ビットコインETFとは、ビットコインの価格に応じて価値が変動する上場投資信託のことであり、ETFは「Exchange Traded Fund」を表します。一般的な投資信託ではなく、上場しているため株式投資に近いイメージです。
一般の投資信託では購入価格が一日一回変動することに対し、ビットコインETFではリアルタイムで価格が変動します。そのためトレーダーは、取引所が開いている限りはいつでも証券取引所でビットコインETFの購入・売却をすることが可能です。決済方法には現金とビットコインの二種類の方法があります。
SECによるビットコインETF承認の経緯
米国内のビットコインETFに関しては、2013年にWinklevoss Twins(ウィンクルボス兄弟)により初めて上場申請が出されました。しかし、米国取引委員会(SEC)は価格変動の大きさや投資家保護の不十分さ、市場の不安定さなどから、申請を却下しています。それ以降、7年近くにわたりBitwise社、Direxion社、GraniteShares社など複数の企業から数十の上場申請があったにも関わらず、SECはビットコインETFを承認することはありませんでした。
しかし2021年10月19日、米ETF大手Prosheres社の「Proshares Bitoin Strategy ETF(BITO)」がSECの認可を受け、ビットコイン先物ETFとして初めてニューヨーク証券取引所Arcaに上場し取引が始められました。開始から2時間後には、約550億円相当の取引が行われたとされており、ビットコイン価格は10月20日時点で730万円を超える値となっています。
また、その数日後の10月22日には米国で2番目となるビットコイン先物ETFの「Valkyrie Bitcoin Strategy ETF」も上場しています。
SECによる上場申請の認可が行われた背景には、2021年2月にカナダの金融規制当局であるオンタリオ証券取引員会(OSC)が、「Purpose Bitcoin ETF(BTCC)」と「Evolpe Bitcoin ETF(EBIT)」の二銘柄を相次いで承認したことや、バミューダ証券取引所でもビットコインETFの取引が開始されたこと、また米SEC委員長に暗号資産への理解が深いGary Gensler氏が就任したことなどが要因であるとされています。
米国でのビットコインETF承認は何が特別なのか
米国でのビットコインETFは、ビットコイン投資に対する信頼性と受容性をもたらすと期待されています。2020年から2021年にかけて、Square社やTesla社などの大手上場企業は投資目的でビットコインを購入しましたが、多くの保守的な投資家には、暗号資産はまだまだリスクの高い商品であると見なされています。
そんな中で行われたSECによるビットコインETFの承認は、機関投資家がより容易にビットコインに投資できることを意味します。その結果、ビットコインETFは債券、金、石油、その他従来の金融資産と同じように取引されることになり、ビットコインの価格を大きく押し上げるきっかけとなりました。
ビットコインETFはどのように機能するのか
ビットコインETFは、実際にビットコインを購入・保有する企業によって管理されており、価格はファンドに保有されているビットコインに固定されています。企業はETFを従来の証券取引所に上場し、投資家は他の株式と同じようにETFを取引します。ビットコインETFでは、商品の価格が高い時に借入を行った上で商品を市場に売却し、価格が下がった時に市場から買い戻して借入元に返却することで利益を得る「空売り」なども可能です。
ビットコインETFと一般のETFには、いくつかの重要な違いが存在します。一般のETFにおいては、株主はETFに含まれる企業の配当の一部を受け取ることができます。例えば、Tesla社を含むETFの株式を持っている場合、あなたはTesla社からの配当を受け取ることが可能です。一方ビットコインETFでは、ビットコインの分散性からそのようなことは起こりません。
また、ビットコインETFは、他のETFと同じようにETFを提供する会社に手数料を支払う必要があります。しかしビットコインETFの場合、手数料の一部はETFの基礎となるビットコインを購入・保管するためのカストディに充てられます。
ビットコインETFを始めるために必要なこと
ETFの購入は誰でも可能です。認定投資家になる必要もありません。ETFへの投資を開始するために必要なことは、オンライン証券口座を開設するか、モバイル取引アプリをダウンロードすることです。そこから、様々な市場に連動するETFを幅広く売買することが可能になります。
ETF取引のメリット・デメリット
実際のビットコインではなく、ビットコインETFに投資することは直感に反することかもしれませんが、ビットコインETF取引には次のようなメリットがあります。
- 投資家は秘密鍵やその保管場所、セキュリティについて心配する必要がありません。株式と同じようにETFの株を所有し、暗号資産の購入や保有といった面倒なことをしなくても、暗号資産市場に参加することが可能となります
- オンラインブローカーを通じてETFを購入することは、取引所から直接暗号資産を購入するよりもはるかに安全で速く、障害が発生する可能性が低くなります
- 暗号資産よりも伝統的な金融商品であるETFの方が、税制上の意味合いやガイダンスが明確です
- 証券取引所は暗号資産取引所よりも流動性が高いため、ETFの売買がより簡単になります
一方で、ビットコインETFに投資する場合、次のようなデメリットも存在します。
- ETFでは市場の取引時間帯にしか売買できませんが、暗号資産市場は24時間365日動いているため、ビットコインの価格が急激に動いた場合、売買の機会を得るまで何時間も待たなければならない可能性があります
- 自分でビットコインを保有するのに費用はかかりませんが、ETFは管理手数料がかかります
- ビットコインは匿名かつPeer-to-Peer方式で購入することができますが、ETFの購入にはKYC(Know-Your-Customer、本人確認)のチェックが必要です
- ETFでは、第三者にあたるカストディアン(管理者)を信用する必要があります
日本国内でビットコインETFは取り扱われているのか
2022年1月現在、日本国内ではビットコインETFの取り扱いはされていません。現在ビットコインETFが承認されている国は、アメリカやカナダ、バミューダ諸島など一部に限られます。しかし、アメリカでビットコインETFが承認されたことにより、今後はこの流れに続く国が現れるかもしれません。
まとめ
今回の記事では、ビットコインETFの仕組み、SECに承認されるまでの経緯やその背景、ビットコインETFのメリット・デメリットについて解説しました。
ビットコインETFはビットコインの値動きに紐づいたETFであること、そしてビットコインETFは暗号資産業界の信頼性を増しさらなる市場拡大の起爆剤になりうることなどが重要なポイントです。ビットコインETFが普及することで、暗号資産をこれまでより気軽に売買しやすくなることが期待されています。
今後のビットコインETFの動きに、引き続き注目していきましょう。
監修者: 株式会社techtec リサーチチーム
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