暗号資産取引とFX取引における違いや認識しておくべきこととは?

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今回は、暗号資産取引とFX取引の違いについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 仮想通貨とFX取引で異なるポイント
    1-1.法定通貨と仮想通貨
    1-2.取引する場所の違い
    1-3.取引時間の違い
    1-4.スプレッドの違い
    1-5.レバレッジ
    1-6.スワップ金利と建玉管理料
  2. トレードにおける違い
    2-1.ファンダメンタルズ
    2-2.仮想通貨とテクニカル分析
  3. その他の違い
    3-1.税金の違い
    3-2.資産保全
  4. まとめ

FX(外国為替証拠金取引)の経験がある方の中には、仮想通貨に興味を持ちながらまだ取引経験がないという方も多いのではないでしょうか?トレーディングという点で仮想通貨も為替も似た部分が多い一方で、その性質はだいぶ異なります。ここでは仮想通貨と為替取引における違いと、取引前に認識しておくべきポイントについて解説します。

①仮想通貨とFX取引で異なるポイント

まずは、FX取引と仮想通貨取引の概要を整理します。

1-1. 法定通貨と仮想通貨

FX取引は、日本円とアメリカドルなど法定通貨同士の取引する形態です。通貨同士の組み合わせを指して「通貨ペア」と呼びます。FX取引は、基軸通貨となるアメリカドルが中心になっています。

例えば日本円をユーロに両替する際、円からユーロに直接交換されるわけではありません。最初に日本円から米ドルに変え、次に米ドルからユーロに転換することにより、両替されます(クロス通貨)。米ドルがすべてのFX取引の中心にある為、アメリカドルの重要性が必然的に高くなります。

FX取引は、国のライセンスを取得したFX会社が顧客の注文を受け、顧客同士の注文で相対取引をしたり、リクイディテイプロバイダーと呼ばれる金融機関と通貨の売買を行います。

仮想通貨の場合は、取引所内での顧客同士の相対取引が基本となっています。そのため、仮想通貨取引所毎の価格の差異は、FX取引よりも大きくなる傾向があります。

また法定通貨は流通量も多く、商業決済にも利用されるため、実際の需要(実需)も大きいもの。一方の仮想通貨は、まだまだ実際の決済通貨としての利用は少ない状況です。

1-2. 取引する場所の違い

取引(トレーディング)をする際、FXでは最初にFX会社に口座を開設し、入金することでトレードを開始できます。仮想通貨の場合も、取引所で口座を開設して入金した後に仮想通貨を購入するため、その点に関しは大きな違いはないでしょう。

また、仮想通貨取引には現物購入とレバレッジ取引があります。FX会社でもレバレッジ1倍で両替を行えますし、米ドル普通預金口座などがあれば両替先の通貨で受け取ることができるので、現物購入と同じ効果があります。

1-3. 取引時間の違い

FX取引はインターバンク市場が空いている平日、月曜日の早朝から〜金曜日の夕方(日本時間早朝)までとなっている一方で、仮想通貨取引所は24時間365日取引が可能という特徴があります。

1-4. スプレッドの違い

国内FX会社の場合、スプレッドが最も低いFX会社でドル円:0.1銭となっています。1ドル108.77円と想定すると、約0.0092%のスプレッドが手数料として必要となります。一方で仮想通貨のスプレッドはビットコインの場合で0.08%~0.38%となっています。

会社によってスプレッドにも差があるため一概には言えませんが、国内の FX 会社と仮想通貨取引所を比べると、仮想通貨のスプレッドの方が割高となりそうです。

1-5. レバレッジ

資金効率を見ると、FXの方が圧倒的に高いレバレッジをかけて取引できます。

国内のFX会社では最大25倍のレバレッジが可能であり、国外のFX会社では最大1,000倍のレバレッジを掛けて取引できる所もあります。一方、仮想通貨のレバレッジは国内取引所で2~4倍、海外でも100倍強が最大となっています。

