スペイン電力大手イベルドローラ(ティッカーシンボル:IBE)は4月13日、2023年から同社の支出額の85%以上を、ESG(環境、社会、ガバナンス)基準を順守したサプライヤーから調達すると発表した(*1)。2022年の調達額ベースで178億ユーロ(約2兆6,000億円)に上る2万社のサプライヤーとベストプラクティスの普及促進を目指す。
21年に策定した従来目標では、年間支出額が100万ユーロ以上のサプライヤーのうち最低70%の企業にESG基準への順守を求めていたことから、大幅な引き上げとなる。イベルドローラはESGの取り組みを推進すべく、この仕組みを導入しており、22年末には主要サプライヤーの77%が持続可能な供給を実践している。
各サプライヤーはまず、イベルドローラとビジネス上の関係性を持つために、サプライヤー向け倫理規範となるSupplier Code of Ethicsを守る必要がある。これは、人権、多様性、平等、労働安全衛生、不正防止などに関するアクションが含まれている。さらに、イベルドローラは持続可能性、透明性、ソルベンシー(支払い能力)、公正性、倫理性、技術的な競争優位性の面からサプライヤーを選定する。
倫理行動のモニタリングは、サプライヤーを始め、親会社、子会社、経営陣、株主にまで及ぶ。サービスもしくは調達品によるが、サイバーセキュリティ、リスク防止、環境管理に加え、国際標準化機構(ISO)認証を求めることもある。イベルドローラの調達マネージャーは、価格や品質に加えてサステナビリティ面を考慮してサプライヤーと交渉する。23年には50社以上のサプライヤーのESG監査を行う計画だ。
今回の目標引き上げは、21年11月に公表した新気候アクションプランのうち、40年までに事業全体で脱炭素化を図るコミットメントの達成に貢献する。同アクションプランでは、まず始めにサプライヤーの排出量の測定精度を向上させ、電化やサーキュラーエコノミーなどを推進して炭素削減を図る。グリーン鉄鋼、森林破壊ゼロ、生物多様性、持続可能なモビリティといった取り組みや、拠点とするスペインのサプライヤーからの戦略的調達も進める。
イベルドローラは1世紀の歴史を誇る老舗の電力会社だ。01年にイグナシオ・ガラン氏が最高経営責任者(CEO)に就任して以降、同社はクリーンエネルギー事業でのグローバル成長を推進している。再エネ分野では世界で上位3社の一角を占める(時価総額ベース)。気候変動対策を積極的に推し進めており、23年1月にはブラジル子会社Neoenergiaを通じ、同社初となる浮体式太陽光発電を導入すると発表した。
気候変動と表裏一体の生物多様性対策も強化しており、22年12月に新生物多様性計画を公表し、30年までに、事業展開する地域での生物種および生態系へのネットポジティブインパクト実現を目指す。ESG評価も高く、たとえば、投資家に最も多く利用されているESGスコアの一つ「MSCI ESG Rating」では、2018年11月より最上位のAAAを獲得している(*2)。これはMSCI ACWIインデックスの公益業界に属する138社のなかで上位13%に入るリーダー企業として位置づけらる。
【参照記事】*1 イベルドローラ「We accelerate ESG criteria at our 20,000 suppliers worldwide」
【参照記事】*2 MSCI「ESG Ratings & Climate Search Tool」
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