非財務情報の開示基準を定めるグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)は1月25日、生物多様性に関する新基準「GRI101:生物多様性2024」をリリースした(*1)。新基準は既存の「GRI304:生物多様性2016」の改訂版で、2026年1月1日から適用する予定である。
100万種の動植物が絶滅の危機に瀕する主な原因が人間の活動となる中、GRIは生物多様性基準を大幅に改訂した。GRI 101は、生物多様性への影響に関する説明責任の新たなグローバル・ベンチマークを設定し、世界中の組織が事業やバリューチェーンを通じて、生物多様性に与える最も重要な影響を包括的に開示することを後押しする。
GRIの生物多様性基準は、サプライチェーン全体における完全な透明性、国・地域を含む事業者の場所と規模に関する詳細な情報、土地利用や気候変動など生物多様性の損失の直接的な要因に関する新たな開示を求める。コミュニティや先住民への影響、生態系の回復過程における地域グループとの関わりなど、社会へのインパクトに関するレポーティング要件も設けた。
GRIの新しい生物多様性基準は、2026年1月1日の報告から正式に適用され、どの組織も今すぐ自由にダウンロードすることができる。今後2年間にわたり、同基準を早期に採用する組織で試験的に使用する予定だ。
GRI 100は、世界銀行、コノコフィリップス、グローバル・コモンズ・アライアンスなどを含む、マルチステークホルダー・プロセスで策定された。また、昆明・モントリオール生物多様性世界枠組み(GBF)や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)など、生物多様性分野における主要なグローバルな動きに基づくものである。
GRI 101とのグローバルな整合性を確保すべく、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)とも協働した。具体的な基準などは、欧州連合(EU)の新しい生物多様性基準(ESRS 4)、TNFD、科学的根拠に基づく環境目標策定イニシアチブ(SBTN)、ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)の自然ベンチマークである。
生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)によると、生物多様性は全ての地域で減少しているという(*2)。また世界経済フォーラム(WEF)は、世界経済の50%が生物多様性の損失による脅威にさらされていると警告する(*3)。
国際的に合意されたGBFは、生物多様性を保護するための行動を喚起している。ターゲット15では、生物多様性に関連するリスクや影響を開示し、削減することを企業に求めている状況だ。
KPMGが22年10月に公表した「サステナビリティ報告調査」によると、GRIスタンダードが世界各地域のサステナビリティ報告に最も広く利用されている(*4)一方で、生物多様性について報告した企業は、調査対象となった5,800社のうち40%に過ぎなかった。
【参照記事】*1 GRI「Transparency standard to inform global response to biodiversity crisis」
【参照記事】*2 IPBES「Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services」
【参照記事】*3 WEF「The Future Of Nature
And Business」
【参照記事】*4 KPMG「Big shifts,small steps」
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