最近話題のビットコインETFとは?【仮想通貨取引所の元トレーダーが解説】

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今回は、ビットコインETFについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. ビットコインETFとは?
    1-1. 証券市場で取引されるビットコインETF
    1-2. ETFとは何か?
    1-3. 投資家にとってのETFのメリット
    1-4. ビットコインETFが承認されている国は4か国
  2. ビットコインETFがビットコイン相場に与える影響
    2-1. ビットコイン市場への影響
    2-2. 現物ETFはまだ承認されていない
  3. まとめ

2021年10月19日にアメリカで初となるプロシェアーズ(ProShares)社のビットコインETF(BITO)がニューヨーク証券取引所(NYSE)のArcaに上場しました。初日の出来高は1,000億円を超え、数日で先物建玉制限を突破しそうになるなど、大いに話題を集めています。ビットコイン価格も一時66,976ドルまで上昇して史上最高値を更新し、年初来で約220%の上昇をしています。

そこで今回は、ビットコインETFとは何か?このETFがビットコイン市場にどのような影響を与えるのかという点について解説します。

1. ビットコインETFとは?

まずはビットコインETFとはどのような金融商品であるのかという点について解説します。

1-1. ビットコインETFとは?

ビットコインETFとは、ビットコインが含まれた上場投資信託の事で、証券市場において取引される金融商品の事です。仮想通貨取引所よりも資産の安全性や透明性が求められる証券取引所で取扱われるため、投資家にとって投資しやすい環境で取引できる商品になります。

一方で証券取引所への上場はSEC(証券取引委員会)の審査が厳しく、ビットコインETFは市場の監視体制が未成熟であることが問題視され、ビットコイン ETF の申請は何度も却下されてきました。約8年間に様々な資産運用会社がチャレンジしてきたビットコインETFですが、ここへきて漸く上場が実現したという点で10月19日は歴史的な日ともなりました。

次にそもそもETFとは何かという点について、少し掘り下げて解説します。

1-2. ETFとは何か?

ETFとは、「Exchange Traded Fund」の略で日本語にすると「上場投資信託」となります。

「投資信託」と非常に呼称が似ていますが2つの違いは、上場投資信託が証券取引所で取引が行われるのに対し、投資信託は証券会社で“販売”される金融商品ということです。具体的には、上場投資信託は株式と同じようにリアルタイムで価格が変動し、投資信託は1日1回変動する基準価額で購入する点が異なります。

日本国内でよく知られているETFは、日経平均と連動するETFなどでしょう。ビットコインETFも基本的にはこれと同じものですが、今回、上場したBITOは、正確にはETN(Exchange Traded Note/指数連動証券)と呼ばれるものです。

ETFとETNの違いですが、ETFは紐づけされた現物の価格と連動し、ETNは先物取引所の価格と連動します。さらに、ETFの場合は証券の裏付け資産があり、ETNの場合は裏付け資産を必要としないという特徴があります。

1-3. 投資家にとってのETFのメリット

ETFの取引経験などがない仮想通貨トレーダーの方の視点から見ると、ETFを買うことのメリットに関してピンとこない点も多いと思いますが、投資家にとってETFを買うことはどのようなメリットがあるのでしょうか?

ETFを取引する投資家のメリットとしては以下のような点が挙げられます。

  • 仮想通貨の取引をする際に口座開設や資金移動の必要がない。
  • 仮想通貨には保管リスクが伴うが、ETF取引にはそのリスクがない。
  • 仮想通貨取引所よりも証券取引所の方が流動性が高く売買が成立しやすい。
  • 仮想通貨取引所の取引よりも証券取引所の取引の方が税制面で優遇されてる場合がある。

上記のような理由から、ETFの上場は投資家にとって仮想通貨取引所の取引よりも安全で簡単な取引行えるというメリットがあります。

1-4. ビットコインETFが承認されている国は4か国

2021年10月現在においてビットコイン ETF が認められている国はアメリカ、カナダ、バミューダ、ブラジルと世界で4か国しかありません。

今年2月にカナダの「パーパス・インヴェストメンツ」のビットコインETF(Purpose Bitcoin ETF)が当局から承認された事例が世界初のビットコインETFです。バミューダではビットコインやイーサリアムなどの6銘柄がETFの承認を受けています。

10月に入りアメリカで、「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF」(BITO)が19日にニューヨーク証券市場に上場されたことで、4か国となりました。

②ビットコインETFがビットコイン相場に与える影響

次にビットコインETFが、ビットコイン相場に与える影響について解説します。

2-1. ビットコイン市場への影響

10月19日にアメリカで上場されたBITOは、初日に1,000億円以上の資金が集まり大幅な上昇をしましたが、前述したようにこのETFは現物と紐付くものではなく先物価格と連動するものであるため現物の価格には直接影響を与えないはずですが、実際には影響が出ています。BITOがビットコイン市場にどのように影響を与えているのか、ここで少し解説します。

BITOはニューヨーク証券取引所で上場されている上場投資信託です。この上場投資信託が購入され価格が上がると、紐づけられているCME(シカゴマーカンタイル先物取引市場)のビットコイン先物価格が上昇します。

ビットコイン先物価格は、ビットコイン現物価格の先行指標ともなるため、この情報を見た投資家がビットコイン相場の値上がりを予測し、ビットコインの現物やレバレッジ商品を購入する結果、現物のビットコイン価格が上昇する構造となっています。また、今回のようにあまりにもETFが買われて現物市場とのスプレッド(価格差)が大きくなった際は、先物を売って現物を買うというヘッジを行う事も価格上昇の要因となっています。

もちろん、先物価格と現物価格の相関関係は、このような場合だけとは限りませんが、上記のように考えていただくことで、大枠の理解が可能だと思います。

2-2. 現物ETFはまだ承認されていない

ビットコインETF関連の次のテーマは現物資産と紐付けられたETFの承認が降りるか否かという点です。

現物資産と紐付けられたETFが登場することにより、間接的なビットコインの取引が増える事に繋がります。これにより現在よりも仮想通貨市場への資金が流入しやすい環境が整うことになるため、現物資産と紐付けられたETFの誕生は、仮想通貨業界関係者やビットコインの長期ホルダーにとっては非常に重要なテーマとなっています。

今回の先物ETFの登場は、テストケースとしての性格も帯びており、今後も問題なく取引が行われることができれば、SECによって現物ETFが承認される日も近くなるだろうと言われています。

③まとめ

10月20日にビットコインが最高値を更新した背景にあるビットコインETFとビットコイン市場の関係について解説しましたが、現物以外の商品価格と現物価格の関係を理解することは個人トレーダーの方にとってはなかなか難しいことかもしれません。しかし、このような相関関係を理解することで、トレーダーとしてもより洞察力が向上するでしょう。

価格上昇の背景にある事をしっかりと理解することは、トレーダーとしてのレベルを上げることにもつながるため、今回のような出来事がある度にその背景を深く理解する努力をされることをおすすめします。

ビットコインETFとは

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12