カナダの投資ファンドのブルックフィールド・アセット・マネジメントは9月10日、超低炭素eフューエル(合成燃料)スタートアップInfiniumに最大11億ドル(約1,560億円)を投資すると発表した(*1)。Infiniumおよび同社のeフューエルプロジェクトを資金面からサポートし、持続可能な航空燃料(SAF)の製造加速を後押しする。
Infiniumによると、同社は世界で初めて商用利用可能な超低炭素eフューエルの製造を手掛ける。次世代のSAFであるeSAFも製造しており、従来の燃料と比較してライフサイクルでの温室効果ガス(GHG)排出量を90%以上削減することができる。
今回の取引により、ブルックフィールドは、Infiniumおよび同社が西テキサス州で開発中のProject Roadrunnerに2億ドル超、Infiniumのeフューエルプロジェクトの世界展開に最大8億5,000万ドルを投資する。
Infiniumのロバート・シュエッツル最高経営責任者(CEO)は「我々のProject Pathfindeは弊社初の商業規模のeフューエル施設であり、Project Roadrunnerはeフューエルの世界的な供給を拡大するための生産量の増加をもたらすものだ。我々の航空会社のパートナーは、より多くのSAFと脱炭素の選択肢を求め続けており、そのような需要に応えるために生産を加速させることを約束する」と述べた(*1)。
インフィニウムのeSAFは最新世代のSAFである。水、廃棄物による二酸化炭素(CO2)、再生可能エネルギーを組み合わせた独自のプロセスを採用し、eSAF、eディーゼル、eナフサを含む超低炭素燃料を製造する。
eフューエルは、現在の化石燃料のドロップイン代替品であり、飛行機、船舶、トラック、製造プロセスにおいて、エンジンやインフラに変更を加えることなく使用することができる。
Infiniumは最近、アメリカン航空との戦略的契約を発表した。アメリカン航空は2026年からProject Roadrunnerで製造されるInfiniumのeSAFを購入する。同契約は、アメリカン航空が野心的なサステナビリティ目標を達成しながら航空機の脱炭素化を進めるための燃料の確保に役立つ。
Project Roadrunnerサイトでは、プラスチック製造に使用できるeナフサと、電化が難しい長距離トラック輸送や海上用に使用できるeディーゼルも製造する。Infiniumは、同プラントの残りの生産能力に関する多くのオフテイク契約を進めており、いずれ発表する予定である。Project Roadrunnerには、ブレイクスルー・エナジー・カタリスト(#1)も7,500万ドルの資金を提供している。
ブルックフィールドによる今回の投資は、Brookfield Global Transition Fund(BGTF I)のファースト・ヴィンテージ(第1号ファンド)を通じて行われ、同社にとって初となるSAFへの直接投資だ。ブルックフィールドはInfiniumのシリーズC優先株式募集の主幹事も務める。
ブルックフィールドのマネージング・パートナーを務めるジェハンギール・ヴェヴェイナ氏は「我々の投資は、弊社に魅力的なリスク調整後リターンをもたらしながら、InfiniumがSAFの製造を加速させ、顧客の高まる需要に応えるために必要な資本を提供するものである。Infiniumは構造的に不足しているeフューエル市場の需要を満たすのに役立つ大規模なパイプラインを有している。我々はフォローオン投資(#2)を通じて、更なるeフューエルプロジェクトの開発に参加する」と語った(*1)。
(#1)BEC…米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏が設立した ブレイクスルー・エナジーが立ち上げたプログラム。脱炭素関連のうち、研究開発段階を終えて商用化を目指す事業に投資するファンドとなる。
(#2)フォローオン投資…一度投資を行った投資先に対し、次回以降のラウンドで追加投資を行うこと。
【参照記事】*1 Infinium「Brookfield to Invest Up to $1.1 Billion in Infinium to Scale Ultra-Low Carbon eFuels」
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