イベルドローラ、ホルシムと提携。サステナブルビルディングと再エネプロジェクト推進

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スペイン電力大手イベルドローラ(ティッカーシンボル:IBE)は5月24日、セメント世界大手スイスのホルシム(HOLN)と、ドイツで再生可能エネルギー由来の電力購入契約(PPA)を締結したと発表した(*1)。サステナビリティ分野における広範な取り組みでも協働していく方針である。

同契約を通じて、イベルドローラはホルシムに対し、ドイツのバルチック・イーグル洋上風力発電所より年間250ギガワット時(GWh)の再エネを供給する計画だ。これにより、ホルシムは同国でネットゼロ達成を推進し、2030年までにオペレーションで使用する電力の80%超を再エネで賄うことを目指す。バルチック・イーグル洋上風力発電所はバルト海で建設中であり、2024年の完成時に476メガワット(MW)の総発電容量を有する見通しである。

広範囲に及ぶ提携の一環として、両社は欧州を始めとする各国で様々なサステナビリティ関連プロジェクトの実行可能性を探るワーキンググループも設置した。追加のPPA締結に加え、太陽光パネルからグリーン水素といった再エネ設備をホルシムが保有する工場に設置するのに最適なロケーションの分析などを行う。さらに、既存の産業プロセスの電化や電動モビリティ関連ソリューションの拡大に資するプロジェクトの調査もサポートする。長期的には、100%エミッションフリーのグリーンセメントを製造し、世界中で再エネプロジェクトの構築を目指す。

イベルドローラは近年、複数の異業種連携を通じて脱炭素化社会の促進に向けた取り組みを推進している。22年7月には、電気自動車(EV)急速充電インフラの大幅拡充と大規模なグリーン水素製造ハブの構築に向けて、英石油大手BP(BP)と協業すると発表した(*2)。23年1月には、スペインで1,265メガワット(MW)規模の再エネプロジェクトに投資すべく、世界最大級の政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金(GPFG)」の運用を担うノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(NBIM)と提携した。同年3月末には、スペイン最大手保険会社マフレと戦略的提携を強化し、再エネプロジェクトの拡大を進めている。

ホルシムは15年3月、同業の仏ラファージュと合併したことで、世界最大のセメントメーカーが誕生した。セメント業界は二酸化炭素(CO2)の排出削減が困難な(hard-to-abate)産業であるが、業界リーダーとなるホルシムはサステナブル建築の構築に向けた取り組みを積極化している。たとえば、CO2排出量を最低30%削減するグリーンコンクリート「ECOPact」を販売するほか、建築材料の使用を最大50%削減できる3Dプリンティングのようなスマート・デザイン・システムも活用している。

22年には、クリーンで革新的な技術開発を支援する欧州イノベーションファンドから3億2,800万ユーロの補助金の交付を受け、ドイツとポーランドで炭素回収・有効利用・貯蔵(CCUS)プロジェクトを進めている状況だ。

さらに、ホルシムは「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」のメンバーとして、自然のリスクと機会などを報告するための枠組み作りを進めるなど、気候変動のみならず、自然分野においても業界をリードする。今後、TNFD枠組みで開示された情報を活用した銘柄選定が進むことで、業界リーダーのホルシムにグリーンマネーが流れ込むことに期待したい。

【参照記事】*1 イベルドローラ「We agreed with Holcim on a new strategic partnership to accelerate sustainable building solutions with renewable energy projects
【関連記事】*2 https://hedge.guide/news/bp-iberdrola-stock-information-202208.html

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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