ここ1か月ほど、仮想通貨の価格が全体的に下落している。この現象を説明するひとつの手掛かりが仮想通貨Tether(テザー)に対するある疑惑だ。Tetherの価格が暴落すればビットコイン市場にも大きな影響を及ぼしかねないと言われているが、それはなぜだろうか。
Tetherはビットコインなどの仮想通貨を購入するときに取引所でよく用いられるコインだ。1ドルで1USDT(Tether USD)を購入できる固定為替レートのコインであるため、他の多くの仮想通貨と異なり価格が安定している点が特徴とされる。Coinmarketcap.comによると現在22億USDTが市場に出回っていることから、ドルとの兌換を約束するUSDTを発行するTether社は22億ドルを保有しているはずだ。
だが、Tether社は実際にはそれだけの米ドルを保有していないのではないか、という噂がここ数か月の間広まっている。さらにBloombergが先月末、政府機関の米商品先物取引委員会(CFTC)がTether社とBitfinex社に召喚状を送付したとの記事を発表した。この影響でより一層Tether社に対する疑惑が強まっている。
Bitfinex社は仮想通貨取引所Bitfinexを運営する会社だが、実はBitfinex社の経営陣の多くはTether社の経営陣が兼任しており、取引所の運営者と仮想通貨を発行する会社が近い関係にあることを批判する声もある。なぜなら市場操作が可能になってしまうからだ。
先月には、USDTの発行とビットコインの価格のボラティリティが密接に関わっていることを示すレポートも発表された。ビットコインの価格が下がっているときにUSDTを発行しビットコインを大量買いすることで、今までの価格高騰を実現してきたのではないか。そういう推測も成り立つ。
もし本当に、Tether社がビットコインの価格高騰に深く関係しているのだとすれば、同社の不都合な真実が明るみに出た時にビットコインに影響が出ないわけがない。CFTCの一件が市場を騒がせているのは、こうした不安を持つ人が多いからだ。
USDTの価値がゼロになって慌てた人々が一気に現金化を求めれば、Tether社は噂のようにビットコインの価格を吊り上げることができなくなるのではないか。そもそも現金化に応じるのか。本当に22億ドル(約2,400億円)もあるのか。ドル保有の証明とされていた同社監査会社との関係解消は今回の疑念をさらに深めることとなっており、何が嘘で何が真実なのかも分からない現段階では同社が疑われても仕様がない面はある。
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木村つぐみ
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