米国エネルギー省(DOE)は1月25日、化学、鉄鋼、食品、建築物などの脱炭素化が困難な産業部門を対象として、関連プロジェクトや技術の促進を目的に2億5,400万ドル(約372億円)超を拠出すると発表した(*1)。
バイデン政権の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、産業界の温室効果ガス(GHG)排出量を削減し、革新的な脱炭素技術の開発を促進するため、21州49プロジェクトに1億7,100万ドルを拠出する。米国全体の炭素排出量の約30%を占める脱炭素化が困難な産業部門からの排出量を削減すべく、8,300万ドルの資金提供の申請受付を開始することも発表した。
これらの施策を通じ、2050年までにネットゼロエミッション経済を実現するというバイデン政権の野心的な目標達成を後押しする。有害な排出を削減する次世代技術を促進することは、米国への投資アジェンダの重要な構成要素である。気候変動危機に取り組み、全米で新たな高賃金の雇用を創出し、米国の製造業と産業競争力の強化にもつなげる狙いだ。
DOEは大きなインパクトをもたらす応用研究、開発、パイロット検証・実証(RD&D)プロジェクトを支援する。選定された49プロジェクトは、米国の産業部門のエネルギー使用量と排出量の約40%を占める化学産業など、産業サブセクターのエネルギー使用量とGHG排出量を削減することを目的とする。
プロジェクトのうち、16件は民間企業、22件は学術機関、3件は非営利団体、8件はDOE傘下の国立研究所が主導する。産業部門における熱エネルギー分野の脱炭素化や低炭素燃料利用の研究開発、分野横断の研究開発を推進し、化学、鉄鋼、食品・飲料、セメント・コンクリート、林産物の脱炭素化に資する技術を促進する。
エネルギー集約産業への資金提供は、GHG排出量の多い産業部門、具体的には化学・燃料、鉄鋼、食品・飲料、建築・インフラ資材(セメント・コンクリート、アスファルト舗装、ガラスを含む)、林産物の応用研究開発に焦点を当てる。
これらの産業は、米国の工業生産の排出量の65%以上を占め、公衆衛生を脅かし、世界の生態系を汚染している。これらの産業の脱炭素化は、サプライチェーンの脱炭素化につながり、バイデン大統領のクリーンエネルギーと気候に関する目標を達成するために不可欠だ。また、商用化前の革新的な技術を用いた脱炭素産業プロセスの開発を支援するpre-FEED(#1)研究にも重点を置く。
(#1)pre-FEED…フィージビリティスタディの後に行われ、FEED(プロジェクト立ち上げ段階の概念設計)の前段階の概念設計・概算費用検討を指す。
【参照記事】*1 米エネルギー省「Biden-Harris Administration Announces $254 Million to Decarbonize America’s Industrial Sector and Revitalize Domestic Manufacturing」
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