脱炭素SaaSプラットフォームを提供するテラスコープ(Terrascope)は12月11日、自社プラットフォーム上に、土地集約型セクターの企業向けに森林・土地・農業(FLAG)分野の排出量測定・管理機能を追加すると発表した(*1)。これにより、同社はFLAG排出機能を組み込んだ最初のSaaSプラットフォームの一つとして、より正確な炭素会計の実現に向けた強力なソリューションを提供できるようになる。
森林・土地・農業分野に特化したガイダンス(FLAG)は、土地集約型セクターの企業が、土地からの排出削減・除去を含む科学的根拠に基づく目標(SBT、#1)を設定するための世界初の基準だ。SBTイニシアチブ(SBTi)が公表したFLAGは、食品・飲料、農業、パッケージ商品、高級品、ホスピタリティなど、食品と農業のバリューチェーンにおける多くのセクターに影響を与えるものである。
食品と農業のバリューチェーンは、世界の排出量の34%を占め、その大部分は森林伐採、土地利用の変化、農業慣行などの上流部門の活動に起因している。そして、それら上流部門の活動は土地利用に伴い温室効果ガス(GHG)が排出されていることから、テラスコープが今回リリースしたFLAGモジュールのようなツールの導入が急務となっている状況だ。
テラスコープのFLAG排出量の測定・管理手法は、SBTiの遵守に加え、土地セクターの除去に関する新しいGHGプロトコルとの整合性も保たれている。FLAGセクターの企業は、自社の事業およびサプライチェーンの土地利用に伴う排出量を測定することができるほか、炭素隔離や土地管理の改善を含む脱炭素化に向けた取り組みを測定することも可能だ。
テラスコープのFLAGモジュールは、FLAG分野の排出量スクリーニングから始まる。そして、企業の事業およびバリューチェーンをレビューし、同分野におけるエクスポージャーとSBTi FLAG目標設定の必要性を判断する。
排出量の計算は、FLAGとエネルギーインベントリに統合され、正確性を担保し、二重カウントも回避される。企業はFLAGモジュールを活用することで、SBTiに沿ったFLAG目標と、長期および短期の脱炭素化計画を設定することができる。
目標設定が求められる企業には、肥料散布、農作業、家畜飼育など農業活動から生じる土地利用変化の推定と土地管理に伴う排出をカバーする測定ツールが提供される。このツールには第三者のデータベースからFLAGの排出量を集計する独自機能も含まれている。
テラスコープは2022年6月に設立された、企業向け脱炭素SaaSプラットフォームを提供するスタートアップだ。シンガポールの大手食料商社オラム・グループ傘下企業となる。人工知能(AI)を活用した排出量の測定・管理に加え、食品を始めとする様々な業界および持続可能性に関する高い知見も活用し、企業の脱炭素化を支援する。
スイス紙容器大手テトラパックやサッポログループ食品傘下のPOKKA PTE. LTD.などを主要顧客に持ち、日本では三菱商事やみずほ銀行などと戦略的パートナーシップを締結している。
より正確な炭素会計の実践が求められる中、SBTi FLAG目標を設定する必要のある企業にとってテラスコープのFLAGモジュールは、脱炭素投資を最適化し、コンプライアンスの取り組みを簡略化する上で有効なツールになり得る。同社のFLAGを含む脱炭素関連の単一プラットフォームの利用拡大が進むことに今後も期待したい。
(#1)SBT(Science Based Targets)…パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた企業の温室効果ガス排出削減目標。国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による気候変動に関する共同イニシアチブ「SBTイニシアチブ(SBTi)」が目標を認定する。
【参照記事】*1 PR Newswire「Terrascope announces the ability to measure and reduce FLAG emissions on its decarbonisation platform」
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