証券会社を経て、仮想通貨(暗号資産)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。
目次
- 仮想通貨FXでファンダメンタルズ分析を行う前にチェックすること
- コロナショック後に高まった株価との相関性について
- 経済環境や政策を理解してからビットコイン価格を分析する
- 仮想通貨市場の中で見るべき3つのポイント
4-1. 半減期
4-2. オプションSQ
4-3. 仮想通貨の規制関連ニュース - 金融市場のファンダメンタルズ分析に対応していく
仮想通貨(暗号資産)のマーケットでは取引参加者が個人投資家から機関投資家まで幅広く増えてきました。その動きの中で暗号資産のマーケットが単独で動いていた時代から現在は伝統的なアセットクラスの資産に関係しながら動いている場面が増えています。
仮想通貨FXを行う上では短期売買から数週間から長くても1ヶ月程度の売買を行うことになる投資家が多いかと思いますが、ここでは仮想通貨FXを行う上でトレーダー目線から大事な点を解説したいと思います。
短期売買だからといってニュースから相場を考える必要はないというわけではありませんので、そこを留意して読み進めてください。
①仮想通貨FXでファンダメンタルズ分析を行う前にチェックすること
仮想通貨FXのファンダメンタルズ分析を行う前に、まずは何を見るべきかを整理しましょう。ファンダメンタルズ分析と一言で言っても、ニュース・要人関連の発言・経済指標の公表等様々な種類があります。加えて、仮想通貨特有のチェック項目もあり、これら全てを網羅することは事実上不可能です。
伝統的なアセットクラスで必ず見るべき指標や、仮想通貨だからこそチェックすべき項目について、何を・どのようにチェックすべきか大まかに考える方法をご紹介したいと思います。
ビットコインは以前から「リスク回避資産かどうか?」という点が議論されていました。ビットコインの発行可能数量には2,100万枚の上限があるため、需要が高まると価格は自然と上昇するという考え方に基づいています。
伝統的な資産の中では「金(GOLD)」が同様の性質を備えています。金も50mプール3杯分が供給量とされ、それ以上採掘できないとも言われているため、ビットコインと同様に有限と言えます。
しかし、コロナショック以降にビットコインはNYダウとの相関関係が急激に高まっており、株価指数の動きに連動するようになってきています。
ファンダメンタルズ分析を行う上で「どの投資対象と相関関係が強いのか?」というポイントを把握することは重要です。
つまり、「今は株との連動を見る必要がある」と理解できるため、次に行うべきは米株を含む株価の方向性に影響する材料を探すことになります。こうして、チェックすべきニュースや経済指標が絞られてきます。
②コロナショック後に高まった株価との相関性について
コロナショック以降株価との相関が高まったから、今後のビットコインの動向を予測する上で株を見る必要があるとして、どのような点をチェックすべきか具体例をあげて解説したいと思います。
最初にどの程度株価とビットコインの価格が連動しているのか視覚的に理解して頂くためにチャートをご覧ください。
青線(ビットコイン)とオレンジ線(NYダウ)は、コロナショック以降急激に同じような動きとなっていることが見て取れます。
③経済環境や政策を理解してからビットコイン価格を分析する
ビットコインの価格動向を探るためには、株価の上下を予想する必要が出てきます。そのためコロナショック後に行っている経済対策や景気刺激策を自身で理解することが大切です。
例えばアメリカが行っている緊急利下げや社債の大規模買い取り、そして日銀のETF買い入れ目標額の上限引き上げ、ECBの7,500億ユーロの量的緩和策等、世界各国で新型コロナの影響による景気後退に歯止めをかけようしています。これら各国の対応策が影響して、「コロナ・バブル」と言われるほど反転上昇する動きとなっています。
そのため今仮想通貨FXでビットコインを取引するならこうした緩和策を考慮しないといけません。つまり、現在の環境では「緩和策の効果の持続性はどの程度か?」という点に注視しておくべきです。
そしてチェックするべき最も重要な情報は、各国中央銀行の政策運営や金利動向、追加緩和を行うか否か等となります。
その上で雇用統計や国力に影響する対外交問題での米トランプ大統領の動向の分析などに派生していくようになります。
例えば、「金融緩和策はある程度織り込まれており、世界的に新型コロナ感染拡大の第二派が警戒されていることもあり、株価は上値が重くなっている」ことから「ビットコインの上値もそこまで伸びないのではないか」という予想を立てることもできます(*これは現在のコロナ環境下における予想方法の一例に過ぎず、これが正しいわけではありません)。
現在の経済環境、その方向性と持続性、そして顕在化の可能性があるリスクシナリオという観点から、仮想通貨FXのためにファンダメンタルズ分析を行う上で何を見るべきか判断していくこと。これが一番お伝えしたいポイントです。
