欧州理事会は5月14日、マネーロンダリングおよびテロ資金供与の防止に向けた規則の強化に合意した。新規則の柱の一つに、 “addressing risks linked to prepaid cards and virtual currencies(プリペイドカードおよび仮想通貨に関するリスクへの対処)”という項目が盛り込まれた。
具体的には、EU域内の仮想通貨取引所や仮想通貨ウォレット事業者に対し、顧客の本人確認(KYC)などのより厳格な反マネーロンダリング(AML)・対テロ資金(CTF)ガイドラインに準拠することが義務付けられる。
同指令は2016年に起こった欧州でのテロ攻撃を受けて策定されたEUの「行動計画」の一環として採択されたもので、正常な決済システムの運用を妨げることなく犯罪組織への資金流入を撲滅するのが目的だ。同指令は、当局が仮想通貨取引所を通じた資金のやりとりを監視できるようにすべきであり、国家の金融情報機関は仮想通貨ウォレットのアドレスとその所有者が紐づく情報へのアクセスを持つべきだとしている。
今回の指令を受け、今後EU域内における仮想通貨取引にはさらなる透明性が求められることになるが、一部の取引所はすでにその方向へと動いている。つい先日、利用規約を更新したヘルシンキの仮想通貨取引所、Localbitcoinもその一つだ。同取引所は利用者の本人確認を義務付けており、一定の額を超える取引やアカウントのハッキング、リカバリ、不正行為の調査等の際には身分証明書を提出する必要がある旨を利用者に警告している。
仮想通貨を介した資金洗浄やテロ資金の確保が難しくなれば、仮想通貨に対する信用度が高まり、市場全体に好影響がもたらされる可能性もある。国家や銀行といった第三者機関を介すことなく匿名のままPeer to Peerで取引できることがビットコインをはじめとする仮想通貨の大きな魅力ではあるものの、その特徴を悪用した犯罪行為がネックとなり仮想通貨に対する信用が担保されないままでは、仮想通貨が広く普及することは難しい。
今回の指令がEUをはじめとして世界全体の仮想通貨市場にどのような影響をもたらすのか、今後の影響に注目だ。
【参照リリース】Money laundering and terrorist financing: new rules adopted
【参照記事】EU Adopts Rules to Reduce Anonymity for Crypto Users
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