NFTという言葉がWeb3界隈で注目された頃から、NFTプロジェクトが「DAO(分散型自立組織)」という形態を使って運営されるケースが出てきました。そんな中で、自由民主党 デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームは、DAOに関する法律の在り方について、これまでweb3PTの関連団体や企業や推薦された事業者を招いてハッカソンを開催していました。
ここでは実際にDAOに参加している筆者が、DAOとは何なのか、失敗しないNFT投資やNFTプロジェクトの参加方法や応援の仕方などを詳しく解説します。
目次
①DAO(分散型自立組織)とは
NFTプロジェクトの運営において「DAO」という形態が注目されています。DAO(Decentralized Autonomous Organzation)は、日本語では「自律分散型組織」と訳されます。そもそもDAOとは、ブロックチェーンに基づく組織や企業の形態の一つで、特定の中央管理者を持たず、組織内の構成員一人一人によって自律的に運営されているインターネットネイティブな組織のことを表します。
DAOの代表例として挙げられるのが、ビットコインです。マイニングによる報酬としてビットコインが還元される仕組みを作ることで、参加者が積極的にネットワークを維持する仕組みを構築しています。
DAOでは基本的に、スマートコントラクトを使用しています。スマートコントラクトは、特定の条件が満たされたときに特定の機能を実行する、自己完結型のコンピュータプログラムです。現在、スマートコントラクトは数多くのブロックチェーンに展開されていますが、暗号資産の中でもイーサリアムの特徴的な機能として知られています。
1-1.NFTプロジェクトを運営するDAOとは
2023年12月時点では、NFTプロジェクトにおけるDAOはブロックチェーンを活用して構築されているのではなく、基本的にDiscordというチャットツール上で行われています。テキストコミュニケーションで会話が行われ、プロジェクトが運営されています。また、報酬が送金される際も人の手が介在しているという状況です。
DAOの組織では階層が存在しませんが、創業者(ファウンダー)が存在し、プロジェクトの初期から参加しているユーザー「運営」がいます。そして大多数が積極的に参加するアクティブユーザーと非アクティブユーザーという階層になっています。
プロジェクトを盛り上げてくれるアクティブユーザーは、貢献度が高いと評価されます。そのためプロジェクトからユーザーにインセンティブを配布する際は、積極的にアクティブユーザーに付与されることになります。そのため、階層は存在しないとは言え、実際にはファウンダーと運営がDAOを主に引率している格好です。DAOはアクティブユーザーが下支えしていることは間違いなく、アクティブユーザーが増えない限り、いつか行き詰まるプロジェクトとも言えるでしょう。
1-2.どんなDAOに参加すればいいのか
DAOはWeb3を使ったコミュニティであり、NFTをインセンティブやユーティリティに使うケースがあります。そのため、気に入ったNFTを購入することで、そのNFTを発行したDAOに参加できたり、NFTを購入しなくてもDAOにのみ参加して、動向を追うこともできます。
前項にも記したようにDAOはDiscordというチェットツールで行われており、アクティブユーザーが盛んに会話しているところは、リアルタイムでチャットが行われています。またDAO内でいくつものプロジェクトが立ち上がっています。そういったDAOを選んで参加してみることで、リアルタイムの賑わいを見ることができます。必ずしもチャットを書き込む必要ななく、チャットの内容を見るだけも可能です。中には、そのDAOのNFT保有者だけしか見ることができない、チャットルームが作られているところもあります。
DAO内で立ち上がったばかりのプロジェクトは、手探りなこともあり、DAOに参加したばかりの方でも入りやすい環境でもあります。逆に考えれば、自分が手伝えることができるポジションが空いているということでもあるので、DAOに参加してみたいという人におすすめです。
②自民党本部でDAOに関するハッカソン開催
