マスターカード、プラ製カードリサイクルを世界展開へ。数十億枚のカード削減を目指す

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米クレジットカード大手マスターカード(MA)は6月21日、グローバルベースでクレカおよびデビッドカードをリサイクルする取り組みを開始すると発表した(*1)。業界で流通する数十億枚のカード削減を目指す取り組みの一環となる。

まずは、HSBCホールディングス(HSBC)の英国8支店でリサイクルを開始する。今後、世界各国のパートナー金融機関がプロジェクトへ参画することで、規模の経済効果を発揮させる計画だ。

マスターカードがHSBC支店内に専用の回収ボックスを設置する。投入されたカードおよびチップは裁断され、カード情報が盗まれることはない。競合他社のカードもリサイクルできる。

裁断処理したカードはパートナー企業のリサイクル施設に運ばれる。例えば英国ではテラサイクル(TeraCycle)がリサイクルを担う。

テラサイクルは20年以上にわたり、練り歯磨きのチューブやコーヒーポットなど、リサイクルが難しい製品を取り扱うグローバルリーダーだ。

現在、マスターカードの流通カード枚数は約31億枚である。業界全体では毎年約6億枚のカードが製造されており、それぞれの寿命は約5年となる(*2)。

カード・モバイル決済の専門誌ザ・ニルソン・レポート(The Nilson Report)によると、世界のカード流通枚数は約260億枚であり、2027年末までに約284億枚に増加するという(*3)。

プラスチックは利便性の高い素材であり、経済の発展と共に利用が急拡大した。

一方で、プラごみ問題は世界が直面する大きな課題となる。プラごみは埋め立て処分されたり、河川や海洋に投棄されたりして環境汚染に繋がっている。プラ製造は主な温室効果ガス(GHG)排出源にもなる。

そのような中、210以上の国と地域に展開するマスターカードは、グローバル規模でプラ製カードのリサイクルを開始する。

完全に物理的なカードの保有を止められるデジタルファースト・カード・プログラムなどを通じ、デジタル決済も推進する。

2028年からは、全てのプラ製カードでポリ塩化ビニール(PVC)の使用を廃止し、再生プラやバイオマスプラ(サトウキビやトウモロコシなどを原料とする)といったより持続可能な素材を利用する(*4)。

21年以来、92ヵ国で403の金融機関およびフィンテック企業と共にサステナブルな素材の利用を進め、海洋プラやバイオマスプラなどから作られたマスターカードブランド付帯カードを2億3,500万枚発行した。

マスターカードのプラ製カードリサイクルの取り組みは、今後、世界各国でパートナー金融機関と協働するケースが増加すると見込まれ、中長期的にどれほどの環境インパクトをもたらすか注目したい。

【参照記事】*1 マスターカード「Shredding a myth about recycling: It’s time to tackle first-use plastic cards
【参照記事】*2 ロイター「Mastercard launches global plan to recycle credit cards
【参照記事】*3 ザ・ニルソン・レポート「Payment Cards Projected Worldwide」
【参照記事】*4 マスターカード「Mastercard accelerates sustainable card efforts

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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