【元トレーダーが解説】投資における暗号資産と外国為替FXの違いとは?

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証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. 投資における暗号資産と外国為替FXの違いとは?
    1-1. ボラティリティの違い
    1-2. 流動性の違い
    1-3. 最大レバレッジの違い
  2. 暗号資産のレバレッジ取引では特にリスク管理を意識することが重要

日本でも2017年のビットコインバブルを皮切りにユーザーが急増し、暗号資産の認知が拡大して2年以上が経過しました。現在、暗号資産市場ではレバレッジ取引が国内市場の取引量の9割を占めており、改めて日本ではレバレッジ取引のニーズが高いことを示しています。これまで外国為替FXをメインとしてきたトレーダーが暗号資産FXに挑戦するケースも増えていました。

ここでは、暗号資産のレバレッジ取引と法定通貨の外国為替FXで取引を行う上で、覚えておくべきことについてまとめていきたいと思います。

①投資における暗号資産と外国為替FXの違いとは?

1-1. ボラティリティの違い

両者で大きく異なるポイントの一つ目はボラティリティです。ボラティリティとは原資産の価格変動の幅、つまり価格変動率のことです。「ボラティリティが大きい」と言えば、「価値が大きく変動している」ということになります。

それでは実際に、暗号資産と法定通貨とで、どの程度ボラティリティが違うのかを見てみましょう。下図はビットコイン円、ドル円、米国株のS&P株価指数です。

FX1このチャートは2019年1月を基準として、どのくらい変動しているのかをパーセンテージでチャート化したものですが、ビットコイン円のボラティリティの大きさが理解頂けると思います。

ビットコインは一年弱の間に2倍以上になり、すぐに2分の1程度まで下落しています。あくまで投機に近い値動きであることはしっかり理解した上で取引しないと、すぐに資産を全て失うことにもなりかねません。日本では「仮想通貨」ではなく「暗号資産」と呼称が変更され始めていますが、いまだに仮想通貨という言葉のマジックで、法定通貨と混同してしまう人もいるようです。しかし、暗号資産は通貨とは全く違う投資商品であることを意識しておきましょう。

ちなみにボラティリティはパーセンテージで表されています。暗号資産でもオプション等の金融派生商品が多様化していることから、ボラティリティがチェックできるようになってきています。下図は暗号資産のオプション取引を提供しているderibit(オランダ)という業者が配信している「ビットコインのヒストリカル・ボラティリティ(HV)」です。こちら でどのくらいのボラティリティとなっているのかチェックできますので、興味ある方はご覧ください。

FX2

1-2. 流動性の違い

次にご説明するのは「流動性が全く違うこと」です。流動性というのは、機関投資家にとって特に重要な指標です。機関投資家は流動性によって投資割合を判断することもあります。そして流動性は、先ほどのボラティリティと密接に関連性があります。

まず、流動性というのは「取引量」を指し、言い換えれば「換金のしやすさ」と考えることができます。アナリストはよく「流動性が高い」とか「流動性が低い」という使い方をします。「流動性が高い」とは注文がとても多く、買い手、売り手が共に大勢いる状況で、取引が成立(換金)しやすいことを意味します。一方で「流動性が低い」場合は、売り手や買い手が少なく、ちょっとした売り注文で価格が大きく下落するような状況を意味します。

それでは、暗号資産と法定通貨とで、流動性がどれほど違うのかご案内します。下図は2016年のデータで、一日の外国為替の取引量をまとめたものです。

FX3

ドル円を見ると1日の取引量は9,008億ドル(99兆円超)にも上ります。一方のビットコインの2020年9月1日時点の出来高は、267億5,414万ドル(2兆8,382億円)となっています。

BTC VOL

つまり、ビットコインの流動性はドル円と比較して30分の1しかありません。このため一つの注文が価格の変動に与える影響の度合いは暗号資産の方がかなり大きいことが理解できるでしょう。

1-3. 最大レバレッジの違い

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次にレバレッジの違いについてご説明したいと思います。現在、改正府令により外国為替証拠金取引(FX)では最大レバレッジは25倍に制限されています。一方、日本の暗号資産市場は2020年春以降、最大レバレッジは4倍に制限されています。この制限によって日本の暗号資産ユーザーが海外の取引所に逃避するきっかけとなってしまいました。

海外の暗号資産取引所は最大レバレッジ100倍程度の設定も可能であり、中には500倍を提供しているところもあります。つまり、軍資金10万円で5,000万円分の取引が可能ということです。しかし、元金は10万円のため、5,000万円分のリスクを取るとき、反対方向に1%変動しただけで50万円の含み損となります。実際には、0.3%動いただけでロスカットが発動して、証拠金を失うことになります。

逆に予想通りに動くと元金があっというまに2倍、3倍になります。上手くいけば資産を膨らませることができるため、暗号資産のレバレッジ取引は日本で流行しました。しかし、レバレッジ取引が4倍に制限されて以降、日本でレバレッジ取引を利用していた暗号資産ユーザーは、海外のハイレバレッジ可能な取引所を利用する動きとなっています。

②暗号資産のレバレッジ取引では特にリスク管理を意識することが重要

最後にご紹介するのは暗号資産と外国為替のFXで異なる、リスク管理の方法です。ここまで解説したボラティリティと流動性の違いが影響しています。

値動きが大きい商品にレバレッジをかけることで、大幅なリターン(及び損失)を生むことが可能です。しかし、毎回レバレッジを最大に効かせている人で、勝ち続けることができる投資家ほとんどいません。

暗号資産の値動きが仮に外国為替のFXの5倍程度とした場合、外国為替のFXの5分1のレバレッジにすることで、経済的損益は同等になります。反対に同等のレバレッジをかけると、レバレッジ取引の損益の5倍の動き方をすることになります。外国為替のFXを取引している投資家であれば、その大きさは想像しやすいと思います。

値動きが大きいからと、暗号資産取引を行いたいと考える人も多いですが、このように高いリスクが伴うことを肝に命じておいてください。「リスクとリターンは表裏一体」です。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12