今回は、CME先物市場について、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- CME(シカゴマーカンタイル取引所)とは
- 先物取引とは何なのか
- 機関投資家が先物取引を利用する意味
3-1.流動性が高い
3-2.売りからでもエントリーが可能
3-3.レバレッジを利用して大きな取引が可能 - CME先物ポジション動向のチェックは重要
- 暗号資産もCMEで取引がされていく動きに
アメリカではCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)と呼ばれる取引所が存在します。CMEは伝統的なアセットクラスを売買している機関投資家や金融機関にはなくてはならない取引所として地位を築いており、世界の機関投資家が取引を行っています。
暗号資産市場でもCMEにはビットコインの先物商品が登場しました。そして2021年2月にはイーサリアムの先物商品がCMEでも上場しており、話題を呼んでいます。取引高も暗号資産市場に機関投資家が参入する中で、CMEのビットコイン先物の取引高も増加する傾向が続いています。
それでは、CMEとは一体どのような取引所なのか、そして機関投資家はどのような用途でCMEを利用しているのかを解説したいと思います。
①CME(シカゴマーカンタイル取引所)とは
最初にCMEがどのような取引所なのか説明します。CMEグループと呼ばれる中の取引所の一社として運営されています。
CMEグループを構成されている取引所は4つあります。CME、CBOT(シカゴ商品取引所)、NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)、COMEX(ニューヨーク商品取引所)の4つがCMEグループを構成している取引所になっています。
CMEの歴史は1848年に世界で初めての先物取引所として創設されました。1898年には「シカゴ・バター・卵取引所」として「シカゴ商品取引所」から独立し、1919年に現名称の「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」に改組されています。
この取引所は、シカゴにある商品先物取引所、金融先物取引所であり、原油や農産物、株価指数や、金利等様々な先物商品を取り扱っている伝統的な取引所です。
CMEはオプション取引も提供しており、世界の機関投資家が利用する機関投資家専用の取引所として地位を築いています。
②先物取引とは何なのか
続いてCMEが提供している先物取引とは何か説明します。先物取引とは名前の通り、「将来の価格を現時点で決められた価格で売り買いする」というものです。
先物取引の特徴としては、
- 期日があること
- 証拠金が必要となること
- 差金決済取引であること
等があります。
期日が決まっており、例として「◯月◯日期日のビットコインの価格を売買している」というような商品になっています。そのため、「期日が到来すると、自動決済となる」というのが先物取引の1つ目の特徴です。
また先物取引は証拠金取引となるため、レバレッジを利用することが可能となっています。先物取引は危険だという認識が個人投資家の中でありますが、これはレバレッジという機能を使い過ぎる投資家が多いことからこのような認識になっていると理解してください。
また先物取引は差金決済取引となっています。差金決済取引とは現時点で売り買いで成立した将来の価格と実際に期日が到来した時点での価格の差額のみを受け渡しする決済方法です。FXも差金決済取引となっているので、FXをイメージしてもらうといいでしょう。
これが先物取引の概要です。
③機関投資家が先物取引を利用する意味
続いて機関投資家がCME等の先物取引を利用する手法はどのようなものがあるか解説します。機関投資家がCME等を利用する理由として様々な理由があります。
1. 流動性が高い
最初の理由としては、CMEが世界の先物市場でトップクラスの流動性を誇っていることです。
機関投資家が保有しているポジション量が大きいことから、機関投資家が現物をその国の市場で売り買いを行うと、その一人の投資家のフローによって相場を大きく動かしてしまう危険性があります。
機関投資家としては流動性が不足している市場でポジションを決済したり、エントリーしたりすると予想もしない価格で売買が成立する可能性があるため、取引を行う上で流動性を重要視しています。
2. 売りからでもエントリーが可能
2つ目の理由としては「売り(ショート)からポジションを構築できる」というメリットがあります。
先物取引はあくまで現物を決済しているわけではなく、(※現物先物というものもあり、その場合は期日で現物を決済している場合もあります。)差金決済で行っていることから、証拠金を入れておくことで、その範囲内でロングからもショートからもエントリーが可能なマーケットです。
例として日本の株の銘柄を保有しているアメリカの投資家がいるとした場合、この日本株全体におけるリスクヘッジ(価格下落リスクを回避する取引)を行いたいとします。
個別銘柄で空売りを行ったりした場合、先ほど説明した流動性リスクによる、悪いプライスでヘッジすることになったりするため、代替ヘッジとして日経平均先物をショートして日本株全体の下落リスクをヘッジする取引を行ったりします。
当然銘柄全ての価格の下落に綺麗にヘッジができるわけではありませんが、機関投資家は指数(インデックス)と呼ばれるものと保有している銘柄の相関係数を計算しながら日経平均先物でショートすることでどの程度リスクヘッジできるのか計算しながら行っています。
このようにリスクヘッジとして大口取引が可能な商品というのは機関投資家にとっては必須の商品となっています。
3. レバレッジを利用して大きな取引が可能
レバレッジ取引は機関投資家だけではなく個人投資家でも利用する投資家は多いものですが、少ない証拠金で大きいポジションを保有できる機能になるため、機関投資家としては利便性が高い機能として利用されています。
保有している現物の保有量をヘッジする場合としてもレバレッジを10倍でヘッジしたいとなった場合、証拠金として入金するのは現物の保有量の10分の1でヘッジが可能となります。
また大きく勝負する場合においても少ない元金でポジションを保有できるということは資金の効率的に利用できるという点でメリットとなっています。
大口投資家がレバレッジを利用してポジションを保有する場合は実際の指数にも影響するため先物ポジションをチェックするということはとても大切なことです。
④CME先物ポジション動向のチェックは重要
CME先物ポジションは投資家サイドから見ても大口投資家がどのようなポジションを保有しているか把握する上ではとても重要です。
相場が上昇トレンドにおいて、CME先物ポジションが同じ方向に積み上がっている場合、先物取引はどこかで決済しないといけないため、何かしらのきっかけで逆回転し始める可能性があります。
そのためCME先物ポジションが積み上がっているかどうかはトレンドが継続するかどうか見極めたり、逆方向に動くエネルギーにもなるポジションなので相場の加熱感を探る意味ではとても大事な数字として投資家から認識されています。
⑤暗号資産もCMEで取引がされていく動きに
現在CMEではビットコイン先物が上場されており、先日イーサリアムも上場する動きとなりました。
この動きは機関投資家のニーズの高まりが背景にあり、それだけ暗号資産市場に機関投資家が参入している動きが続いているという現れでもあるでしょう。
今後個人投資家としてはCMEのビットコイン先物ポジションであったり、イーサリアム先物ポジションの動向をチェックして、大口投資家がどのようなポジションを取っているのか把握することで、ビットコイントレードの大きな取引判断の材料になると思います。
是非CMEの数字に今から慣れていき、どのように現物価格に影響するのか、現物価格と先物ポジションの数字の変化に相関があるのか等チェックしてみるといいでしょう。
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中島 翔
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