米証券取引委員会(SEC)は3月6日、米上場企業による気候変動関連の情報開示を義務付ける規則を採択した(*1)。ソニー、三菱UFJフィナンシャル・グループ、トヨタ自動車など、米国に上場している日本企業も対象となる。
同規則は、気候変動リスクが経営に与える財務的影響と、そのリスクの管理方法について、より一貫性があり、比較可能で、信頼できる情報を求める投資家の要求に応えるものだ。一方、規則の順守に伴い発生し得るコストの軽減にも配慮した。
また、気候変動リスクの開示は、企業のウェブサイトではなく、年次報告書や登録届出書といったSEC提出書類に含まれることが義務付けられ、より信頼性の高いものとなる見込みだ。
同規則の下で、具体的には、事業戦略や財務などに重要な影響を与えた、または与える可能性が高い気候関連リスクや、特定された気候関連リスクが戦略や将来見通しに与える重大影響の開示が義務付けられた。
気候関連リスクを緩和または適応するための活動を行った場合に発生した重要な支出、取締役会による監督、リスクを特定、評価、管理するために有するあらゆるプロセスの開示も求められる。
気候目標、スコープ1(#1)排出量および、またはスコープ2(#1)排出量、財務諸表の注記で開示される、ハリケーンや干ばつなどの悪天候やその他の自然条件の結果として発生したコストの開示も義務付けられる。ただし、スコープ3(#1)排出量の開示は求められない。
その他、気候目標を達成するための重要なツールと利用される場合、カーボンオフセットや二酸化炭素(CO2)削減に対するクレジットまたは証書(RECs)に関連する費用なども開示しなければならない。
気候変動関連の開示に関する当初案が公表された際には産業界が反発し、その後のパブリックコメントでは2万4,000件以上の意見が寄せられた。それらの意見を踏まえ、最終規則が採択された。当初案ではスコープ3の開示が盛り込まれていたが、最終規則では対象から外されている。しかしながら、依然として産業界からの不満の声は変わらず上がっており、規則の決定については紆余曲折がありそうだ。
(#1)スコープ1…事業者自らによるGHGの直接排出。
スコープ2…他社から供給された電気や熱などを使用して発生する間接排出。
スコープ3…事業者の活動に関連する取引先の排出。
【参照記事】*1 米証券取引委員会「SEC Adopts Rules to Enhance and Standardize Climate-Related Disclosures for Investors」
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