米マイクロソフトは9月27日、アイルランド国営エネルギー企業ESBと、ダブリンのデータセンターの電力制御および管理棟に排出ゼロのグリーン水素電力を供給する契約を締結したと発表した(*1)。
今回のパイロットプロジェクトでは、欧州でマイクロソフトが有するデータセンターに水素燃料電池を初めて使用し、8週間にわたって最大250kWのクリーンエネルギーを供給する。
ESBのゼロエミッション水素燃料電池は、貯蔵されたグリーン水素を電力に変換し、副産物は純粋な水のみである。ディーゼル発電機に代わるものとして設計された。同水素燃料電池は、二酸化炭素(CO2)に加え、健康や環境に重大な影響を及ぼす可能性のある粒子状物質、二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NOx)など有害な大気汚染物質を一切排出しない。
今回のパイロットプロジェクトは、ESBが2024年および25年に計画しているプロジェクトの一部であり、様々な電力用途における水素燃料電池技術の汎用性を示すことを目的としている。同パイロットプロジェクトは、アイルランドの戦略上重要なデータセンター部門の脱炭素化に水素エネルギーが貢献できる潜在的なインパクトを示すための第一歩となる。
水素燃料電池パイロットプロジェクトはESBとの共同事業である。電力網を効率的に利用し、再生可能エネルギーを供給するデータセンターの開発を支援することで、アイルランド政府が22年に定めた「持続可能なデータセンター開発の原則(Principles for Sustainable Data Centre Development)」に沿うものだ。
マイクロソフトにとっては、今回のパイロットプロジェクトが、世界中のデータセンター、ビル、キャンパス(本社)へのカーボンフリー電力供給への移行を目指す上で新たな重要なステップとなる。グリーン水素の利用を通じて、既存および将来構築するクラウドおよびAIインフラストラクチャの持続可能性の確保を目指す。
マイクロソフトのクラウドオペレーションズ&イノベーション部門EMEA地域リーダーであるオイン・ドハーティ副社長は「ESBと開始するグリーン水素プロジェクトは、欧州におけるマイクロソフトにとって先駆的な取り組みであり、ゼロエミッション水素が私たちのデジタルライフにどのように活用できるかを示すものだ。プロジェクトが成功裏に拡大すれば、私たちの業界だけでなく、他の業界においても持続可能性を推進する新たな方法を提供できるだろう」と述べた(*1)。
マイクロソフトは30年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、ゼロウェイスト企業となり、生態系を守るという野心的な目標を掲げている。同目標は、世界中のインフラと業務全てを網羅するものだ。
22年11月には、アイルランド国内だけで900MW以上の陸上風力および太陽光発電プロジェクトの開発に関連する新たな再エネ契約を締結したことを発表した。これにより、マイクロソフトはアイルランド政府の30年コーポレートPPA(CPPA)の目標達成に大きく貢献することになる。
【参照記事】*1 マイクロソフト「Microsoft announces pioneering green hydrogen pilot project with ESB」
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