国際エネルギー機関(IEA)は3月8日、2021年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が過去最高に達したと発表した(*1)。温室効果の影響度が大きい石炭からの排出量が過去最高に達しており、排出量の増加はおもに中国によるものだと分析した。
新型コロナ禍からの急速な景気回復や石炭の利用拡大を背景に、排出量は前年比6%増の363億トンとなった。20億トン以上の排出量の増加は史上最大であり、新型コロナの影響を受けた20年の減少を相殺して余りあるものだったという。また、悪天候や天然ガス価格の高騰などが石炭の利用拡大につながった。
エネルギー別では、石炭からの排出量が153億トンと過去最高に達し、排出量の増加分の40%以上を占めた。天然ガスは75億トンと、コロナ前を上回る水準に増加した。一方、石油は107億トンと、依然としてパンデミック前を下回る水準だった。21年は航空セクターの回復が限定的であったことが影響した。
IEAはおもに中国がCO2排出増をけん引したとみている。21年にはCO2の排出量が119億トンに達し、世界の排出量の33%を占めた。また、20年と21年ともに排出量が増えた唯一の主要国だった。中国の排出増はおもに電力需要の急拡大による石炭火力発電の利用増加によるという。21年の電力需要は10%増と、国内総生産(GDP)の伸びである8.4%を上回っており、電力発電量の半分以上は石炭によるものだった。
インドはCO2排出量が19年の水準を上回っており、石炭火力発電量が過去最高を記録した。一方、先進国では構造的にCO2排出が減少している模様であり、米国は19年の水準を4%下回っているほか、欧州は2.4%減となった。
ファティ・ビロル事務局長は排出量が今後増えないようにするとともに、エネルギー・トランジション(#1)を加速させることで、エネルギー安全保障の確保とエネルギー価格の低下につなげなければならないと訴えた(*1)。
足元ではロシア・ウクライナ情勢が混とんとするなか、各国がエネルギー政策の見直しを迫られている。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」のもとで、産業革命以降の気温上昇を1.5度におさえるという目標の達成に向け、それぞれの国がいかなる施策を講じ、それに企業がいかに呼応するか注目したい。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
【参照記事】*1 「Global CO2 emissions rebounded to their highest level in history in 2021」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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