④仮想通貨市場の中で見るべき3つのポイント
仮想通貨FXを行う上で、仮想通貨マーケット独自で見るべきポイントがあります。仮想通貨自体には通常の金融政策等がないことから経済イベントというのはありませんが、筆者が必ず見ておくべき点と思っている点を3つご紹介します。2つ目にご紹介するものは少し難しく感じる方もいるかもしれませんが、頭の片隅に入れておいてください。
半減期
半減期は仮想通貨FXをされている皆さんならよく聞くワードでしょう。半減期はビットコインのマイニング報酬が半減するタイミングを示しています。プログラム上およそ4年に1度迎えるビットコインの大イベントであり、直近の半減期は2020年5月12日に迎えました。
基本的に、多くのトレーダーが「半減期によって需給バランスが壊れる(タイトになる)ため、価格が上昇しやすい」と考えるため、いわゆる「自己実現的予言」となる場合があります。そのため仮想通貨FXにおいて押さえておく必要があります。例えば、半減期が訪れる前にビットコインは上昇しやすい傾向があります。下図は今年起きたビットコインの半減期の前後チャートです。
ビットコインは日々のマイニング報酬が生成されることで、市場に出回る枚数が増加しています。半減期によって、供給量の増加ペースが半分になると、供給サイドが減少します。これが価格が上昇しやすいと考えられる理屈であり、半減期は仮想通貨FXにダイレクトに影響するイベントです。
オプションSQ
これは難しい内容なので簡単に説明しますが、SQ(特別清算指数)というのはオプション取引を最終の決済期日で決済する清算価格(指数)を指しています。オプション取引のSQが影響して、スポット市場の取引量も増加することがあるので、値動きを考える上で重要です。
特に3、6、9、12月のオプションと先物の清算が重なるSQは「メジャーSQ」と呼ばれており、この期日を権利行使日としてポジションを保有している投資家が多くなっています。
権利行使日に合わせて色々な投資家がトレーディングを行っており、値動きが生じやすくなります。SQについては別途勉強してもらうといいでしょう。
仮想通貨の規制関連ニュース
これは仮想通貨FXだけでなく、仮想通貨マーケット全体の動向を予想する上で常にチェックしておくポイントです。例えば、アメリカでビットコインETF(上場投資信託)をSECが承認するか否かというトピックや、中国政府による仮想通貨ビジネスに対する動向などです。日本では、仮想通貨の利益を雑所得としていますが、今後もしも外国為替FXと同様の申告分離課税に変更されるようなことがあれば、相場にも大きく影響するでしょう。
先進国は仮想通貨をかなり厳しく規制しようとしており、日本でも税金面の問題は市場参加者が増加しないる理由の一つとして考えられています。藤巻元参議院議員が税金面について提言書を出しましたが叶わず、依然として雑所得のまま、利益が出るほど累進課税で税金を支払う仕組みとなっています。
ETFについては、今後仮にアメリカで承認となったら、機関投資家のフローが仮想通貨市場に流入する可能性が高まります。仮想通貨市場にポジティブな要因としてチェックする必要があります。
仮想通貨は成熟していない市場なので、仮想通貨FXを行う上で規制関連は常にアンテナを立てておくべきトピックです。
⑤仮想通貨のファンダメンタルズ分析は金融市場全体をチェックすることに変化している
仮想通貨のファンダメンタルズ分析において、チェックするべき対象視野は広がってきています。これまではハードフォークや半減期、取引参加者の増減等が主な指標でした。しかし、現在では伝統的な金融市場との関連性が強くなっており、マクロな視点を持つ必要が出てきました。
これまでは仮想通貨市場内の分析で利益を上げることができた手法も機能しなくなる可能性があります。市場参加者が変わっていく過程では、淘汰される投資家も出てくるかもしれません。一方で雰囲気が変化することで利益を出しやすくなる投資家も出てきます。
ファンダメンタルズ分析のポイントをどこに持っていくかが、勝敗を分ける鍵となるでしょう。マーケットは刻々と変化するので、その変化に対応出来る者が生き延びていけるのが投資の世界です。
仮想通貨FXに取り組むのであれば、テクニカル分析だけではなく、ファンダメンタルズ分析もやってみましょう。ファンダメンタルズは奥が深く、好きな人はどんどん好きになっていくものです。
ファンダメンタルズ分析は一朝一夕に培えるではないので、簡単な内容から行っていくといいでしょう。常に向上心を持って考えることで分析手法を培えるので、挑戦してみてください。
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中島 翔
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