2023年11月15日(水)、22日(水)、29日(水)と自由民主党 デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームは、DAOに関する法律の在り方について、これまでweb3PTで発表した関連団体や企業や推薦をもらった事業者を招いてハッカソンが開催されました。
ハッカソンで議論したテーマ例として、次の4つを自民党の公式ページでは掲載されています。①DAOを作る理由は何か?法人格で困ることはあるか、②既存の法人格はあるがそこに属さない理由は何か、③金銭的な価値の流通が発生するか・金商法で困ることはあるか、④非金銭的な価値の流通が発生するか?既存の法律でこまることはあるか、という内容が国内に存在する複数のDAOの代表者と議論されました。
昨今では、地方創生や社会課題解決のために、DAOを使ったコミュニティ運営が行われている事例が増えています。それにより地域社会の活性化に対して大きな期待が寄せられています。今回のハッカソンでは、こういったコミュニティ活動において、何故、法人ではなくDAOなのかといったトピックから、DAOが発行するNFTには金銭的価値が発生するのか、などが議題として出てきたそうです。
2-1.法人ではDAOを活用している事例
私が参加させてもらっている農業系コミュニティ「tomajo DAO」も今回のハッソンに招かれています。農家の所得を上げるという目的があるtomajoは、コミュニティという力を使って、農業界を盛り上げ、生産者と消費者を直接繋げることで、零細農家の所得向上に繋げていくというロードマップが描かれています。法人では柔軟に取り組みができないところでDAOを活用しているという形です。
その他、国内のDAO事例として有名な山古志村は、かつて2,200人以上の住民がいたものの、現在は約800人ほどとなり、高齢化率が55%に達しています。このような背景から、隣接する長岡市に合併されることとなりました。2004年の新潟中越地震を経て、竹内春華氏が山古志村に関わるようになり、村の魅力に惹かれました。竹内氏は後に「山古志DAO」の発起人となり、合併後も山古志村のアイデンティティを保存・発展させるために、仮想空間での村体験を提案しました。同氏はエストニアの「e-Residency(電子国民プログラム)」に触発され、竹内氏はNFTをデジタル住民票として利用するアイデアを考案しました。これにより、山古志村に物理的に住んでいない人でもデジタル上での村民としての役割を果たせる「山古志DAO」を立ち上げました。発行された「Nishikigoi NFT」はデジタル住民だけでなく地元の住民にも無料配布されました。
2-2.海外や企業でもDAOの活用広がる
米ワイオミング州では2021年7月1日、自律分散型組織(DAO)の法人化を正式に認めるための法案が施行されました。同法案は、定められた条件の下でDAOが有限責任会社(LLC)という法人になることを認めるものです。日本ではステーブルコインの整備や金融商品取引業者の体制強化などが進んでいるものの、DAOに特化した法整備はまだ見られません。しかし、デジタル庁は昨年9月、Web3.0の新時代に対応するため「Web3.0研究会」を立ち上げました。この研究会の目的は、NFTやDAOといった新たな技術の到来に向けた法的環境の整備を検討するとのことです。
NFTの盛り上がりは国内より海外で莫大な取引が行われているという事実もありますが、日本国内のDAOというコミュニティ活動は、海外からも一目置かれるほどに注目度が高まっています。2023年10月、三井住友海上火災保険株式会社は、採用の公平性と透明性を追求し、その新しい手法として、DAOを取り入れた採用プロセスを展開すると発表しました。具体的な運用方法としては、三井住友海上の採用DAOはDiscordやUnyteなどのオンラインツールを活用するとのことです。またメンバー間で意見やアイディアが自由に交換され、全メンバーの投票によって、項目ごとの意思決定が行われていくとのことです。このようにDAOはWeb業界だけのはなしではなく、国家や企業なども注目していることが分かります。
2-3.どこからDAOに参加すれば良いのか
NFTを保有していなければDAOに参加できないということは決してありません。DAOに参加するには、各NFTプロジェクトの公式サイトやホームページ内にコミュニティの入り口が用意されているので、そこにアクセスするのが良いでしょう。
