ特例制度により確定申告する必要もありません。紹介したふるさと納税クラウドファンディングサイトから興味があるプロジェクトを探して、地方創生プロジェクトに参加してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 ふるさと納税チーム
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