Proof-of-Work(PoW)とは、ビットコイン(BTC)などの暗号資産を保護するブロックチェーンアルゴリズムの一つで、ビットコインをマイニングする際に必要なハッシュ関数の逆算をする処理のことを指します。PoWは、ビットコインのような中央組織や管理者が存在しないパブリックブロックチェーン上において、「二重支出」を防ぐ方法として開発されました。
二重支出とは、すでに使用したビットコインを再び使うことを指します。ビットコインなどのデジタル技術は、電子上のデータのひとつであるため、理論上はコピーすることが可能です。例えば、アリスにビットコインを支払った後に、そのビットコインをコピーして今度はボブに支払う、といったものです。もしこれが現実に起きてしまうと、ビットコイン全体の供給量の増加やそれに伴うユーザーのコインの減少、そして通貨価値の崩壊に繋がります。この二重支出を防ぐ仕組みが、PoWとなります。
PoWの仕組み
ビットコインのブロックチェーンは、簡単に言えば、これまでに行われてきた全てのビットコイン取引履歴が記録されている台帳のようなものです。このブロックチェーンは、その名の通りいくつもの「ブロック」で構成されており、各ブロックに取引記録が追加・保存されていきます。
PoWとは、このブロックチェーンに新たなブロックを追加する上で必要な作業を指します。具体的には、ブロックチェーンの各ブロックをハッシュ化(ハッシュ関数にかけること)した際に、生成されるハッシュ値の先頭に0(ゼロ)が指定の数並ぶような値を探すことです。これらの作業をマイニングと言い、マイニングを行う人のことをマイナーと呼びます。
マイナーは、ブロックチェーンの各ブロックに格納されている固定値と変動値(ノンスという)のうち、この変動値を変化させることで先頭に0が並ぶ入力値を探し当てる作業を行います。これがビットコインにおけるPoWであり、これが完了すると、ブロックチェーンにおける一つのブロックの生成が終了します。そして、マイナーはその作業の対価としてビットコインを受け取ることが可能です。計算量が多ければ多いほど、獲得できるビットコインも多くなります。
PoWを完了させること、つまり、ビットコインの「ターゲット」に一致するハッシュを作成することは非常に困難な作業となるため、マイニングには高価かつ高性能なコンピューターが必要となります。現在、世界中に存在するマイナーによって、膨大な量の計算が行われており、一つのブロックの生成にかかる計算時間は平均10分程度となっています。一つのブロック生成が完了したら、ビットコインのプロトコルはハッシュ化する必要のある新たな値を作成し、マイナーによる計算の競争が再び開始する仕組みとなっています。
PoWに関するよくある質問
マイナーはルールに従わないとどうなるのか
マイナーがマイニングを行う理由は、計算によって答えを見つけたブロックごとにビットコインの報酬を得ることができるからです。この金銭的報酬は、先に述べた「二重支出問題」を防ぐことにも繋がっています。例えば、あるマイナーが二重支出などのルールを破った場合、ビットコインネットワークは、そのマイナーのブロックをすべて拒否します。その結果、マイナーは獲得できるはずだったビットコインをすべて失うことになります。このように「不正を行ったらビットコインを失うことになるかもしれない」という脅威が、マイナーがルールに従い続けるための抑止力となっているのです。
なぜPoWが必要なのか
前述したように、PoWの一番大きな目的はビットコインの二重支出を防ぐことです。もしユーザーが同じコインを2回以上使用することができてしまうと、その通貨は事実上無価値になってしまいます。
ほとんどのデジタル通貨においては、この問題を解決することは非常に簡単です。例えば、システムを担当するオンラインバンクなどで、各個人がどれだけのお金を持っているのか、どれだけのお金を使ったのかを記録しておけば良いだけのことです。例えばアリスがボブに1ドル送金したのなら、銀行はアリスから1ドルを受け取り、ボブに1ドルを渡すだけのことです。
しかし、ビットコインにはこのような管理者が存在しないため、PoWが必要になります。
PoWを発明したのは誰なのか
PoWを発明したのは、暗号学者であり現在はライトニングネットワークの研究開発などを行うBlockstream社でCEOを務めるAdam Back氏です。よくある誤解として、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトがPoWを発明したとされていますが、PoWの仕組み自体は1990年代にすでにAdam Back氏が発明していました。
マイニングパワーが上がるとセキュリティが向上するのはなぜか
ビットコインの安全性を確保する上で、計算能力が高まれば高まるほど、悪意を持ったハッカーなどの攻撃者に対してセキュリティが頑丈になり、不正を防ぐことができるようになるためです。
どのような暗号通貨が、PoWを使用しているか?
PoWを使用している主な暗号資産には、ビットコイン、ビットコインキャッシュ(BCH)、モネロ(XMR)などが挙げられます。
PoWの問題点は何か
PoWには、いくつかの課題が存在します。順番に見ていきましょう。
1. エネルギー消費量がとても多いこと
ビットコインは、PoWによりスイス全土と同程度のエネルギーを消費していることが分かっています。ビットコインを獲得するためにマイニングを行うマイナーが増えるにつれ、エネルギー使用料は増加しています。こういった背景から、暗号資産の中でビットコインの次に時価総額の高いイーサリアムでは、2020年12月より始まった「イーサリアム2.0」というアップデートに合わせて、PoWからProof-of-State(PoS)という別のコンセンサスアルゴリズムへの移行が進められています。PoSは、イーサリアムブロックチェーンのネイティブ暗号資産であるイーサ(ETH)を一定期間ステーク(保有)することで、ブロックチェーンのセキュリティに貢献し、ネットワークから報酬を得る仕組みとなっています。イーサリアム財団によると「新しいPoSシステムにより、検証プロセスで消費されるエネルギー量が99%以上削減される」とされており、環境にやさしいコンセンサスアルゴリズムということで、PoSは注目されています。
2. 「51%攻撃」問題
51%攻撃とは、悪意ある個人もしくは団体のマイナーにより、ビットコインネットワーク全体の51%のハッシュレートを支配することで不正な取引を行うことを指します。ビットコインのハッシュレートを51%以上支配することができると、そのマイナーは一時的にルールを無視してコインの二重使用や取引ブロックなどの不正ができるようになります。
3. マイニングの中央集権化
PoWは、単一の主体や管理者による支配のない通貨を作ることを目的としています。しかし実際には、たった3つのマイニングプールがビットコイン全体の50%近くのハッシュレートを占めている状況となっており、システムはやや中央集権的になっているといえるでしょう。
監修者: 株式会社techtec リサーチチーム
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