検索エンジンで公式サイトを検索する以外にも、OpenSeaを経由する方法もあります。コレクションを検索すると表示される地球マークをクリックすると、コミュニティの公式サイトにアクセスすることができます。X(旧Twitter)などでURLが掲載されていることもありますが、安全性を考慮するとまずはおすすめした方法で公式サイトにアクセスすると良いでしょう。
③NFT購入について伝えたいこと
3-1.初めてNFTを保有する際に注意すること
NFTは価格変動があるものなので、もちろん資産価値があります。しかし、値上がりを期待してNFTを購入するという選択肢もありますが、基本的にはおすすめしません。価格が上がる瞬間を狙って投資をすることは非常に難しいので、NFTのデザインや絵柄が気に入ったとか、コミュニティを応援したい・関わりたいという考えでNFTを購入すると良いでしょう。
3-2.ふるさと納税の返礼品NFTを購入してみる
NFTマーケットプレイスでは選ぶのが難しい、どのNFTプロジェクトが良いのか分からないと言う方は、地方自治体が発行しているNFTを購入してみるのも良いでしょう。日本の自治体も地方活性化のためにNFTを発行していることがあります。耳馴染みのあるところで例を挙げると、ふるさと納税の返礼品のとしてNFTが発行されるケースもあります。昨今は、地方創生のために「関係人口の創出」が注目されており、そのためにふるさと納税の返礼品にNFTが活用されているという流れです。
その一例として、「あるやうむ」をご紹介しましょう。同社は「NFTによる地方創生」を推進するため、全国の自治体向けにふるさと納税NFT/観光NFTソリューションを提供する札幌発のスタートアップです。地域の魅力をのせたNFTをふるさと納税の返礼品とすることで、新たな財源を創出すると共に、地域創生や関係人口の創出に繋げ葉としています。「あるやうむ」はこれまで、国内にあるNFTプロジェクトとタッグを組んでおり、プロジェクトごとに返礼品のためのNFTを作成しています。
同社がこれまでコラボしたふるさと納税NFTが購入できる公式サイトが「あるやうむ」で展開されています。同サイトでは人気のコレクションや自治体からNFTを選ぶことができ、そこからコレクションを購入することでふるさと納税ができるようになっています。
3-3.NFTを保管するウォレットを作成しておく
NFTを購入する際や、ふるさと納税のNFTを購入する際は、NFTを受け取り、保管しておくためのウォレットMetamask(メタマスク)が必要です。メタマスクではイーサリアムおよびイーサリアムベースの仮想通貨やNFTの保管・管理・送受信が可能となっています。メタマスク作成方法はこちらの記事に詳しく掲載しております。
メタマスクは強固なセキュリティを誇っていますが、使い方を誤るとハッキングされるリスクもあります。ウォレットの使い方と注意点についてはこちらの記事で詳しく掲載しております。
メタマスクはGoogleの拡張機能として利用することもできます。そのためGoogleアカウントを複数作ることで、ウォレットも複数作成できます。ウォレットのハッキング対策の一つとして、NFTを保管するようのメタマスクと取引用のメタマスクの2つを作成しておくというのも良いでしょう。
④まとめ
自律分散型組織「DAO」は、Web3界隈だけで使われるものではなく、地方自治体や企業、国家などでも、これからの新しい組織形態として注目されています。昨今ではDAOはweb3のバズワードではなく、地方創生や社会課題の解決のために活動するためのコミュニティとして役割を持ちつつあります。しかし、DAOに関する法整備はまだ手付かずの状態です。そのため、NFTを購入してDAOに参加したいという人は税制のチェックはもちろん、これからのプロジェクトの行方まで幅広に注意をする必要があります。現時点ではまだ、積極的にNFTを売買してDAOに参加するというよりも、お気に入りのNFTを購入してコミュニティでの関わりを楽しむということに留めておくことが良いかもしれません。
立花 佑
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