環境省は3月30日、「ESG地域金融実践ガイド2.0」を発表した。同省は2019年、環境・社会にインパクトがあり、地域の持続可能性の向上や地域循環共生圏の創出に資するESG(環境・社会・企業統治)金融促進を図るため「地域におけるESG金融促進事業」を実施し、20年に地域金融機関向けの手引きとしてESG地域金融実践ガイドを発表。同年度中に11の金融機関の支援を実施し、支援結果から改訂版をとりまとめた。ESG地域金融実践におけるステークホルダーとの連携手法や、取り組みのポイントなどを、支援事例などを踏まえて解説している。
世界的には直接金融が中心となりESG金融を推進させているが、日本では間接金融による資金調達の割合が大きいことから、「地域金融機関は地域の核として、地域の持続可能性の向上に資するESG地域金融の実践が期待される」(同省)という観点から、地域金融機関がESG地域金融に取り組むための手引きとして同ガイドが策定された。
改訂の背景として、①ガイドの内容は実務の発展に応じて、見直し、拡充を行うことを前提としている②20年度は新型コロナウィルスの拡大もあり、地域経済も大きな影響を受けた。また、10月には菅首相が2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言、今後10年が重要になるなど、新たに時間軸を意識し、取組を加速させる必要性が高まったことがある。また、同省は20年に「インパクト・ファイナンスの基本的考え方」を公表しており、ESG金融に関する国内外の知見が更新されたことも挙げられる。
ガイド改訂のポイントは、経営陣のためのサマリーの拡充、実務者向けサマリーの新設、実践ポイントの説明の拡充の3点。特に、経営課題としてESG地域金融を認識し、地域経済エコシステムの構築に向けた取組を実施する上でのポイントを説明している。また、ESG地域金融を実践する上での基本的な考え方、想定される「3つのアプローチ」についてページを割いている。
3つのアプローチとは①地域を俯瞰し、地域の長期目標や成長戦略等の実現に向けた地域資源の活用を検討・実践する②地域経済や自らのポートフォリオにおいて重要となる産業を対象に、その持続可能性の向上に向けた対応策の検討および実践を支援する③個別企業・事業を対象にその価値向上に向けた事業性評価、それに基づく融資・本業支援を実践するアプローチ。さらに、この3つに共通する重要事項として①地域資源の持続可能な活用に向けた価値の理解②バリューチェーンと対象産業/企業の位置づけ把握③地域の環境・社会・経済へのポジティブインパクトの創出④環境変化の把握と影響の理解――の4点を挙げ、アプローチ別の実践ポイントについて、事例を交え解説している。
20年度の同事業の支援先は、栃木銀行、京都信用金庫、愛媛銀行、北海道銀行、岩手銀行、東和銀行、きらぼし銀行、山梨中央銀行、北陸銀行、浜松いわた信用金庫、奈良中央信用金庫の11行。19年度は大阪信用金庫、広島銀行、東和銀行、栃木銀行、西日本シティ銀行、みなと銀行、鹿児島銀行、滋賀銀行、福岡銀行の9行だった。
【参照リリース】「ESG地域金融実践ガイド2.0」の公表について
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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