10万円を原資にトレードする場合、FXは国内会社で最大250万円分、海外では1,000万円分。国内の仮想通貨取引所では最大40万円分まで取引できることになります。なお、国内の仮想通貨取引のレバレッジ規制により、最大2倍に制限する形に各社動いています。また、海外の仮想通貨取引所も、日本居住者の新規口座開設を認めない所が増えてきています。

1-6. スワップ金利と建玉管理料

FX取引において、日をまたいだ取引をする場合、スワップ金利が発生します。通貨ペアによって大きく異なりますが、国内FXの場合でクロス円で買いポジションを持っている時は、プラスのスワップ金利が発生することが多いです。ユーロ円の場合、ユーロの政策金利がマイナスになっているため逆となります。

一方、仮想通貨取引所は、建玉に対して1日当たり0.04%~0.3%の建玉管理料が必要です。日をまたぐことを前提に、スワップ金利と建玉管理料を比較すると、FXの方がメリットが大きい場合が多そうです。

②トレードにおける違い

それではFX取引や仮想通貨取引をトレードする上で、認識しておくべきポイントを解説いたします。

2-1. ファンダメンタルズ

FXトレードでは、各国中央銀行の判断や重要な国の首脳動向など、多岐にわたるファンダメンタルズが大きな影響を及ぼします。一方で、仮想通貨に関してのファンダメンタルズとして最も大きいものは、各国政府による規制関係の情報です。また、イーロン・マスクのビットコイン関連の発言に代表される要人や大企業の動向などが仮想通貨のファンダメンタルズと言えるでしょう。

仮想通貨のファンダメンタル分析に関しては、FXほどは相場を動かす要素は少ないものの情報が入手しづらいといったデメリットもあります。

2-2. 仮想通貨とテクニカル分析

テクニカル分析において、FX取引と仮想通貨取引で何か違いがあるのでしょうか。基本的には、FXと同じインジケーターを用いることができますし、売買サインに関しても同じ解釈をすることができます。

ただし仮想通貨トレードで最も気を付けなければいけない点は、ボラティリティが非常に大きいことです。特にアルトコインに関しては、チャートが暴れることがよくあります。

FXの場合は最大でも1日に3%程度しか動かないのに対して、仮想通貨は1日で10%以上変動することも多々あります。 仮想通貨市場では、大口投資家が少し取引するだけでも大きく値が動く場面が見受けられます。そのため、仮想通貨取引を始める場合は、ビットコインやイーサリアムなど、時価総額で上位の銘柄で始めることをお勧めします。

③その他の違い

最後に、税金など直接トレードとは関係ない部分の違いについて解説します。

3-1. 税金の違い

FX取引に関係する税金について、国内取引所の取引の場合は所得税と住民税などを合わせて20.315%になります。また、損失が出た場合に確定申告をすれば、翌年から3年間の繰越控除も可能であり、他の投資の利益と損益通算もできます。なお、国外のFX会社の場合は雑所得の累進課税制度が適用されます。

一方で仮想通貨レバレッジ取引、もしくは仮想通貨の現物取引の税金について、全て雑所得、総合課税の対象となり、累進課税制度が適用されます。海外FXと同じく、累進課税制度で最大で約55.315%の課税がされます。

また、FXのような繰越控除や損益通算などは出来ないため、税制面ではFXの国内取引が最も有利です。

3-2. 資産保全

資産保全に関してはどのような違いがあるのでしょうか。

FX取引はFX会社がその資産を分別管理している場合が多く、仮想通貨取引に関しても資産保全をされている場合が多いため基本的には大きな違いはないと考えて良さそうです。ただし仮想通貨はサイバー攻撃により流出する事例も多く報告されていることは、理解しておいてください。

④まとめ

この記事でFX取引と仮想通貨取引の違いの重要な点をご理解頂けたと思います。取引手数料などは仮想通貨の方が割高ですが、トレードのやり方そのものに大きな違いはありません。ただし、ボラティリティの大きさは異なるため仮想通貨トレードとFXのトレードの間隔は大きく異なると考えておいて頂ければ幸いです。また、特徴を捉えてリスク管理を中心に工夫が必要なことを頭に入れておいてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12