直接空気回収(DAC)スタートアップHoloceneは9月10日、米アルファベット傘下グーグルと、過去最低水準となるトンあたり100ドルで10万トンの二酸化炭素(CO2)を回収・除去するオフテイク契約を締結した(*1)。
Holoceneはグーグルと二酸化炭素除去(CDR)クレジット供給契約を締結し、2030年代初頭までに供給する。10万トンのCO2は、1年間に走行する自動車2万台分の排出量に相当する。
DACは、化学的または物理的プロセスを用いて大気中からCO2を直接回収した後、地下に永久貯留するか、製品に再利用する有望な技術である。気候変動に歯止めをかけるためには、50年までに年間数十億トンのCO2を大気中から除去する必要があり、DACはその解決策の重要な一部となる可能性がある、と専門家は見ている。
ただし、DACは事業化の実現可能性と規模という課題に直面している。現在、年間2,000トン以上のCDRクレジットを供給しているDACプラントはない。技術は向上しているものの、価格はCO2除去量1トンあたり数百ドルに留まっており、より多くの企業や政府がDACプロジェクトに投資するためには、コストが劇的に下がる必要がある。
Holoceneとのパートナーシップは、DAC技術が直面している重要な障壁の1つである高額な価格に対処することを目的とする。同社の技術は開発の初期段階にあるが、時間の経過とともにコストを大幅に引き下げられる可能性を秘めている。
Holoceneとの契約が一般的なDAC取引よりも大幅に安い価格で実現したのには、いくつかの重要な要因がある。第一に、同社はDACに対して革新的なアプローチを採っており、液体と固体の両方の要素を組み合わせることで、物理的コストを長期的に削減できる可能性が高い。
グーグルは、30年代初頭に予定されている低コスト設備からのクレジット調達にコミットする一方、事前に資金面のサポートも行う。最後に、Holoceneのプロジェクトは、グーグルからの資金提供に加えて、米国政府によるCO2回収の税額控除(45Q)の対象として助成を受ける。45Q税額控除は、炭素除去量1トン当たり180ドルをサプライヤーに提供することで、DACへの投資を奨励している。
Holoceneの技術の基盤は化学にある。アミノ酸やその他の有機化合物を使用して、空気中からCO2を回収する。一旦回収されたCO2は濃縮され、低温で加熱される。このアプローチは、大気からの直接回収を困難にしている高いエネルギーコストと資本コストに対処するのに役立つ。低温の熱は、炭素を含まない熱源や廃熱源から供給することができ、同社の化学プロセスは、広く利用可能な産業用機器を使用している。
グーグルは、世界経済の脱炭素化の一翼を担い、事業全体でのネットゼロエミッションという目標を達成することにコミットする。炭素除去技術はそのための重要な鍵となる。重要な意味を持つ価格で契約したことは、気候変動と闘うためのツールとしてDACの可能性を前進させる有意義な一歩となる。
【参照記事】*1 グーグル「Our first-of-its-kind direct air capture deal forges a path to lower costs」
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