炭素除去技術の開発を後押しするフロンティア(Frontier)は5月1日、バイオマス炭素除去・貯留(BiCRS)プロバイダーのヴォルテッド・ディープ(Vaulted Deep)と総額5,830万ドル(約89億円)の炭素除去契約を締結した(*1)。フロンティアにとって過去最大のオフテイク契約となる。
2022年4月、メタとアルファベットに加え、ストライプ、マッキンゼー、ショッピファイの5社が、9年間で9億2,500万ドル(約1,400億円)を拠出し、炭素除去技術の開発を支援すると発表した。併せて、ストライプの子会社としてフロンティアを共同で設立した。
フロンティアは事前買取制度(AMC)の下、法的拘束力を持つ形で、普及拡大が進んでいない炭素除去技術を開発する企業(サプライヤー)と事前購入契約やオフテイク契約を締結し、二酸化炭素(CO2)削減量を購入する。
フロンティアは今回、創設メンバーに加え、JPモルガンチェース、オートデスク、H&Mなどのバイヤー企業を代表し、ヴォルテッドと炭素除去契約を締結した。同契約の下、ヴォルテッドは24年から27年までに15万2,000トン超の二酸化炭素(CO2)を除去、永久貯留する。
フロンティアのバイヤーは、23年9月に1,666トンの少量の事前購入契約を締結し、ヴォルテッドの最初の顧客となった。同オフテイク契約により、ヴォルテッドは原料の利用可能性、輸送、坑井の貯留可能量を最適化するために設置された3つの新しい坑井を稼働させた。
ヴォルテッドは、バイオソリッド(下水汚泥)、糞尿、農業廃棄物など、炭素を多く含む廃棄物を炭素リッチなスラリーに変え、それを坑井に注入して永久貯留することで、CO2の排出を防いでいる。
除去された炭素の量は、バイオマスに含まれる炭素を計量し、輸送やエネルギー使用を含むプロセスの各段階で発生する排出量を差し引くことで測定する。
同社の炭素除去・貯留アプローチは、廃棄物が大量にあり、貯留はフレキシブルに対応できるため、事業の拡大余地が大きい。コストは比較的低く、1トン当たり100ドルを大きく下回る可能性がある。
また、ヴォルテッドは産業廃棄物管理業者のアドバンテック・ウェイスト・マネジメントからスピンアウトしており、アドバンテックより受け継いだ資産と専門性により、安全かつ迅速に実行する態勢を整えている。
さらに、より安全な廃棄物処理により、健康と環境のコベネフィット(#1)をもたらすことも期待できる。
(#1)コベネフィット…相乗便益を表し、GHG排出量の削減など温暖化対策と同時に得られる、エネルギー効率の改善や大気汚染の改善など、異なる分野での好ましい効果。
【参照記事】*1 フロンティア「Frontier buyers sign $58.3M in offtake agreements with Vaulted Deep」
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